発音の手引き・言語別

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 ロシア語を発音するときに心に留めておくと発音が上手になる、そんなキーポイントをまとめてあります。
 文字や発音記号の一つ一つの発音は、発音の手引きの「母音」ないし「子音」にこれでもかと言うほど記述いたしましたので、そちらをご覧くださるようご案内いたします。


ロシア語

発音の総括的説明

母音のルール

子音のルール

アルファヴィート

カタカナ表記との関係



○ロシア語・発音の総括的説明

  1. ロシア語の発音は、基本的に文字をそのまんま読めばオーケーです。簡単でしょ?
    もっとも、その前に「ロシア文字はわけがわかんない!文字が読めなきゃ意味がないじゃないか!」とお叱りの声が聞こえてきそうですが。
    でもそんなのは覚えちゃえばいいんです。たかだか33組しかないんですし。
  2. ロシア語のアクセントは、長短アクセントです。母音の長さで、アクセントの強さを調節します。
    平叙文と疑問文、感嘆文の違いは、音の高低で調整します。
  3. ロシア語の母音は、「硬母音」と「軟母音」の2系統に分けられます。詳しくはこのページの「母音のルール」をご覧ください。
  4. アクセントのある母音は、アクセントのない母音よりもほぼ2倍の長さに延ばして発音します。
  5. 語尾に来た有声子音は、対応する無声子音になって発音されます。
  6. 前置詞は、後に続く単語と一体化される傾向があります。
    とくに、子音1文字だけの前置詞(в、к、с)は、直後の単語と一体化して、一つの単語のように発音されます。
  7. ロシア語には、唇をすぼめて尖らせる/w/の音はありません(と言うか、ヨーロッパの言語で単独子音として/w/の発音がある英語が変わり者)。すべて/v/の音になります。外来語でも同様です。
    ロシア語の発音に従えば、
      『モスクワ(Москва)』は「マスクヴァー」
      『ウラジオストク(Владивосток)』は「ヴラヂヴァストーク」
    と発音されるのです。
  8. ロシア語を特徴付ける音は、
      ・アクセントを持つことで引き伸ばされる母音
      ・頻繁に出てくる軟母音や軟化した子音
      ・/f/、/k/を含む連子音や、有声子音で構成された連子音の頻出
      ・「ч」や「ш」などの反り舌音の積極的使用、語尾が母音で終わるものが多いこと
    などでしょう。

○ロシア語・母音のルール

  1. 上でも述べたように、アクセントのあるなしによって、母音の長さが変わります。
    アクセントのある母音は、ない母音よりも、はっきりと、強く、長く発音します。延ばす長さは、短い母音のほぼ2倍になります。
  2. 逆に、アクセントのない母音は、弱く発音され、あいまい母音(「発音の手引き・母音」のU-3を参照)になることもあります。この項の4〜8をご覧ください。
  3. ロシア語の母音には、「軟母音(なんぼいん)」と「硬母音(こうぼいん)」の2種類があります。
    軟母音 я е и ё ю 発音イメージは「ィヤー、ィエー、ィイー、ィヨー、ィユー」
    硬母音 а э ы о у 発音イメージは「アー、エー、ゥイー、オー、ウー」
     軟母音は、硬母音の直前に/j/の音を付けたものとされます。
     軟母音を発音するときは、舌を上顎にぐいと寄せつけて発音する感じ、対して硬母音を発音するときは、舌が呼気を遮らない感覚で発音することになります。
     軟母音と硬母音の違いのもつ意義は、発音だけではなく、文法にも響いてきます。
  4. アクセントのない「о」は、「а」と同じに「ア」と発音します。さらに弱くなるときには、「あいまい母音」の要領で、「ア」だか「ウ」だか分からない音で発音します。
    ただし、方言では、「オ」と読むこともあります。

  5. アクセントのない「а」は、語の中での位置によって、しばしばあいまい母音として発音されます。
  6. アクセントのない「я」は、「ィイ」と発音します。ロシア文字で綴れば「йи」のような感じです。
  7. アクセントのない「е」は、上記の「я」と同様「ィイ」と発音します。また、アクセントの無い語末に来たとき、弱い「ヤ」のように発音することもあります。
  8. アクセントのない「и」と「э」は、中途半端な「イ」と発音します。
  9. アクセントのない「у」「ы」「ю」は、弱く発音するだけで、とくに音が変化することはありません。
  10. 「ё」には必ずアクセントが来ます。したがって、アクセントの無い「ё」はありません。
  11. ロシア語には、単語の語幹部の二重母音があまり有りません。二重母音は、外来語に由来するものか、名詞・形容詞の人称変化や格変化に伴って生じるものがほとんどです。

