トップページ  フランス語

LE BON ROI DAGOBERT
素敵な王様ダゴベール

王様をいつも見守る大聖と、ひとこと多い王様の問答話です。

作詞:不詳 / 作曲:不詳  / 1780年代頃成立

邦題
『良き王ダゴベール』
『お人よしの王様』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜22番
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

ア ミ サ クュロッ・タ ロヴェーァ
A mis sa culotte à l'envers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル マジェステ
Votre Majesté

エ マル クュロテ
Est mal culottée.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

ジュ ヴェ ラ ルメトル ア ロドルヮ
Je vais la remettre à l'endroit.

1.
素敵な王様ダゴベール
ご自分の半ズボンを裏返しに穿いていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は半ズボンを
間違って穿いておりますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
表に返して穿きなおしましょ

Dagobert【人物】ダゴベール、ダゴベルト。
 7世紀のメロヴィング朝フランク国王ダゴベルト1世(603?〜639)のこと。サン・ドニ修道院を建立しました。詳しくはガイドの項をご覧ください。
à l'envers【熟語】裏返しにして。
Eloi【人物】エロワ、エリギウス、エリジオ。
 7世紀の金細工師でノワイヨンの司教(588頃〜659ないし660)。ダゴベルト1世の相談役として仕えたほか、造幣局長も務めました。金細工師の守護聖人でもあります。詳しくはガイドの項をご覧ください。
culottée【形容詞・女性形】半ズボンを穿いた。
à l'endroit【熟語】表にして、正しい向きにして。


2.
コム イル ラ ルメテ
Comme il la remettait

 ペゥ イル ス デクゥヴレ
Un peu il se découvrait ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴゥ・ザヴェ ラ ポォ
Vous avez la peau

プルュ ヌワァ カ コルボォ
Plus noir' qu'un corbeau.

バ バ、ルュィ ディ ル ルヮ
Bah, bah, lui dit le roi,

ラ レヌ ラ ビャ プルュ ヌヮル ク ムヮ
La rein' l'a bien plus noire que moi.

2.
穿きなおしたときに
ちょっと脱いだ
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は、カラスよりも
黒い肌をしてらっしゃいますなあ』
それがなんじゃ、と王様は彼にのたまった
女王のはわしのよりももっとずっと黒いぞ

découvrait【動詞・三人称単数半過去形】
 <découvrir 〔se découvrirの形で〕脱ぐ。
bah【間投詞】なんだい、ふん。
無関心・諦め・疑いを含んだ驚きなどを表します。


3.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

フュ メトル ソ ベ・ラビ ヴェーァ
Fut mettre son bel habit vert ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォト・ラビ パレ
Votre habit paré

オ クゥッ エ ペーァセ
Au coude est percé.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

ル テャ エ ボ プレトゥ・レ・ムヮ
Le tien est bon prête-le-moi.

3.
素敵な王様ダゴベール
ご自分の立派な緑の衣装にお召し替えだ
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
おしゃれな衣装が
ひじのところが破けてますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
あんたのを快く貸してくれるんじゃろな

paré【形容詞】飾られた。
tien【代名詞】君のもの。


4.
ドュ ボ ルヮ ダゴベーァ
Du bon roi Dagobert

レ バ エティェ ロジェ デ ヴェーァ
Les bas étaient rongés des vers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォ デュ バ カデ
Vos deux bas cadets

フォ ヴヮル ヴォ モレ
Font voir vos mollets.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

レ テャ ソ ネゥフ、ドヌ・レ・ムヮ
Les tiens sont neufs, donne-les-moi.

