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V'LÀ L'BON VENT
ほら、良い風だ

王子に撃たれたアヒルから宝物が生じる幻想的な物語。

作詞:不詳  /  作曲:不詳  / 17世紀頃成立?

邦題
この歌には、定まった邦題はまだ付いていないようです。

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜14番
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.繰り返しパート
ヴラ ルボ ヴォ、ヴラ ルジョリ ヴォ
V'là l'bon vent, v'là l'joli vent,

ヴラ ルボ ヴォ マミ マペル
V'là l'bon vent m'ami m'appelle.

ヴラ ルボ ヴォ、ヴラ ルジョリ ヴォ
V'là l'bon vent, v'là l'joli vent,

ヴラ ルボ ヴォ マミ マト
V'là l'bon vent, m'ami m'attend.

1. 
ほら、良い風だ、ほら、すてきな風だ
ほら、良い風だ、友が私を呼んでいる
ほら、良い風だ、ほら、すてきな風だ
ほら、良い風だ、友が私を待っている

v'là【副詞】=voilà
(事物を指し示して)これが〜だ、(間投詞的に)ほら、おや。
m'【代名詞】=mon 私の/me 私を。
「m'ami」は「mon ami」の省略です。


2.
デリィェ シェヌゥ ヤ・タ エト
Derrièr' chez-nous, y a-t-un étang

デリィェ シェヌゥ ヤ・タ エト
Derrièr' chez-nous, y a-t-un étang

トルヮ ボー カナル ソ ヴォ ベニョ
Trois beaux canards s'en vont baignant.

 繰り返し

2.
私たちの家の裏手に池がある
私たちの家の裏手に池がある
三羽の美しいアヒルが水浴びをしながら行く

y a-t-un
「il y a un(一つの〜がある)」の省略形。リエゾンのために「t」が挿入されています。
baignant【動詞・現在分詞】
 <baigner 水浴びをする。


3.
トルヮ ボー カナル ソ ヴォ ベニョ
Trois beaux canards s'en vont baignant

トルヮ ボー カナル ソン ヴォ ベニョ
Trois beaux canards s'en vont baignant

ル フィス ドュ ルヮ ソ ヴァ シャソ
Le fils du roi s'en va chassant.

 繰り返し

3.
三羽の美しいアヒルが水浴びをしながら行く
三羽の美しいアヒルが水浴びをしながら行く
王の息子が狩りをしながら行く
繰り返し

chassant【動詞・現在分詞】
 <chasser 水浴びをする。



4.
ル フィス ドュ ルヮ ソ ヴァ シャソ
Le fils du roi s'en va chassant

ル フィス ドュ ルヮ ソ ヴァ シャソ
Le fils du roi s'en va chassant

アヴェク ソ グロ フュズィ ダーァジョ
Avec son grand fusil d'argent.

 繰り返し

4.
王の息子が狩りをしながら行く
王の息子が狩りをしながら行く
大きな銀色の銃を持って
繰り返し

5.
アヴェク ソ グロ フュズィ ダーァジョ
Avec son grand fusil d'argent

アヴェク ソ グロ フュズィ ダーァジョ
Avec son grand fusil d'argent

ヴィザ ル ヌヮル、チュア ル ブロ
Visa le noir, tua le blanc.

 繰り返し

5.
大きな銀色の銃を持って
大きな銀色の銃を持って
黒いのを狙って、白いのを殺した
繰り返し

visa【動詞・三人称単数過去形】
 <viser 狙いをつける。
tua【動詞・三人称単数過去形】
 <tuer 殺す。


6.
ヴィザ ル ヌヮル、チュア ル ブロ
Visa le noir, tua le blanc

ヴィザ ル ヌヮル、チュア ル ブロ
Visa le noir, tua le blanc

オ フィス ドュ ルヮ、チュ エ メショ
O fils du roi, tu es méchant.

