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MALBROUGH S'EN VA-T-EN GUERRE
マルブルーは戦争へ行ってしまう

夫の帰りを待ちわびるマルブルー夫人のもとに届いた悲しい報告。

作詞:不詳  /  作曲:不詳  /  楽曲は1709年頃成立

邦題
『マールボロ行進曲』
『マルブルーは戦争へ行く』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜22番
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
マルブルゥ ソ ヴァト ゲェレ
Malbrough s'en va-t-en guerre,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine;

マルブルゥ ソ ヴァト ゲェレ
Malbrough s'en va-t-en guerre,

ヌ セ コ ルヴャドラ
Ne sait quand reviendra;

ヌ セ コ ルヴャドラ
Ne sait quand reviendra;

ヌ セ コ ルヴャドラ
Ne sait quand reviendra...

1. 
マルブルーは戦争へ行ってしまう
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
マルブルーは戦争へ行ってしまう
いつ帰ってくるか分からない
いつ帰ってくるか分からない
いつ帰ってくるか分からない

Malbrough【固有名詞】
英国のマールバラ公爵一世ことジョン・チャーチル(1650〜1722)のこと。詳しくはガイドをご参照ください。
なお、英語では「Marlborough」と綴り、読みも「マールバラ」ですが、ここでは当然ながらフランス語の綴りと読みに従いました。
va-t-en【連語】=va en
「〜へ行く」。母音の連続を避けるために、間に「t」の音を入れています(いわゆるリエゾン)。
sait【動詞・三人称単数現在形】<savoir 知る。
意味上の主語は、4番に出てくる「Madame(奥方)」あるいは不定代名詞の「on」とするのが妥当でしょう。
この語を、一人称単数現在形の「sais」としているバージョンもあります。


2.
イル ルヴャドラ・ザ パケ
Il reviendra-z-à Pâques,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine;

イル ルヴャドラ・ザ パケ
Il reviendra-z-à Pâques,

ウ ア ラ トリニテ
Ou à la Trinité;

ウ ア ラ トリニテ
Ou à la Trinité;

ウ ア ラ トリニテ
Ou à la Trinité.

2.
彼は復活祭には戻ってくるだろう
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
彼は復活祭には戻ってくるだろう
あるいは三位一体の祝日には
あるいは三位一体の祝日には
あるいは三位一体の祝日には

reviendra-z-à【連語】=reviendra à
「〜に帰ってくる」。母音の連続を避けるため、間に「z」を挿入しています(リエゾン)。
Pâques【宗教】復活祭、イースター。
イエスの復活を祝うキリスト教の祝日。春分の後の最初の満月の次の日曜日で、3月下旬〜4月下旬に当たります。
Trinité【宗教】三位一体の祝日。
キリスト教の教義である三位一体を祝う日。聖霊降臨祭(復活祭から数えて7番目の日曜日)の次の日曜日です。すなわち復活祭からほぼ2か月後に当たります。
なお、à Pâques ou à la Trinitéで、「まず起こらないだろうが」という意味の慣用句になります。


3.
ラ トリニテ ス パセ
La Trinité se passe,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine;

ラ トリニテ ス パセ
La Trinité se passe,

マルブルゥ ヌ ルヴャ パ
Malbrough ne revient pas;

マルブルゥ ヌ ルヴャ パ
Malbrough ne revient pas;

マルブルゥ ヌ ルヴャ パ
Malbrough ne revient pas.

3.
三位一体の祝日も過ぎた
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
三位一体の祝日も過ぎた
マルブルーは戻ってこない
マルブルーは戻ってこない
マルブルーは戻ってこない

4.
マダム ア サ トゥァ モ
Madame à sa tour monte,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

マダム ア サ トゥァ モ
Madame à sa tour monte,

スィ オ ケル ペゥ モ
Si haut qu'ell' peut monter;

スィ オ ケル ペゥ モ
Si haut qu'ell' peut monter;

スィ オ ケル ペゥ モ
Si haut qu'ell' peut monter.

4.
奥方はご自分の塔に登った
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
奥方はご自分の塔に登った
登れるかぎり高く
登れるかぎり高く
登れるかぎり高く

5.
エレ アペェァスヮ ソ パージェ
Elle aperçoit son page,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

エレ アペェァスヮ ソ パージェ
Elle aperçoit son page,

トゥー ドゥ ヌヮ・ラビィエ
Tout de noir habillé

トゥー ドゥ ヌヮ・ラビィエ
Tout de noir habillé

トゥー ドゥ ヌヮ・ラビィエ
Tout de noir habillé.

