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IL ÉTAIT UNE BERGÈRE
羊飼いの娘がいた

羊飼いの娘が子ネコにチーズを触られた。そしてどうなった?

作詞:不詳 / 作曲:不詳  / 16〜18世紀成立?

邦題
『小さな羊飼いの娘』
『羊飼いの娘』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜10番  バリアントバージョン
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
イ・レテ・テュヌ ベァジェレ
Il était une bergère,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

イ・レテ・テュヌ ベァジェレ
Il était une bergère,

キ ガァデ セ ムゥト
Qui gardait ses moutons,

 ロ
Ron, Ron,

キ ガァデ セ ムゥト
Qui gardait ses moutons.

1. 
羊飼いの娘がいた
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
羊飼いの娘がいて
ヒツジの見張り番をしていた
ロン、ロン、
ヒツジの見張り番をしていた

ronpatapon
いずれも、特に意味のない、口調を良くするための単語のようです。
なお、ronは、「ronron」のかたちで、ネコがのどを鳴らす擬音の「ゴロゴロ」を表します。


2.
エル フィ・タ フロマージゥ
Elle fit un fromage,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

エル フィ・タ フロマージゥ
Elle fit un fromage,

ドュ レ ドゥ セ ムゥト
Du lait de ses moutons,

 ロ
Ron, Ron,

ドュ レ ドゥ セ ムゥト
Du lait de ses moutons.

2.
彼女はチーズを作った
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
彼女はチーズを作った
彼女のヒツジの乳で
ロン、ロン、
彼女のヒツジの乳で

3.
ル シャ キ ラ ルガァデ
Le chat qui la regarde,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

ル シャ キ ラ ルガァデ
Le chat qui la regarde,

 プチ エール フリポ
D'un petit air fripon,

 ロ
Ron, Ron,

 プチ エール フリポ
D'un petit air fripon.

3.
それを見ていたネコ
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
それを見ていたネコ
いたずらっ気を起こしそうな様子で
ロン、ロン、
いたずらっ気を起こしそうな様子で

fripon いたずらっ子、腕白。


4.
スィ トュ イ メ ラ パテ
Si tu y mets la patte,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

スィ トュ イ メ ラ パテ
Si tu y mets la patte,

トュ オラ ドュ バト
Tu auras du bâton,

 ロ
Ron, Ron,

トュ オラ ドュ バト
Tu auras du bâton.

4.
あんたがこれに足を掛けたりしたら
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
あんたがこれに足を掛けたりしたら
杖を食らわすからね
ロン、ロン、
杖を食らわすからね

5.
イル ニ ミ パ ラ パテ
Il n'y mit pas la patte,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

イル ニ ミ パ ラ パテ
Il n'y mit pas la patte,

イ・リ ミ ル モ
Il y mit le menton,

 ロ
Ron, Ron,

イ・リ ミ ル モ
Il y mit le menton.

5.
ネコは足を掛けなかった
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
ネコは足を掛けずに
顎を乗せた
ロン、ロン、
顎を乗せた

6.
ラ ベァジェル オ コレーレ
La bergère en colère,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

ラ ベァジェル オ コレーレ
La bergère en colère,

ア トュエ ソ シャト
A tué son chaton,

 ロ
Ron, Ron,

ア トュエ ソ シャト
A tué son chaton.

6. 
羊飼いの娘は怒って
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
羊飼いの娘は怒って
彼女の子ネコを殺した
ロン、ロン、
彼女の子ネコを殺した

tué【動詞・過去分詞】<tuer 殺す。


7.
エル フ・タ コフェセ
Elle fut à confesse,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

エル フ・タ コフェセ
Elle fut à confesse,

プゥル ドゥモデ パルド
Pour demander pardon,

 ロ
Ron, Ron,

プゥル ドゥモデ パルド
Pour demander pardon.

7.
彼女は懺悔をしに行った
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
彼女は懺悔をしに行った
許しを乞いに
ロン、ロン、
許しを乞いに

confesse 告解、懺悔。


8.
 ペェル、ジュ マクューゼ
- Mon Père, je m'accuse,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

 ペェル、ジュ マクューゼ
Mon Père, je m'accuse,

ダヴヮ トュエ モ シャト
D'avoir tué mon chaton,

 ロ
Ron, Ron,

ダヴヮ トュエ モ シャト
D'avoir tué mon chaton.