○ロシア語・子音のルール

  1. ロシア語では、ひとつの単語の中で子音が連続して現れることが、非常に頻繁に見られます。2つ、3つは他のヨーロッパ言語にもありますが、ロシア語では、4つの子音がつながって出てくることもあります。
     また、西ヨーロッパの言語(英語、フランス語、スペイン語など)では見られない子音の組み合わせも存在します。スラブ語系の言語としてはごく普通なんですけれどね。
    • встреча「フストリェーチャ」(『出会い、迎え』。子音が4つ続く)
    • скрипка「スクリープカ」(『ヴァイオリン』。子音が3つ続く)
     西欧諸言語には稀な連続子音の発音を含んだ語としては、以下の例があります。
    • мрамор「ムラモール」(『大理石』。/mr/の組み合わせ)
    • здравствуйте「ズドラーストヴィーチェ」(『こんにちは』。/zdr/の組み合わせ)
    • дневной「ドニィヴノーィ」(『昼間の』。語頭の/dn/の組み合わせ)
     ※なお、語頭の/zdr/の組み合わせはイタリア語などにも見られます。
  2. 語尾、または無声音の子音の直前に来た有声音の子音は、対応する無声音の子音として発音します(下の表を参照)。前置詞の後に単語が続く場合も同様です。
  3. 有声音の子音の直前に来た無声音の子音は、対応する有声音の子音として発音します(下の表を参照)。前置詞の後に単語が続く場合も同様です。
     ただし、「в」は有声子音ですが、この直前に来る無声子音は、無声子音のままで、有声化しません。
    下の子音に対応する有声子音 б в г д ж з
    上の子音に対応する無声子音 п ф к т ш с
    • второи「フタローィ」(『2番めの』。発音に合わせるとфторои。тの存在によるвの無声化)
    • сдать「ズダーチ」(『引き渡す』。発音に合わせるとздать。дの存在によるсの有声化)
    • твёрдыи「トヴョールディ」(『固い、しっかりした』。тが無声のままであることに留意)
  4. 子音が連続することで、前の方の子音が、後ろの方の子音の影響を受けて、調音法の異なる発音になることがあります。
    • гкを「フク」と発音:легко「リェフコー」(『軽い』。発音に合わせるとлехко)
    • зжを「ジジ」と発音:езжу「ィエジジュー」(『〔私は〕乗り物で行く』。発音に合わせるとежжу)
    • сшを「シシ」と発音:сшить「シシーチ」(『縫いつける』。発音に合わせるとшшить)
    • тьсяを「ッツァ」と発音:ломаться「ラマーッツァ」(『壊れる』。発音に合わせるとломатца)
    • чнを「シヌ」と発音:конечно「カニェーシナ」(『もちろん』。発音に合わせるとконешно)
    • чтを「シト」と発音:что「シトォー」(『何が』。発音に合わせるとшто)
  5. 子音が連続することで、他の子音に挟まれるなどした子音が脱落することがあります。
    • тの脱落:счастливый「シャスリーヴィ」(『幸運な、幸福な』)
    • тの脱落:частный「チャースニィ」(『一部の、個人的な』)
    • дの脱落:звёздный「ズヴョーズニィ」(『星の』)
    • вの脱落:здравствовать「ズドラーストヴァヴァーチ」(『健康でいる』。3個のвのうち最初のものが脱落)
    • лの脱落:солнце「ソーンツェ」(『太陽』。他の子音に挟まれてはいませんが、脱落します)
  6. 子音が連続することで、子音が一体化してひとつの音として発音されることがあります。
    • счを、「щ」の音で「シ」と発音:считать「シターチ」(『数える』。発音に合わせるとщитать。なお、上のсчастливыйも同様)
    • жчを、「щ」の音で「シ」と発音:мужчина「ムシーナ」(『男性』。発音に合わせるとмущина)
  7. 単数生格活用語尾、あるいは語源的に活用語尾に由来する「его」や「ого」は、「イヴォー/イヴァ」、「アヴォー/アヴァ」のように発音されます。「г」の字が「в」の音で発音されるわけです。
    なお、上記カタカナ発音は、斜線の左が語尾にアクセントの来る場合、右が来ない場合を表しています。
    • ничего「ニチヴォー」(『平気だ、なんともない』。発音に合わせるとничево)
    • доброго「ドーブラヴァ」(『良い』〔男性・中性生格〕。発音に合わせるとдоброво)

○ロシア語のアルファヴィート一覧(左の列から縦に見ていってください。)

