発音の手引き・言語別

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 イタリア語を発音するときに心に留めておくと発音が上手になる、そんなキーポイントをまとめてあります。
 文字や発音記号の一つ一つの発音は、発音の手引きの「母音」ないし「子音」にこれでもかと言うほど記述いたしましたので、そちらをご覧くださるようご案内いたします。


イタリア語

発音の総括的説明

母音のルール

子音のルール

アルファベット

カタカナ表記との関係



○イタリア語・発音の総括的説明

  1. イタリア語の発音は、文字の組み合わせによる特別な発音表記がいくつかあるものの、基本的には表記に従って読めば事が済みます。
    そもそも「ローマ字」はイタリア語の祖先であるラテン語を書き表すために工夫された文字ですから、イタリア語の表記にも具合よく利用できるのはむしろ当然です。
  2. イタリア語のアクセントは、長短アクセントです。母音の長さで、アクセントの強さを調節します。
    平叙文と疑問文、感嘆文の違いは、音の高低で調整します。
  3. アクセントのある母音は、アクセントのない母音よりも大きめの声で、はっきり、長めに発音します。
  4. イタリア語ではアンシェヌマンが発達しています。すなわち、「子音+母音」の組み合わせが生じるとき、それらを連続して発音し、単語の区切りを超えた音節を作り出します。
    とりわけ、母音だけが複数続く場合は、それらをひとまとめにして一つの母音のように発音してしまうことがあります。聞き取りが難しくなり、外国人泣かせですね。
    当サイトでは、アンシェヌマンが生じているときは、音節の区切りに「・(中点)」を入れて単語同士の切れ目を示しています。
    • con un amico「コ・ヌ・ナミーコ」(『友人と』)
  5. イタリア語にはトロンカメントがあります。すなわち、二つの単語が連続し、そのうち初めのほうの語が母音で終わるばあい、先の語の最終母音やときには最終音節全体が脱落して、次の語と一体化した音節を形成します。
    とくに歌では、ジャンルを問わず広く見られる現象です。
    • gran confusion「グラン コンフュージョン」(『大混乱』。トロンカメントが生じないと仮定すると「grande confusion」)
  6. イタリア語では母音の連続を避ける傾向(エリズィオン)があります。母音で終わる単語と、母音で始まる単語が続く場合、は初めのほうの単語の語末の母音が脱落し、後ろ側の単語の頭の母音をふたつの単語の間で共有してひとつながりに発音することがあります。冠詞や代名詞など一部の単語が先に来る場合、綴りの上でも前の単語の最終母音を省いてかわりにアポストロフィを置き、前後の語を連続して記述することがあります。
    なお、エリズィオンの生じ方は単語によってさまざまであり、一部の代名詞や形容詞のように母音の省略が義務化されているものから、単に弱く発音されて後ろの母音とひとつながりに発音されるだけのものまでいろいろです。
    • d'improvviso「デ・ィンプロッヴィーゾォ」(『突然に』。「di improvviso」とは書かない)
    • gli amici「リ゜ャミーチィ」(『その友達(複数)』。綴りの上ではエリズィオンしないが発音の上では連続する)
  7. イタリア語の「i」は、直後に母音を伴うことで、半母音/j/のように発音されることが極めて多くみられます。すなわち「子音字+i+母音字」でひとつの音節を形成することが非常に多くあります。むしろ、二つの音節に分かれることのほうが極めて珍しいと考えたほうがよいでしょう。     
    • ciao「チャォ」(『こんにちは』。「チィアーオ」とは発音されない)
    • pianeta「ピィァネータ」(『植物/惑星』)
    • schiare「シィアーレ」(『スキーをする』。「schi」と「a」とで二つの音節に分かれている例。)
  8. イタリア語の特徴として、二重子音の頻出が見られます。文字どおり、表記の上で二つ続いている子音を、発音の上でも二つとも発音するものです。日本語の促音に近いとしばしば言われますが、日本語の「っ」とは異なり1音節を占めることはありません。     
    • tutto「トゥットォ」(『すべて』。「トゥッ/トォ」と2音節に分けて発音することに注意)
    • caffe「カッフェー」(『コーヒー』。「カッ/フェー」と2音節に分けて発音することに注意)
    • Che cosa「ケッ・コーザ?」(『どうしたの?』。「ケッ/コー/ザ」と分けて発音。なお方言によっては「ケ コーザ?」のように二重子音を使いません)
  9. イタリア語を特徴付ける音は、アクセントを持つことで引き伸ばされる母音、二重子音の頻出、語尾にほとんどの場合母音が出現すること、複数の母音が連続することで発生するアンシェヌマン、語尾の音節に有声音が立ちにくいことなどでしょう。