8.
神父様、罪を告白いたします
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
神父様、罪を告白いたします
私の子ネコを殺してしまったことについて
ロン、ロン、
私の子ネコを殺してしまったことについて

Père 「父親」の意味もありますが、ここでは「神父、司祭」の意味です。
accuse【動詞・一人称単数現在形】
〔m'accuseのかたちで〕罪を告白する。


9.
マ フィル、プゥル ペニト
- Ma fill', pour pénitence,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

マ フィル、プゥル ペニト
Ma fill', pour pénitence,

ヌゥ ヌゥ オブラスロ
Nous nous embrasserons,

 ロ
Ron, Ron,

ヌゥ ヌゥ オブラスロ
Nous nous embrasserons.

9.
娘さん、罪の償いに
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
娘さん、罪の償いに
キスをしあいましょう
ロン、ロン、
キスをしあいましょう

pénitence 悔悛、贖罪。
embrasserons
【動詞・一人称複数現在形】
キスをしあう、抱擁しあう。


10.
ラ ペニトス エ ドゥース
- La pénitence est douce,

エ ロ、エ ロ、プチ パタポ
Et ron, et ron, petit patapon.

ラ ペニトス エ ドゥース
La pénitence est douce,

ヌゥ ルコモセロ
Nous recommencerons,

 ロ
Ron, Ron,

ヌゥ ルコモセロ
Nous recommencerons.

10.
罪の償いは甘いものなのね
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
罪の償いは甘いものなのね
もう一度いたしましょうよ
ロン、ロン、
もう一度いたしましょうよ

recommencerons
【動詞・一人称複数現在形】
再開する、やり直す。

このページのてっぺんへ  バリアントバージョン



 ガイド   フランス語圏では大変よく知られたわらべ歌ですが、この歌についての情報はネット上ではあまり得られなかったことをはじめに断っておきます。
 この歌の作詞者・作曲者ははっきりしていません。この歌の原型とみなせる歌が、1543年に初めて出版された歌集の中に見られますが、現在見られるような歌詞になったのは18世紀中盤のルイ15世の時代だといわれています。また、子供の歌として歌われるようになったのはフランス革命以降であるようです。更にバリアントにあるような、娘がネコをぶった段階で終了するバージョンは、19世紀になってから作られたとされています。
 この歌は、性的な内容を含意しているとされます。はっきりと見て取れる部分(神父が娘と体を重ねようとする9・10番)以外に、歌詞の4・5番に見られる「ネコがチーズに足を掛ける」の表現は、女性が処女を失うことの隠喩であるとみなされています。
 一説によると、この歌の「羊飼いの娘」とは、羊を飼うなどの農村の暮らしを貴族社会に流行させたマリー・アントワネット(Marie-Antoinette、1755〜1793)王妃を揶揄しているものとも言われています。

 この歌の各番の1行目と3行目の行末にはいずれも「e」の文字があります。一般にフランス語では、語尾の「e」は発音しないのですが、この歌では発音して歌うようになっています。カナ表記でも「ウ」または「エ」音をつけて発音するように書き表しました。

ひとりごと
 私はバリアントバージョンのほう、すなわち子ネコがぶたれて終了、のほうは以前から知っていたのですが、このサイトを作るに当たって歌詞を調べていたところ、今回メイン歌詞として挙げたほうの歌詞を知り、瞠目させられてしまいました。
 そうか、この歌は、もともとネコが殺されてしまう歌だったのか…ネコ好きの人(私もその一人ですが)にはけっこうきつい歌です。チーズぐらいやったっていいだろうに、と思ってしまいます。
 でもこの羊飼いの娘からすると、子ネコの図々しい行儀の悪さが我慢ならなかったのでしょうね。

 なお、この歌についてもう少し詳しく知りたいと思われるかたは、三木原浩史氏の『シャンソンのエチュード』(2005年、彩流社)を読まれることをお勧めします。
 また、広島大学の吉田正明先生の論文(2005年。URLはhttp://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/metadb/up/kiyo/AN00000085/ELLF_24_572.pdf。PDFファイルです)には、『Il Était une Bergère』の歌詞内容の背景について、たいへん面白く詳しい内容が述べられています。このページを作るうえでも参照いたしました。






バリアント

 メイン歌詞の6番の歌詞が変えられて、さらに7番(娘が懺悔に行くくだり)とそれ以降が無いバリアントがあります。このバリアントは19世紀に作られたとされ、現在では、上のメイン歌詞よりも、こちらのほうが広く歌われているようです。
 おそらく、「ネコを殺してしまうのはかわいそう」という発想か「神父と娘が肉体関係に走る内容が幼少年には好ましくないから」という考えに基づいて、後半を切り取られたのだと思われます。ネコを殺したわけではないので、懺悔にいく必要も無い、ということでしょうか。

