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ABSCHIED (MUSS I DENN)
別れ(僕はどうしても)

恋人と別れて旅に出る若者の歌。

作詞:不詳、但し一部はH.ヴァーグナーによる
作曲:不詳  /  1820年代成立

邦題
『別れの歌』『ムシデン』
『やさしの山吹』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜3番
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
ムス・ィ デン ムス・ィ デン
Muß i denn, muß i denn

ツム シュテーッテレ ヒンナォス
Zum Städtele hinaus,

シュテーッテレ ヒンナォス
Städtele hinaus

ウン ドゥ、マィン シャッツ ブライプス ヒーァ
Und du, mein Schatz, bleibst hier

ヴェ・ニ コム ヴェ・ニ コム
Wenn i komm', wenn i komm',

ヴェ・ニ ヴィーデルム コム、ヴィーデルム コム
Wenn i wiederum komm', wiederum komm',

ケー・リ アィ マィ シャッツ バィ ディァ
Kehr i ei' mei' Schatz bei dir


カ・ニ グラィ ネッ アールヴァイル バィ ディァ ザイ
Kann i glei' net allweil bei dir sei'

ハ・ニ ドホ マィ フロィド アン ディァ
Han' i doch mei' Freud' an dir

ヴェ・ニ コム ヴェ・ニ コム
Wenn i komm', wenn i komm',

ヴェ・ニ ヴィーデルム コム、ヴィーデルム コム
Wenn i wiederum komm', wiederum komm',

ケー・リ アィ マィ シャッツ バィ ディァ
Kehr' i ei' mei' Schatz bei dir.

1.
僕はどうしても、どうしても
町から出て行かなければならない
町から出て行かなければ
そして僕のいとしい君はここにとどまっている
僕が帰ってきたら、帰ってきたら
僕が再び戻ってきたら、戻ってきたら
僕のいとしい恋人、君のもとを訪れよう

ずっと君のそばにはいられないけれど
僕の喜びは君に懸かっている
僕が帰ってきたら、帰ってきたら
僕が再び戻ってきたら、戻ってきたら
僕のいとしい恋人、君のもとを訪れよう

glei' 【副詞】=gleich  すぐそばに。
wiederum 【副詞】ふたたび。
han' 【動詞・一人称単数現在形】
=habe  〜を有する。

2.
ヴィー ドゥ ヴァィンスト、ヴィー ドゥ ヴァィンスト
Wie du weinst, wie du weinst,

ダス・ィ ヴァンデレ ムス
Daß i wandere muß,

ヴァンデレ ムス
Wandere muß,

ヴィー ヴェン ヅリープ ィエッ ヴェァ フォァバイ
Wie wenn d'Lieb jetzt wär vorbei

ズィン・タォ ドラォス、ズィン・タォ ドラォス
Sind au' drauß, sind au' drauß,

デァ メーデレ フィール、メーデレ フィール
Der Mädele viel, Mädele viel

リーバァ シャッツ、イ ブラィプ ディァ トロィ
Lieber Schatz, i bleib dir treu.


デンク ドゥ ネーッ ヴェン イ ア アンドレ ゼー
Denk du nett wenn i a and're seh

ノォ ザィ マィ リープ フォァバィ
No sei mei Lieb' vorbei

ズィン・タォ ドラォス、ズィン・タォ ドラォス
Sind au' drauß, sind au' drauß,

デァ メーデレ フィール、メーデレ フィール
Der Mädele viel, Mädele viel

リーバァ シャッツ、イ ブラィプ ディァ トロィ
Lieber Schatz, i bleib dir treu.