繰り返し

6. 
黒いのを狙って、白いのを殺した
黒いのを狙って、白いのを殺した
おお王の息子よ、お前は悪い奴だ
 繰り返し

méchant【形容詞】意地の悪い、悪意のある。


7.
オ フィス ドュ ルヮ、チュ エ メショ
O fils du roi, tu es méchant

オ フィス ドュ ルヮ、チュ エ メショ
O fils du roi, tu es méchant

ダヴヮ チュエ モ カナル ブロ
D'avoir tué mon canard blanc.

 繰り返し

7.
おお王の息子よ、お前は悪い奴だ
おお王の息子よ、お前は悪い奴だ
私の白いアヒルを殺してしまうとは
繰り返し

8.
ダヴヮ チュエ モ カナル ブロ
D'avoir tué mon canard blanc

ダヴヮ チュエ モ カナル ブロ
D'avoir tué mon canard blanc

パル・ドゥスゥー レル イル ペーァ ソ ソ
Par-dessous l'aile il perd son sang.

 繰り返し

8.
私の白いアヒルを殺してしまうとは
私の白いアヒルを殺してしまうとは
羽の下で血を流している
繰り返し

par-dessous【前置詞】〜の下を。
perd【動詞・三人称単数現在形】
 <perdre 失う。ここでは「(血を)流している」と訳しました。



9.
パル・ドゥスゥー レル イル ペーァ ソ ソ
Par-dessous l'aile il perd son sang

パル・ドゥスゥー レル イル ペーァ ソ ソ
Par-dessous l'aile il perd son sang

パァ レ・ゼュー ルュィ ソーァッ デ ディァモ
Par les yeux lui sort'nt des diamants.

 繰り返し

9.
羽の下で血を流している
羽の下で血を流している
その目からはダイヤモンドが出てくる
繰り返し

sort'nt【動詞・三人称単数現在形】=sortent
 <sortir 出る。


10.
パァ レ・ゼュー ルュィ ソーァッ デ ディァモ
Par les yeux lui sort'nt des diamants

パァ レ・ゼュー ルュィ ソーァッ デ ディァモ
Par les yeux lui sort'nt des diamants

エ パァ ル ベク ローァ エ ラァジョ
Et par le bec, l'or et l'argent.

 繰り返し

10.
その目からはダイヤモンドが出てくる
その目からはダイヤモンドが出てくる
そしてくちばしからは金と銀が
繰り返し

11.
エ パァ ル ベク ローァ エ ラァジョ
Et par le bec, l'or et l'argent

エ パァ ル ベク ローァ エ ラァジョ
Et par le bec, l'or et l'argent

トゥーッ セ プルュム ソ ヴォ・トォ ヴォ
Toutes ses plumes s'en vont au vent.

 繰り返し

11.
そしてくちばしからは金と銀が
そしてくちばしからは金と銀が
羽根はみな風に飛ばされていく
繰り返し


12.
トゥーッ セ プルュム ソ ヴォ・トォ ヴォ
Toutes ses plumes s'en vont au vent

トゥーッ セ プルュム ソ ヴォ・トォ ヴォ
Toutes ses plumes s'en vont au vent

トルヮ ダム ソ ヴォ レ ラマソ
Trois dames s'en vont les ramassant.

 繰り返し

12.
羽根はみな風に飛ばされていく
羽根はみな風に飛ばされていく
三人の婦人がそれを拾い集めていく
繰り返し

ramassant【動詞・現在分詞】
 <ramasser 集める、拾う。


13.
トルヮ ダム ソン ヴォ レ ラマソ
Trois dames s'en vont les ramassant.

トルヮ ダム ソン ヴォ レ ラマソ
Trois dames s'en vont les ramassant.