5.
彼女は自分の小姓を見かける
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
彼女は自分の小姓を見かける
黒ずくめの服装をした
黒ずくめの服装をした
黒ずくめの服装をした

aperçoit【動詞・三人称単数現在形】
 <apercevoir 見かける。
habillé【動詞・過去分詞】<habiller
 服を着た。「de」をつけて、「〜な服を着た」の意味になります。


6.
ボー パージ!アー!モ ボー パージェ
Beau page ! Ah ! Mon beau page,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

ボー パージ!アー!モ ボー パージェ
Beau page ! Ah ! Mon beau page,

ケル ヌゥヴェル アポルテ?
Quelle nouvelle apportez ?

ケル ヌゥヴェル アポルテ?
Quelle nouvelle apportez ?

ケル ヌゥヴェル アポルテ?
Quelle nouvelle apportez ?

6. 
みめよき小姓よ!ああ、我がみめよき小姓よ
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
みめよき小姓よ!ああ、我がみめよき小姓よ
如何な知らせを持ってきているのか?
如何な知らせを持ってきているのか?
如何な知らせを持ってきているのか?

7.
オ ヌゥヴェル ケ ジャポォァテ
Aux nouvell's que j'apporte,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

オ ヌゥヴェル ケ ジャポォァテ
Aux nouvell's que j'apporte,

ヴォ ボー ユゥ ヴォ プレゥレ
Vos beaux yeux vont pleurer;

ヴォ ボー ユゥ ヴォ プレゥレ
Vos beaux yeux vont pleurer;

ヴォ ボー ユゥ ヴォ プレゥレ
Vos beaux yeux vont pleurer.

7.
私の持ってきた知らせをお聞きになったら
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
私の持ってきた知らせをお聞きになったら
貴女様の美しい両目は涙を流すでしょう
貴女様の美しい両目は涙を流すでしょう
貴女様の美しい両目は涙を流すでしょう

vont【動詞・三人称複数現在形】<aller
(不定詞を直後に伴って)〜する。確実な未来を表します。


8.
キテ ヴォ・ザビ ロゼ
Quittez vos habits roses,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

キテ ヴォ・ザビ ロゼ
Quittez vos habits roses,

エ ヴォ サタ ブロシェ
Et vos satins brochés;

エ ヴォ サタ ブロシェ
Et vos satins brochés;

エ ヴォ サタ ブロシェ
Et vos satins brochés.

8.
貴女様のばら色の衣装をお脱ぎください
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
貴女様のばら色の衣装をお脱ぎください
そして錦織のサテンも
そして錦織のサテンも
そして錦織のサテンも

brochés【形容詞・複数形】
錦・金襴に織った。


9.
ムセュ ドマルブルゥ エ モール
Monsieur d'Malbrough est mort,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

ムセュ ドマルブルゥ エ モール
Monsieur d'Malbrough est mort,

エ モール エ オテレ
Est mort et enterré

エ モール エ オテレ
Est mort et enterré

エ モール エ オテレ
Est mort et enterré.

9.
マルブルー閣下はお亡くなりになりました
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
マルブルー閣下はお亡くなりになりました
亡くなって埋葬されました
亡くなって埋葬されました
亡くなって埋葬されました

enterré【動詞・過去分詞】
埋められた、埋葬された。


10.
ジレ ヴュ ポルテ オ テェレ
J'l'ai vu porté en terre,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

ジレ ヴュ ポルテ オ テェレ
J'l'ai vu porté en terre,

パル カトル ゾフィスィエル
Par quatre-z-officiers;

パル カトル ゾフィスィエル
Par quatre-z-officiers;

パル カトル ゾフィスィエル
Par quatre-z-officiers.

10.
私は閣下が埋葬されるのを見ました
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
私は閣下が埋葬されるのを見ました
四人の将校によって
四人の将校によって
四人の将校によって

porté en terre【熟語】
 <porter 〜 en terre 〜を埋葬する。
officiers【複数形】将校。
なお、直前のzは、母音の連続を避けるためのリエゾンのために出現しています。


11.
 ポーァテ サ クュィラセ
L'un portait sa cuirasse,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

 ポーァテ サ クュィラセ
L'un portait sa cuirasse,

ロトル ソ ブゥクリィエ
L'autre son bouclier;

ロトル ソ ブゥクリィエ
L'autre son bouclier;

ロトル ソ ブゥクリィエ
L'autre son bouclier.