2.
なんと君の泣くことか、君の泣くことか
僕が旅に出ねばならないからと
旅に出なければならないからと
まるで愛がいま過ぎ去ってしまうかのようだ
遠くの地には、遠くの地には
娘がおおぜい、娘がおおぜいいるけれど
いとしい君よ、僕は君を裏切ったりしない

考えないで、僕が他の娘に会ったりしたら
僕の愛は終わってしまうなどとは
遠くの地には、遠くの地には
娘がおおぜい、娘がおおぜいいるけれど
いとしい君よ、僕は君を裏切ったりしない
wandere
【動詞】(職人が)遍歴の旅に出る。
drauß
【副詞】=draußen  外で、遠くで。
Mädele =Mädchen  
若い女性、娘さん。

3.
ィユーベァス ヤーァ、ィユーベァス ヤーァ
Übers Jahr, übers Jahr,

ヴェン メァ トロィベレ シュナィト
Wenn mer Träubele schneidt,

トロィベレ シュナィト
Träubele schneidt,

シュテ・リ ヒーァ ミ ヴィードルーム アィ
Stell i hier mi' wiedrum ei'

ビ・ニ ダン、ビ・ニ ダン
Bin i dann, bin i dann,

ダィ シェッツェレ ノォ、シェッツェレ ノォ
Dei' Schätzele no', Schätzele no'

ゾォ ゾル ディ ホーホツァィッ ザィ
So soll die Hochzeit sei.


ィユーベァス ヤーァ ド イシュト マィ ツァイト フォァバイ
Übers Jahr do ischt mei' Zeit vorbei

ドォ クヘーァ・リ マィ ウン ダィ
Do g'hör i mei und dei

ビ・ニ ダン、ビ・ニ ダン
Bin i dann, bin i dann,

ダィ シェッツェレ ノォ、シェッツェレ ノォ
Dei' Schätzele no', Schätzele no'

ゾォ ゾル ディ ホーホツァィッ ザィ
So soll die Hochzeit sei.

3.
一年たって、一年たって
ブドウを摘んだら
ブドウを摘んだら
再びここにやって来よう
そのとき僕が、そのとき僕が
まだ君のいとしい人なら、いとしい人なら
結婚式を挙げよう

一年たったら僕の修行時期が終わる
そうすれば僕は僕自身と君のものになる
そのとき僕が、そのとき僕が
まだ君のいとしい人なら、いとしい人なら
結婚式を挙げよう

mer【代名詞】(方言形)=wir  僕たち。
Träubele【植物】ブドウ。
g'hör  【動詞・一人称単数現在形】(方言形)
=gehöre 〜のものである。

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 ガイド   遍歴の旅に出る若者と、その恋人とのひとときの別れを歌った、南独・シュヴァーベン地方の民謡です。1番の歌詞の作者は定かではありませんが、2番と3番は、1824年に、ハインリヒ・ヴァーグナー(Heinrich Wagner、生没年未詳)という人物が書いたものだと分かっています。また、旋律は、『ローレライ』や『菩提樹』でも知られる、バーデン・ヴュルテンブルク州の作曲家フィリップ・フリードリヒ・ジルヒャー(Philipp Friedrich Silcher)が1827年に採譜したものです。
 歌詞はかなり方言色の強いドイツ語で書かれています。上の「語句」に挙げた単語のほか、語尾を省略したものが多用されています。ほかにも下のような方言形が使われているのがこの歌の特徴であり、味わいとも言えるでしょう。
  i  =ich  【代名詞】わたしは、僕は。
 net nett =nicht  【副詞】〜ではない。
 ei'  =ein  【冠詞】ひとつの、ひとりの。

 この歌は、米国の著名な歌手、エルヴィス・プレスリーがドイツ語詞で歌ったことでも有名です。

ひとりごと
 ドイツ文化を語るうえで欠かすことのできない(?)遍歴の旅ですが、あちらこちらの地方を旅して、行く先々で仕事をし、技能を身に付けるもののようです。同じくドイツ民謡の小さなハンスも遍歴の旅を扱った歌ですが、まさに「かわいい子には旅をさせよ」を地で行くような習慣だと、私は思っています。
 この歌の主人公は故郷へ戻ってくるつもりのようですが、おそらく現実には、旅先に根を下ろしてしまったり、命尽きて帰ってこられなかった人もいたことでしょう。歌の登場人物に過ぎないとはいえ、このカップルの末永い幸せを願いたいものです。



参考URL
http://ingeb.org/Lieder/MussIDen.html
http://www.europalangues.com/mussidenn.htm
http://de.wikipedia.org/wiki/Philipp_Friedrich_Silcher

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ最終更新:2011/05/20


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