セ プゥァ・ロ フェァ ア リ ドゥ コ
C'est pour en faire un lit de camp

 繰り返し

13.
三人の婦人がそれを拾い集めていく
三人の婦人がそれを拾い集めていく
キャンプ用ベッドをそれで作るためだ
繰り返し

14.
セ プゥァ・ロ フェァ ア リ ドゥ コ
C'est pour en faire un lit de camp

セ プゥァ・ロ フェァ ア リ ドゥ コ
C'est pour en faire un lit de camp

プゥァ・リ クゥシェ トゥ レ パソ
Pour y coucher tous les passants.

 繰り返し

14.
キャンプ用ベッドをそれで作るためだ
キャンプ用ベッドをそれで作るためだ
道行く人々をみな寝かせるために
繰り返し

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 ガイド   この歌の直接の発祥は、17世紀のカナダのケベック地方で、当時の開拓者や探検家たちの間で広く歌われたとされています。もともとは、フランス各地の民謡の幾つかが源となって生まれた歌ですが、この『V'la l'Bon Vent』の繰り返し部分の歌詞、および旋律は、カナダで生まれたものだと考えられています。
 狩りをする王子とアヒルにまつわる内容の民謡は、フランス語圏の各地に見られます。現在最も良く知られているのはこの『V'la l'Bon Vent』ですが、このほかにも
 『Mon Père M'a Donné un Étang(私の父が私に池をくれた)』
 『L'Vent Frivolant(気まぐれな風)』
 『En Roulant Ma Boule(私のボールを転がしていると) 』
などが知られています。
 これらの歌は、いずれも内容は共通していて、
「池にアヒルが泳いでいる。それを王子が銃で撃った。撃たれたアヒルの目からはダイヤモンド、口からは金と銀が流れ出る。羽根は風に乗って飛ばされ、それを女たちが拾い集める。」
という物語になっています。それぞれの歌ではっきり異なっているのは繰り返しの部分で、いずれの歌でも「さわり(サビ)」として扱われている部分です。  

ひとりごと
 フランス語圏の民謡としては珍しい――というよりも、知られた例が少ないと言うべきでしょうか――短調の民謡です。「ガイド」で挙げたほかの3つの民謡のうち『Mon Père M'a Donné un Étang』『En Roulant Ma Boule』のふたつは長調なのに、これらの歌から生まれたと推測される『V'la l'Bon Vent』が短調なのは興味深いことです。短調のフランス民謡には、ほかに『Compagnons de la Marjolaine(マルジョレーヌの仲間たち)』や『Colchiques dans les Prés(牧場にイヌサフランが)』などが知られていますが、日本民謡とは違ってフランス語圏では短調の民謡は少数派のようです。
 「開拓者や探検家たちの間で広く歌われた」とのことですが、彼らはどのような気持ちでこの歌を歌っていたのでしょうか。歌詞の終わりの「道行く人々をみな寝かせる」の部分にその答えがあるような気が、筆者にはします。暖かく柔らかいベッドでくつろぐことは、疲れきった開拓者たちにとっては、ダイヤモンドや金銀にも換えがたい幸せでしょうから。
 この歌のような幻想的な歌詞は、いかにも民謡らしく、また素朴さを感じさせるので、私はけっこう好みだったりします。



参照URL
http://home.ca.inter.net/~yvondian/bonvent.htm
http://www.alyon.org/litterature/chansons/index.html(以上メイン歌詞)
http://thecanadianencyclopedia.com/index.cfm?PgNm=TCE&Params=Q1ARTQ0003612
http://www.rassat.com/textes/V-l-a_l-bon_vent.html
http://www.medietrad.com/chant.php?cid=203
http://thierry-klein.nerim.net/derriecn.htm
http://www.momes.net/comptines/vent/lbon-vent.html
http://bmarcore.club.fr/Tine/E143.htm
http://www.alansim.com/canhtml/can067.html
http://users.skynet.be/sky42184/Chanson_Vlalbonvent.htm
http://www.songsforteaching.com/canada/vlalbonvent.htm
http://www.musicanet.org/robokopp/french/lbonvent.htm

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ最終更新:2008/01/13

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