○イタリア語・母音のルール

  1. アクセントのある母音は、ない母音よりも、はっきりと、強く、長く発音します。アクセントは一般に後ろから2番目の音節に来ますが、その他の音節に来ることももちろんあります。
  2. アクセントのない母音は弱く発音されますが、あいまい母音化することはほとんどありません。
  3. イタリア語の母音は「a」「閉じたe」「開いたe」「i」「閉じたo」「開いたo」「u」の7種類があります。
     地域差や世代差にもよりますが、「閉じたe」と「開いたe」、「閉じたo」と「開いたo」はそれぞれ融合して「e」「o」というひとつの発音になる傾向があります。
  4. 母音のうち「i」は、上記のように、他の母音の前にくっつき複合化することで、半母音/j/として発音されることがしばしばあります。
    しかし、「i+母音」の形になっていて「i」にアクセントが来る場合は、この半母音化現象は生じません。
    • viaggio「ヴィャッヂィォ」(『旅』。「i」が半母音化する例)
    • zio「ツィーオ」(『伯父・叔父』。「i」にアクセントが来るので半母音化しない)
    • noia「ノーィヤ」(『退屈』。母音に挟まれた「i」が半母音化している)
  5. 母音のうち「u」は、他の母音の前にくっつき複合化することで、半母音/w/として発音されることがしばしばあります。
    しかし、「u+母音」の形になっていても「u」にアクセントが来る場合は、この半母音化現象は生じません。
    • nuotare「ヌゥォターレ」(『泳ぐ』。「u」が半母音化する例)
    • guancia「グヮンチィァ」(『頬』。「u」が半母音化する例)
    • due「ドゥーエ」(『二、ふたつ』。「u」にアクセントが来るので半母音化しない)
  6. ほかの母音の後に「i」や「u」が来る時、具体的には「ai」「ei」{oi」「au」「eu」の5つの場合は、二重子音が生じます。但し例外的に二重子音にならない単語もあります。
    • poiche「ポィケ」(『〜なので』。「oi」が二重母音化する例)
    • gaudente「ガゥデンテ」(『享楽的な』。「au」が二重母音化する例)
    • paura「パウーラ」(『心配』。「u」にアクセントが来るので二重母音化しない)

