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ВОТ МЧИТСЯ ТРОЙКА ПОЧТОВАЯ
ほら、郵便トロイカが走っていく

恋人を金持ちの男に取られそうな青年御者の悲嘆を描いています。

作詞:不詳  /  作曲:不詳  /  19世紀頃成立?

邦題
『トロイカ』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)


◆原歌詞:1〜6番
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
ヴォーッ ムチーッツャ トローィカ パチタヴァーィヤ
Вот мчится тройка почтовая

パ ヴォールギェ・マートゥシキェ ズィモーィ
По Волге-Матушке зимой.

イムシーク、ウヌィーラ ナピェヴァーィヤ
Ямщик, уныло напевая,

カチャィエーッ ブーィナィ ガラヴォーィ
Качает буйной головой.

1.
ほら、郵便トロイカが走っていく
冬場に母なるヴォルガ沿いを
御者は、陰気に歌いながら
髪ぼうぼうの頭を揺すっている
мчится【動詞・三人称単数現在】
 速やかに走る、疾走する。
тройка トロイカ。馬3頭で引く馬車や橇のこと。
уныло【副詞】元気なく、気が沈んで。
буйной【形容詞・女性形造格】
 激しい、荒れ狂った、盛んに茂る。
 ここでは、最後の意味から「髪の毛がぼうぼうに伸びた」と解釈しました。

2.
ア チョーム ザドゥーマルスャ、ヂェチーナ?
"О чём задумался, детина?-

スェドーク プリヴェートリヴァ スプラスィール
Седок приветливо спросил.-

カカーヤ ナ スェールツェ クルーチナ
Какая на сердце кручина,

スカジィー、チェビャー クトー アガルチール?
Скажи, тебя кто огорчил?"

2.
『何について考え込んでいたんだね、あんちゃん?』
乗客が愛想よく尋ねた
『胸のうちにどんな悲しみがあるのか、
 話してごらん、誰があんたを悲しませたのか?』
детина〔口語で〕背が高くて逞しい若者。ここでは俗っぽく「あんちゃん」としました。
приветливо【形容詞・中性短語尾形】
 愛想よく、慇懃に。
кручина 悲哀、憂鬱。
огорчил【動詞・男性過去形】
 悲しませる、傷心させる。

3.
アーフ、ミーリィ バーリン、ドーブルィ バーリン
"Ах, милый барин, добрый барин

ウーシ スコーラ ゴーッ、カーク ヤー リュブリュー
Уж скоро год, как я люблю,

ダ ニェーフリスチ・スタロースタ・タターリン
Да нехристь-староста-татарин

ミニャー ジュリーッ、ア ヤー チェルプリュー
Меня журит, а я терплю.

3.
『ああ、優しい旦那、親切な旦那、
 俺が恋をしてからもうじき一年がたつ
 でも、人でなしで年を食ったタタール人が
 俺をなじるんで、俺は我慢しているんだ』
уж【副詞】形容詞や副詞(ここでは直後のскоро)に付いて意味を強める働きをします。
нехристь 人でなし、不信心者。
журит【動詞・三人称単数現在形】小言を言う。

4.
アーフ、ミーリィ バーリン、スコーラ スヴャートキィ
Ах, милый барин, скоро святки,

ア ィエィ ニェ ブィーチ ウジェー マィエーィ
А ей не быть уже моей,

バガーチィ ヴィーブラル、ダ パスチィーリィ
Богатый выбрал, да постылый -

ィエーィ ニェ ヴィダーチ アトラーッニフ ドニェーィ
Ей не видать отрадных дней..."

4.
『ああ、優しい旦那、もうすぐクリスマスだ
 でもあの子はもう俺のものにはならない
 金持ちが選びとったんだ、嫌な奴さ
 あの子にゃ幸せな日々を見ることなんて無いだろう…。』
святки クリスマス週間。なお、この歌の書かれた頃はロシアでは旧暦が使われていたと考えられるので、クリスマス週間は12月25日から1月6日です(新暦では1月7日から18日まで)。
постылый  嫌いな人。

5.
ィヤムシーク ウーマルク イ クヌーッ リミョーンヌィ
Ямщик умолк и кнут ремённый

ズ・ダサードィ ザ ポーィヤス ザトクヌゥール
С досадой за пояс заткнул.