11.
ひとりは閣下の胴鎧を運んでいました
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
ひとりは閣下の胴鎧を運んでいました
もうひとりは閣下の盾を
もうひとりは閣下の盾を
もうひとりは閣下の盾を

cuirasse 胴部分だけの鎧、胸当て。
bouclier 盾。


12.
 ポーァテ ソ グロ サブレ
L'un portait son grand sabre,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

 ポーァテ ソ グロ サブレ
L'un portait son grand sabre,

ロトル ヌ ポーァテ リャ
L'autre ne portait rien;

ロトル ヌ ポーァテ リャ
L'autre ne portait rien;

ロトル ヌ ポーァテ リャ
L'autre ne portait rien.

12.
ひとりは閣下の大きなサーベルを運んでいました
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
ひとりは閣下の大きなサーベルを運んでいました
もうひとりは何も運んでいませんでした
もうひとりは何も運んでいませんでした
もうひとりは何も運んでいませんでした

13.
ア ロトゥァ ドゥ サ ト
A l'entour de sa tombe,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

ア ロトゥァ ドゥ サ ト
A l'entour de sa tombe

ロマラ ロ プロ
Romarin l'on planta;

ロマラ ロ プロ
Romarin l'on planta;

ロマラ ロ プロ
Romarin l'on planta.


13.
お墓の周りには
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
お墓の周りには
ローズマリーが植えてありました
ローズマリーが植えてありました
ローズマリーが植えてありました

romarin【植物】ローズマリー、マンネンロウ。
地中海地方に多いシソ科の潅木。青い花をつけます。近年は日本でも食用ハーブとして知られています。


14.
スュ ラ プルュ オッ ブロシェ
Sur la plus haute branche,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

スュ ラ プルュ オッ ブロシェ
Sur la plus haute branche,

ル ロスィニョル ショ
Le rossignol chanta;

ル ロスィニョル ショ
Le rossignol chanta;

ル ロスィニョル ショ
Le rossignol chanta.

14.
いちばん高いところの枝では
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
いちばん高いところの枝では
ナイチンゲールが歌っていました
ナイチンゲールが歌っていました
ナイチンゲールが歌っていました

15.
 ヴィ ヴォレ ソ・ナメ
On vit voler son âme,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

 ヴィ ヴォレ ソ・ナメ
On vit voler son âme,

ア トラヴェル レ ロリィエ
À travers les lauriers;

ア トラヴェル レ ロリィエ
À travers les lauriers;

ア トラヴェル レ ロリィエ
À travers les lauriers.

15.
閣下の魂が飛ぶのが見えました
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
閣下の魂が飛ぶのが見えました
ゲッケイジュ越しに
ゲッケイジュ越しに
ゲッケイジュ越しに

âme 魂、霊魂。
à travers 〜【熟語】〜を通して、〜越しに。


16.
シャカ ミ ヴォトル ア テレ
Chacun mit ventre à terre,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

シャカ ミ ヴォトル ア テレ
Chacun mit ventre à terre,

エ プュィ ス ルルヴァ
Et puis se releva;

エ プュィ ス ルルヴァ
Et puis se releva;

エ プュィ ス ルルヴァ
Et puis se releva.

16. 
ひとりひとり腹ばいになって
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
ひとりひとり腹ばいになって
それから起き上がりました
それから起き上がりました
それから起き上がりました

releva【動詞・三人称単数単純過去】
 <relever 起こす、立たせる。


17.
プゥル ショテ レ ヴィクトヮレ
Pour chanter les victoires,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

プゥル ショテ レ ヴィクトヮレ
Pour chanter les victoires,

ク マルブルゥ ロポァタ
Que Malbrough remporta;

ク マルブルゥ ロポァタ
Que Malbrough remporta;

ク マルブルゥ ロポァタ
Que Malbrough remporta.

17.
勝利を歌うために
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
勝利を歌うために
マルブルーの勝ち得た勝利を
マルブルーの勝ち得た勝利を
マルブルーの勝ち得た勝利を

remporta【動詞・三人称単数単純過去】
<remporter 持ち帰る、勝ち取る。


18.
ラ セレモニ フェテ
La cérémonie faite,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

ラ セレモニ フェテ
La cérémonie faite,

シャカ ソ フュ クゥシェ
Chacun s'en fut coucher;

シャカ ソ  フュ クゥシェ
Chacun s'en fut coucher;

シャカ ソ  フュ クゥシェ
Chacun s'en fut coucher.