○イタリア語・子音のルール

  1. イタリア語は、同じ子音が2つ連続して出現する「二重子音」が頻繁に登場することで知られます。この性質は、スペイン語やフランス語などのほかのラテン語系言語にも見られない特徴であり、イタリア語をイタリア語たらしめている大きな要素とも言えるでしょう。
     ・もともとラテン語系で/ks/や/kt/の発音だったものが/k/の発音が落ちて二重子音化した。
     ・複合語ができたときに、元の語の境目が二重子音化した。
     ・母音を引き立てるために自然発生的に生じた。
    などの成因があるようです。
    • attore「アットーレ」(『俳優、訳者』。同語源の英語「actor」、ロシア語「актёр」などと比較)
    • prossimo「プロッスィモ」(『次の』。スペイン語「proximo」、英語「proximal」などと比較)
    • coccodrillo「コッコドリッロ」(『ワニ』。スペイン語「cocodrilo」、英語「crocodile」などと比較)
    • laggiu「ラッヂィゥ」(『あちらの下の方に』。複合語の例)
    • caffellatte「カッフェッラッテ」(『カフェラテ』。複合語の例。なお「caffelatte」とも綴ります)
    • famiglia「ファミッリ゜ャ」(『家族』。綴りの上では単子音ですが、二重子音として発音します。地域によっては短子音のまま発音します)
  2. 子音のうち「s」と「z」は有声化することと無声化することがあります。おもに直後に来る発音によって左右されますが、特に語頭に来る場合、例外もかなりあります。
     ◆有声化する場合
    • paese「パエーゼ」(『国、村』)
    • caso「カーゾ」(『事件』。母音に挟まれる「s」は、単語によって有声にも無声にもなります。下の「casa」を参照)
    • sbaglio「ズバッリ゜ョ」(『誤り』。「s」が語頭に出て、直後に有声子音が続く場合は有声化します)
    • zaino「ヅァィノ」(『リュックサック』)
    • azzurro「アッヅッロ」(『水色』。通常は「zz」の綴りは無声音になりますが、これは例外的に有声化します)
    • zanzara「ヅァンヅァーラ」(『蚊』)
     ◆無声化する場合     
    • casa「カーサ」(『家』。母音に挟まれる「s」は、単語によって有声にも無声にもなります。上の「caso」を参照)
    • stazione「スタツィォーネ」(『駅』。「s」が語頭にあり直後に無声子音が続く場合は無声化します。また母音に挟まれる「z」は無声化します)
    • zuppa「ツッパ」(『スープ』)
    • anzi「アンツィ」(『それどころか』)
    • piazza「ピィァッツァ」(『広場』)
    • mossa「モッサ」(『動き』)
  3. 「ch」の綴りは/k/(カ行の子音)の音を表します。ただし「sch」は/∫/(シャ行の子音)の発音を表します。
    • второи「フタローィ」(『2番めの』。発音に合わせるとфторои。тの存在によるвの無声化)
    • сдать「ズダーチ」(『引き渡す』。発音に合わせるとздать。дの存在によるсの有声化)
    • твёрдыи「トヴョールディ」(『固い、しっかりした』。発音の変化が無いことに留意)
  4. 「gh」の綴りは/g/(ガ行の子音)の発音を表します。
    • гкを「フク」と発音:легко「リェフコー」(『軽い』。発音に合わせるとлехко)
    • зжを「ジジ」と発音:езжу「ィエジジュー」(『〔私は〕乗り物で行く』。発音に合わせるとежжу)
    • сшを「シシ」と発音:сшить「シシーチ」(『縫いつける』。発音に合わせるとшшить)
    • тьсяを「ッツァ」と発音:ломаться「ラマーッツァ」(『壊れる』。発音に合わせるとломатца)
    • чнを「シヌ」と発音:конечно「カニェーシナ」(『もちろん』。発音に合わせるとконешно)
    • чтを「シト」と発音:что「シトォー」(『何が』。発音に合わせるとшто)
  5. 「gli」の綴りは、外来語など特殊なものを除き、/λ/(リ゜ャ行またはリ゛ャ行の子音)の発音を表します。
    • тの脱落:счастливый「シャスリーヴィ」(『幸運な、幸福な』)
    • тの脱落:частный「チャースニィ」(『一部の、個人的な』)
    • дの脱落:звёздный「ズヴョーズニィ」(『星の』)
    • вの脱落:здравствовать「ズドラーストヴァヴァーチ」(『健康でいる』)
    • лの脱落:солнце「ソーンツェ」(『太陽』)
  6. 子音が連続することで、子音が一体化してひとつの音として発音されることがあります。
    • счを、「щ」の音で「シ」と発音:считать「シターチ」(『数える』。発音に合わせるとщитать)
    • жчを、「щ」の音で「シ」と発音:мужчина「ムシーナ」(『男性』。発音に合わせるとмущина)
  7. 語尾の「его」や「ого」は、「イヴォー/イヴァ」、「アヴォー/アヴァ」のように発音されます。「г」の字が「в」の音で発音されるわけです。
    なお、上記カタカナ発音は、斜線の左が語尾にアクセントの来る場合、右が来ない場合を表しています。
    • ничего「ニチヴォー」(『平気だ、なんともない』。発音に合わせるとничево)
    • доброго「ドーブラヴァ」(『良い』〔男性・中性生格〕。発音に合わせるとдоброво)

○イタリア語のアルファベート一覧(左の列から縦に見ていってください。)