◆原歌詞:1〜6番 ◆和訳と語句

1.
イ・レ・テュヌ ベァジェレ
Il était une bergère,

エ ロ エ ロ、プチ パタポ
Et ron et ron, petit patapon,

イ・レ・テュヌ ベァジェレ
Il était une bergère

キ ガァデ セ ムゥト
Qui gardait ses mouton,

 ロ、キ ガァデ セ ムゥトン
Ron ron, qui gardait ses moutons.

1. 
羊飼いの娘がいた
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
羊飼いの娘がいて
ヒツジの見張り番をしていた
ロン、ロン、ヒツジの見張り番をしていた

2.
エル フィ・タ フロマージゥ
Elle fit un fromage,

エ ロ エ ロ、プチ パタポ
Et ron et ron, petit patapon

エル フィ・タ フロマージゥ
Elle fit un fromage

ドュ レ ドゥ セ ムゥト
Du lait de ses moutons,

 ロ、ドュ レ ドゥ セ ムゥト
Ron ron, du lait de ses moutons

2.
彼女はチーズを作った
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
彼女はチーズを作った
彼女のヒツジの乳で
ロン、ロン、彼女のヒツジの乳で

3.
ル シャ キ ラ ルガァデ
Le chat qui la regarde,

エ ロ エ ロ、プチ パタポ
Et ron et ron, petit patapon,

ル シャ キ ラ ルガァデ
Le chat qui la regarde

 プチ エール フリポ
D'un petit air fripon,

 ロ、ダ プチ エール フリポ
Ron ron, d'un petit air fripon.

3.
それを見ていたネコ
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
それを見ていたネコ
いたずらっ気を起こしそうな様子で
ロン、ロン、いたずらっ気を起こしそうな様子で

4.
スィ トュ イ メ ラ パテ
Si tu y mets la patte,

エ ロ エ ロ、プチ パタポ
Et ron et ron, petit patapon,

スィ トュ イ メ ラ パテ
Si tu y mets la patte

トュ オラ ドュ バト
Tu auras du bâton,

 ロ、トュ オラ ドュ バト
Ron ron, tu auras du bâton.

4.
あんたがこれに足を掛けたりしたら
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
あんたがこれに足を掛けたりしたら
杖を食らわすからね
ロン、ロン、杖を食らわすからね

5.
イル ニ ミ パ ラ パテ
Il n'y mit pas la patte,

エ ロ エ ロ、プチ パタポ
Et ron et ron, petit patapon,

イル ニ ミ パ ラ パテ
Il n'y mit pas la patte

イ・リ ミ ル モ
Il y mit le menton,

 ロ、イ・リ ミ ル モ
Ron ron, il y mit le menton.

5.
ネコは足を掛けなかった
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
ネコは足を掛けずに
顎を乗せた
ロン、ロン、顎を乗せた

6.
ラ ベァジェル オ コレーレ
La bergère en colère,

エ ロ エ ロ、プチ パタポ
Et ron et ron, petit patapon,

ラ ベァジェル オ コレーレ
La bergère en colère

バティ ル プチ シャト
Battit le p'tit chaton,

 ロ、バティ ル プチ シャト
Ron ron, battit le p'tit chaton.

6. 
羊飼いの娘は怒って
はい、ロン、はい、ロン、プチ・パタポン
羊飼いの娘は怒って
子ネコをぶった
ロン、ロン、子ネコをぶった

battit【動詞・三人称単数過去形】<battre
(繰り返し何回も)叩く、打つ。




参照URL
http://ourworld.compuserve.com/homepages/thierry_klein/bergere.htm(メイン歌詞)
http://www.paroles.net/chansons/15879.htm(バリアント歌詞)
http://users.skynet.be/sky42184/Chanson_Iletaitbergere.htm
http://enfants.x2000.org/chansons/il_etait_une_bergere.htm
http://www.premiumorange.com/archives-autran/archives/chansons/chansons_enfantines.html#ANCRE25
http://fr.lyrics-copy.com/chansons-enfantines/il-etait-une-bergere.htm
http://bmarcore.club.fr/Tine/E104.htm
http://www.momes.net/comptines/animaux-de-la-ferme/il-etait-une-bergere.html
http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00019773

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ最終更新:2007/09/08

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