А а アー  К к カー Х х ハー
Б б  ベー  Л л エル Ц ц ツェー
В в  ヴェー  М м エム Ч ч チェー
Г г ゲー  Н н エヌ Ш ш シャー
Д д デー  О о オー Щ щ シシャー(シチャー)
Е е  ィエー  П п ペー Ъ ъ (硬音記号)
Ё ё ィヨー  Р р エル(エール) Ы ы ウィー(ゥイ)
Ж ж  ジェー  С с エス Ь ь (軟音記号)
З з ゼー  Т т テー Э э エー
И и イー  У у ウー Ю ю ユー
Й й イー・クラートコエ  Ф ф エフ Я я ヤー



○ロシア語とその一般的なカタカナ表記の関係

  1. 「о」は、アクセントの有無に関わらず「オ」と表記するのが一般的ですが、最近に移入された語では発音に従い「ア」と表記する例もあります。
      [例]Толстой「タルストーィ」(ロシアの小説家。日本語では一般に「トルストイ」と表記)
         самовар「サマヴァール」(『サモワール、湯沸かし器』。日本語では一般に「サモワール」と表記)
         хорошо「ハラショー」(『素晴らしい』〔中性・短語尾形〕。日本語では一般に「ハラショー」と表記。近年感嘆詞として使用が増加)
  2. 硬母音は「ア、イ、ウ、エ、オ」で、軟母音は「ヤ、イ、ユ、エ、ヨ」で表すのが一般的です。アクセントの有無に関わらず、ロシア語の文字表記に従ってカナ表記します。
    但し、最近では、アクセントのある「е」は「イェー」と書き表したり、アクセントの無い母音は「ア」「イ」で書き表すなど、原音の発音を意識した表記をする動きも出てきました。
      [例]Фёдор「フョーダル」(男性名。日本語では一般に「フョードル」と表記)
         ненец「ニェーニツ」(ロシア北部の民族。日本語では「ネネツ」「ニニェーツ」「ニェーニェツ」などと表記)
         чернозём「チェルナジョーム」(『黒土』。日本語では一般に「チェルノーゼム」または「チェルノジョーム」と表記)
  3. 「й」は「イ」または「ヤ」行の子音として表記します。「ь」は無視するか「イ」として表すのが一般的です。
      [例]Енисей「イニスェーィ」(シベリアの河川名。日本語では一般に「エニセイ」と表記)
         большевик「バリシェヴィーク」(『ボリシェビキ、過激派』。日本語では一般に「ボリシェビキ」と表記)
         Казань「カザーヌ」(ロシア西部の都市名。日本語では一般に「カザン」または「カザニ」と表記)
  4. アクセントがある母音は、カナ表記でも長音として扱われることがありますが、必ずしも長音とされるわけではありません。
      [例]комбинат「カンビナーッ」(『企業連合』。日本語では一般に「コンビナート」と表記)
         Достоевский「ダスタィエーフスキィ」(ロシアの小説家。日本語では一般に「ドストエフスキー」と表記)
  5. ロシア語の「л」と「р」は、いずれも「ラ」行のカナで表します。
      [例]икра「イクラー」(『魚卵』。日本語では一般に「イクラ」と表記)
         интеллигенция「インティリギェーンツィャ」(『知識階級』。日本語では一般に「インテリゲンチヤ」と表記)
  6.      
  7. 「в」は、有声ならば伝統的に「ワ」行または「バ」行の仮名で、無声なら「フ」で表します。但し、現在では「ヴ」を用いることも多くなっています。
      [例]Москва「マスクヴァー」(ロシアの首都名。日本語では一般に「モスクワ」と表記。「モスコー」は英語よりの移入)
         Павлов「パーヴラフ」(ロシアの生理学者。日本では一般に「パブロフ」「パヴロフ」と表記)
         Владивосток「ヴラヂィヴァストーク」(東シベリア南東部の都市名。日本では一般に「ウラジオストク」「ウラジボストク」と表記)
  8. 「щ」は、伝統的に「シチ」と書いていますが、最近では「シシ」と表記することもあります。
      [例]борщ「ボールシ」(『ボルシチ』。日本語では一般に「ボルシチ」だが最近は「ボールシ」とも表記)
  9. 「х」は、前後の綴りによって「ハ」または「フ」と表記します。
      [例]Рахманинов「ラハマニナフ」(ロシアの作曲家。日本語では一般に「ラフマニノフ」と表記)
         Саха「サハー」(シベリア東部の自治共和国。日本語では一般に「サハ」と表記)

−−ロシア語ここまで−−







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