A a J j イ・ルンゴ S s エッセ
B b K k カッパ T t
C c L l エッレ U u
D d ディ M m エンメ V v
E e N n エンネ W w ドッピオ・ヴー
/ヴー・ドッピオ
F f エッフェ O o X x イクス
G g P p Y y イプスィロン
/イ・グレーコ
H h アッカ Q q Z z ツェータ
I i R r エルレ  



○ロシア語とその一般的なカタカナ表記の関係

  1. 「о」は、アクセントの有無に関わらず「オ」と表記するのが一般的ですが、最近に移入された語では発音に従い「ア」と表記する例もあります。
      [例]Толстой「タルストーィ」(ロシアの小説家。日本語では一般に「トルストイ」と表記)
         самовар「サマヴァール」(『サモワール、湯沸かし器』。日本語では一般に「サモワール」と表記)
         хорошо「ハラショー」(『素晴らしい』〔中性・短語尾形〕。日本語では一般に「ハラショー」と表記。近年感嘆詞として使用が増加)
  2. 硬母音は「ア、イ、ウ、エ、オ」で、軟母音は「ヤ、イ、ユ、エ、ヨ」で表すのが一般的です。アクセントの有無に関わらず、ロシア語の文字表記に従ってカナ表記します。
    但し、最近では、アクセントのある「е」は「イェー」と書き表したり、アクセントの無い母音は「ア」「イ」で書き表すなど、原音の発音を意識した表記をする動きも出てきました。
      [例]Фёдор「フョーダル」(男性名。日本語では一般に「フョードル」と表記)
         ненец「ニェーニツ」(ロシア北部の民族。日本語では「ネネツ」「ニニェーツ」「ニェーニェツ」などと表記)
         чернозём「チェルナジョーム」(『黒土』。日本語では一般に「チェルノーゼム」と表記するが、原音を誤記しています)
  3. 「й」は「イ」または「ヤ」行の子音として表記します。「ь」は無視するか「イ」として表すのが一般的です。
      [例]Енисей「イニスェーィ」(シベリアの河川名。日本語では一般に「エニセイ」と表記)
         большевик「バリシェヴィーク」(『ボリシェビキ、過激派』。日本語では一般に「ボリシェビキ」と表記)
         Казань「カザーヌ」(ロシア西部の都市名。日本語では一般に「カザン」または「カザニ」と表記)
  4. アクセントがある母音は、カナ表記でも長音として扱われることがありますが、必ずしも長音とされるわけではありません。
      [例]комбинат「カンビナーッ」(『企業連合』。日本語では一般に「コンビナート」と表記)
         Достоевский「ダスタィエーフスキィ」(ロシアの小説家。日本語では一般に「ドストエフスキー」と表記)
  5. ロシア語の「л」と「р」は、いずれも「ラ」行のカナで表します。
      [例]икра「イクラー」(『魚卵』。日本語では一般に「イクラ」と表記)
         интеллигенция「インティリギェーンツィャ」(『知識階級』。日本語では一般に「インテリゲンチヤ」と表記)
  6.      
  7. 「в」は、有声ならば伝統的に「ワ」行または「バ」行の仮名で、無声なら「フ」で表します。但し、現在では「ヴ」を用いることも多くなっています。
      [例]Москва「マスクヴァー」(ロシアの首都名。日本語では一般に「モスクワ」と表記。「モスコー」は英語よりの移入)
         Павлов「パーヴラフ」(ロシアの生理学者。日本では一般に「パブロフ」「パヴロフ」と表記)
         Владивосток「ヴラヂィヴァストーク」(東シベリア南東部の都市名。日本では一般に「ウラジオストク」「ウラジボストク」と表記)
  8. 「щ」は、伝統的に「シチ」と書いていますが、最近では「シシ」と表記することもあります。
      [例]борщ「ボールシ」(『ボルシチ』。日本語では一般に「ボルシチ」だが最近は「ボールシ」とも表記)
  9. 「х」は、前後の綴りによって「ハ」または「フ」と表記します。
      [例]Рахманинов「ラハマニナフ」(ロシアの作曲家。日本語では一般に「ラフマニノフ」と表記)
         Саха「サハー」(シベリア東部の自治共和国。日本語では一般に「サハ」と表記)

−−ロシア語ここまで−−







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