18.
式は済んで
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
式は済んで
めいめい寝ることにしました
めいめい寝ることにしました
めいめい寝ることにしました

19.
レ・ザ・ザヴェク レゥル ファメ
Les uns avec leurs femmes,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

レ・ザ・ザヴェク レゥル ファメ
Les uns avec leurs femmes,

エ レ・ゾトレ トゥ セゥル
Et les autres tout seuls;

エ レ・ゾトレ トゥ セゥル
Et les autres tout seuls;

エ レ・ゾトレ トゥ セゥル
Et les autres tout seuls.

19.
いくたりかは彼らの妻たちと
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
いくたりかは彼らの妻たちと
そしていくたりかは独りきりで
そしていくたりかは独りきりで
そしていくたりかは独りきりで

20.
ス ネ パ キル オ モ
Ce n'est pas qu'il en manque,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

ス ネ パ キル オ モ
Ce n'est pas qu'il en manque,

カル ジォ コネ ボクゥ
Car j'en connais beaucoup;

カル ジォ コネ ボクゥ
Car j'en connais beaucoup;

カル ジォ コネ ボクゥ
Car j'en connais beaucoup.

20.
いなくて物足りないわけではございません
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
いなくて物足りないわけではございません
私はよく存じていますから
私はよく存じていますから
私はよく存じていますから

manque【動詞・三人称単数現在形】
 <manquer (何か・誰か)を逃す、〜がいなくて寂しい。


21.
デ ブロド エ デ ブルュネ
Des blondes et des brunes,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

デ ブロド エ デ ブルュネ
Des blondes et des brunes,

エ デ シャタ オスィ
Et des châtains aussi;

エ デ シャタ オスィ
Et des châtains aussi;

エ デ シャタ オスィ
Et des châtains aussi.

21. 
金髪のかたも褐色の髪のかたも
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
金髪の人も褐色の髪の人も
栗色の髪のかたも同様に
栗色の髪のかたも同様に
栗色の髪のかたも同様に

brunes【形容詞】(髪が)褐色の。
châtains【形容詞】(髪が)栗色の。


22.
ジノ ディ パ ダヴォタージェ
J'n'en dis pas davantage,

ミロ、ト、ミロテェネ
Mironton, tonton, mirontaine ;

ジノ ディ パ ダヴォタージェ
J'n'en dis pas davantage,

カル オ ヴヮラ・ザセ
Car en voilà-z-assez;

カル オ ヴヮラ・ザセ
Car en voilà-z-assez;

カル オ ヴヮラ・ザセ
Car en voilà-z-assez.

22.
これ以上は申し上げません
ミロントン、トントン、ミロンテーヌ
これ以上は申し上げません
もうたくさんですから
もうたくさんですから
もうたくさんですから

davantage【副詞】より一層、これ以上。
en voilà-z-assez【慣用句】これ以上はもうたくさんだ、うんざりだ。
母音の連続を避けるために、間に「z」の音を入れています(リエゾン)。

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 ガイド   この歌は、中世の古謡の旋律と歌詞が、替え歌として歌われるようになったものと考えられています。一説には、元になった古謡は中近東が発祥の歌で、十字軍によりヨーロッパにもたらされたとも言われています。
 現在知られているこの歌詞が生まれたのは、1709年9月11日のマルプラーケ(Malplaquet)の戦い〔※1〕のあとであると言われています。モチーフとなっているのは英国のマールバラ公爵一世ことジョン・チャーチル(John Churchill、1650〜1722)です。
 この歌詞は、フランスの兵士たちが作り出した替え歌です。マルプラーケの戦いで旗色が悪かったフランス軍に、マールバラ公が戦死したという誤った情報が伝えられ、そこから「マールバラ公が死んで埋められた」という内容の歌をからかい半分に作って歌ったとされています。実際には、マールバラ公は重傷を負ったものの、戦死はしませんでした。
 この歌はそれからしばらくの間忘れられて、一部の地方でのみ歌われていましたが、1781年に、ルイ16世(1754〜1792)の長男(のちのルイ17世)の乳母であったジュヌヴィエーヴ・ポワトリーヌ(Geneviève Poitrine、生没年不詳)が子守唄として歌ったものが宮廷中に広まり、やがて世間に広まったとされています。おそらくポワトリーヌの出身地がこの歌の残存していた地方だったのでしょう。ルイ16世の妻のマリー・アントワネット(Marie Antoinette、1755〜1793)がこの歌を耳にして気に入り、彼女が歌うにつれて宮廷じゅうにこの歌が広まったといいます。
 この歌は世間でも人気になり、以下のようなアレンジ楽曲が作られています。