ローッヌィエ、ストーィ! ニェウガモーニィ
"Родные, Стой! Неугомонны! -

スカザール、サーム ガリェースナ ヴズダハヌゥール
Сказал, сам горестно вздохнул.

5.
御者は沈黙し、革のむちを
いまいましげにベルトに挿し込んだ
『兄弟よ、止まれ!騒がしいぞ!』
彼は言い、自分は悲しげにため息をついた
умолк 沈黙。
ремённый【形容詞・男性単数主格】
 革の、革帯の。
досадой【造格】いまいましさ、恨み。
родные【形容詞・複数主格】血のつながった。
ここではトロイカを引く馬への呼びかけでしょう。

6.
パ ムニェー ラシャドゥーシキィ ヴズグルゥスヌーッツャ
По мне лошадушки взгрустнутся

ラスターフシィス、ボールジィェ、サ ムノーィ
Расставшись, борзые, со мной,

ア ムニェー ウーシ ボーリシェ ニェ プロームチャツャ
А мне уж больше не промчатся

パ ヴォールギェ・マートゥシキェ ズィモーィ
По Волге-Матушке зимой!"

6.
『馬たちは俺のことを悲しんでいる
 足の速い奴ら、俺と別れるので
 そしてもうこいつらが駆けることはない
 冬場に母なるヴォルガ沿いを!』
взгрустнутся【動詞・三人称複数現在形】
 急に悲しくなる。
расставшись【動詞・副動詞形】
 <расстаться 別れる。
борзые【形容詞・複数主格】
 (馬が)走るのが速い。
промчатся【動詞・三人称複数現在形】
 疾走する。


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 ガイド   この歌は、作者のはっきりしていないロシア民謡です。
 ロシアの詩人フョードル・ニコラーイエヴィチ・グリンカ(Фёдор Николаевич Глинка、1786〜1880)によって書かれたとする資料もありますが、グリンカが書いたのは、この歌ではなく、題のよく似た『Вот Мчится Тройка Удалая(放縦なトロイカが駆ける)』という歌です。
 歌の内容は、恋する女性がいるのに、彼女が金持ちのタタール人のところへ嫁いで行ってしまうというので気落ちしている御者の心痛を歌っているものです。
 日本では、原歌詞と異なる「雪の白樺並木…」の歌詞で知られていますが、これは、まったく別の歌の歌詞がこの『Вот Мчится Тройка Почтовая』の曲に対してつけられたものです。

ひとりごと
 それにしても、なんとも悲しげな歌です。まるで演歌ですね。
 ええ、日本の演歌にも、このように横恋慕されて恋人をかどわかされたという内容のものが散見します。ヨーロッパではかなり珍しいパターンの歌ですが、ロシアではさほど珍しくもないようです。
 ヨーロッパから見て、ロシアが「アジア的」と呼ばれるひとつの典拠でしょう。
 ところで、気になるのは、「なぜ日本では、この歌のメロディーが、違う歌に流用されたのか?」ということです。この歌のメロディーは、日本で『トロイカ』の題名で知られる歌のメロディーに用いられていますが、この歌の歌詞は、別のロシアの歌に由来しています。こちらの歌にも当然メロディーが伴っていたはずですから、何も余計なことをせずに原曲をそのまま使えばよかったはずなのに…と思うのですが。


◎各種参考URL
【歌詞】
○http://www.pitt.edu/~slavic/sli/admin/mail.html
○http://www.all4wedding.com/articles_670.htm
○http://pesni.retroportal.ru/np1/18.shtml
○http://www.oldbook.nm.ru/pesennik-1958.htm
○http://www.midi-karaoke.info/21a5e24d.ru.html
○http://akaka.al.ru/slovar/Hg-T.htm
○http://magazines.russ.ru/neva/2007/2/an13.html

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ最終更新:2008/02/16

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