  • フランスの劇作家ピエール・オーギュスタン・カロン・ドゥ・ボーマルシェ(Pierre Augustin Caron de Beaumarchais、1732〜1799)は1784年の喜歌劇『Le Mariage de Figaro(フィガロの結婚)』でこの歌の替え歌を小姓のケルビーノに歌わせています。
  • ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven、1770〜1827)は、『Wellingtons Sieg oder die Schlacht bei Vittoria(邦題:ウェリントンの勝利またはビトリアの戦い、別名「戦争交響曲」)』〔※2〕の中でフランス軍の象徴としてこの曲を用いています。
  • フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet、1838〜1875)は、1867年にその名も『Malbrough S'en Va-t-en Guerre』というオペレッタを作曲しています(全4幕のうち第1幕のみ)。
  • スペインのギタリストで作曲家であったフェルナンド・ソル(Fernando Sor、1778〜1839)は、1827年に『マルブルーの主題による変奏曲 (Introduction et variations sur Marlborough s'en va-t-en guerre) 』というギター曲を作曲しています。

  •  さらに英語圏では、『For He's a Jolly Good Fellow(あいつは陽気ないい奴だから)』や『The Bear Went Over the Mountain(クマが山を越えていった)』という異なる内容の歌詞で知られています。

     ジョン・チャーチルはイングランド出身の軍人でかつ政治家です。早くから軍才を見出され、スペイン継承戦争で巧みな行軍を展開したことで知られています。また一代でマールバラ公爵家を興しています。死因はこの歌に歌われている戦死ではなく、自宅で卒中の発作により亡くなっています。

     歌い方について。フランス語では、一般に語尾の「e」は発音しませんが、歌や詩では発音することもあります。この歌では「e」を発音します。
     また、各連に含まれるフレーズのMironton, tonton, mirontaineは、「Mironton, mironton, mirontaine」とされることもあります。発音は「ミロントン、ミロントン、ミロンテーネ」に近いものになります。

    〔※1〕1701〜1714年に行われたスペイン継承戦争(スペインの王位の継承者を巡ってヨーロッパ各地で起きた戦争)における局地戦のひとつで、英・独・オーストリア連合軍と、フランス王国軍とがフランスのマルプラーケ村(ベルギーとの国境沿い)の付近で行ったものです。スペイン継承戦争における個々の戦いの中でもとりわけ激しいものだったといわれます。連合軍が勝利しています。
    〔※2〕1813年の作品。ウェリントン公爵(Duke of Wellington、名前はアーサー・ウェルズリー〔Arthur Wellesley〕、1769〜1852)が1813年6月にスペイン・ビトリアの戦いでフランス軍を破ったことを受けて作曲されました。当時は人気を博しましたが、現在はほとんど演奏されることはありません。

    ひとりごと
     ずいぶん長い歌ですね。マダム・ポワトリーヌもこれだけ長い歌詞をよく覚えていたものです。もっとも、筆者がここで採り上げたのは、インターネット上で見つけた歌詞のうちで最も長いものです。多くの場合、12番あたりないし18番あたりまでに縮めて歌うようです。
     この歌の内容は、城主夫人が夫の死の知らせを受け取る悲劇なのですが、じつはパロディで滑稽さを狙ったものであるということを調査して知りました。意外でした。MIDIはしんみりとした感じを出してみたのですが、もしかするともっと明るく滑稽なアレンジのほうがふさわしかったかもしれません。



    参照URL
    http://thierry-klein.nerim.net/malbroug.htm
    http://www.lirecreer.org/biblio/comptines/malbrough/index.html
    http://bmarcore.club.fr/Tine/E126.htm
    http://www.momes.net/comptines/personnages/malbrough-sen-va-t-en-guerre.html
    http://www.paroles.net/chansons/17925.htm
    http://fr.lyrics-copy.com/chansons-enfantines/malbrough-sen-va-t-en-guerre.htm
    http://musicanet.org/robokopp/french/malbroug.htm
    http://fr.wikipedia.org/wiki/Marlbrough_s'en_va-t-en_guerre
    http://fr.wikipedia.org/wiki/Bataille_de_Malplaquet
    http://dispourquoipapa.free.fr/comptine/ct0013.htm
    http://en.wikipedia.org/wiki/John_Churchill%2C_1st_Duke_of_Marlborough

    MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
    ページ初版作成:2007/12/03
    ページ最終更新:2017/04/17

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