4.
素敵な王様ダゴベールの
長靴下が虫に食われていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下の長靴下が二本とも
ふくらはぎを覗かせておりますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
あんたのは下ろしたてじゃから、わしにくれなされ

bas(太腿までの長さの)長靴下、ストッキング。
rongés【動詞・過去分詞複数形】
 <ronger (虫が)食う、(ネズミなどが)かじる。
mollets【複数形】ふくらはぎ。


5.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

フェゼ ペゥ サ バァ・ボ・ニヴェーァ
Faisait peu sa barbe en hiver ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

イル フォ ドュ サヴォ
Il faut du savon

プゥァ ヴォトル モ
Pour votre menton.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

ア テュ デュ スゥ? プレトゥ・レ・ムヮ
As-tu deux sous ? Prête-les-moi.

5.
素敵な王様ダゴベール
冬場に髭をあまりあたらせなかった
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
石鹸を少々
あごにつける必要がございますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
二スー持っておるかね?わしに貸しなされ

sous【複数形】スー。昔のフランスの貨幣単位。


6.
ドュ ボ ルヮ ダゴベーァ
Du bon roi Dagobert

ラ ペルュク エテ ドゥ トラヴェーァ
La perruque était de travers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ク レ ペルュキエ
Que le perruquier

ヴゥ ア マル クヮフェ!
Vous a mal coiffé !

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

ジュ プロ タ ティニャス プゥル ムヮ
Je prends ta tignasse pour moi.

6. 
素敵な王様ダゴベールの
かつらがずれていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
かつら屋がなんとも
ひどいかぶせ方を致しましたな!』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
あんたの髪の毛でもかぶってましょか

perruque かつら。
de travers【熟語】曲がって、ゆがんで。 tignasse (もじゃもじゃした)髪の毛。


7.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

ポーァテェ モトォ クゥル・ト・ニヴェーァ
Portait manteau court en hiver ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル マジェステ
Votre Majesté

エ ビャ エクゥァテ
Est bien écourtée.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

フェ・ル ラロジェ ドゥ デゥ ドヮ
Fais-le rallonger de deux doigts.

7.
素敵な王様ダゴベール
冬場にコートを短くして着ていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は
ずいぶんと服の丈を詰めておいでですな』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
指の二本ぶんだけ丈伸ばしさせましょ

écourtée【動詞・過去分詞女性形】
 <écourter (物の長さを)短くする、丈をつめる。
rallonger【動詞・原形】(服の丈などを)長くする。


8.
デュ ボ ルヮ ダゴベーァ
Du bon roi Dagobert

デュ シャポォ クヮフェ コム ア セール
Du chapeau coiffait comme un cerf ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ラ コーァ・ノ ミレュ
La corne au milieu

ヴゥ スィエレ ビャ メュ
Vous siérait bien mieux.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

ジャヴェ プリ モデル スュル トヮ
J'avais pris modèle sur toi.

8.
素敵な王様ダゴベール
雄ジカのような帽子をかぶっていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
真ん中の角が
たいへん良く似合っておいでですな』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
あんたを見習ってこしらえたのじゃから

siérait【動詞・条件法三人称単数現在形】
 <seoir 〜に似合う。
modèle 見本、手本。


9.
ル ルヮ フェゼ デ ヴェーァ
Le roi faisait des vers

メ イル レ フェゼ ドゥ トラヴェーァ
Mais il les faisait de travers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

レセ・ゾ ワゾ
Laissez aux oisons

フェル デ ショ
Faire des chansons.

エ ビャ、ルュィ ディ ル ルヮ
Eh bien, lui dit le roi,

セ トヮ キ レ フェラ プゥル ムヮ
C'est toi qui les feras pour moi.

9.
王様が詩を作ったが
とんちんかんな出来だった
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
歌を作るのなぞ
ガチョウの雛にでも任せておきなされ』
うむ、そうじゃな、と王様は彼にのたまった
わしに披露するのはあんたの役割じゃぞ

oisons【鳥類・複数形】ガチョウの雛。


10.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

シャセ ド ラ プレヌ ドヴェーァ
Chassait dans la plaine d'Anvers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル マジェステ
Votre Majesté

エ ビャ エスゥフレ
Est bien essouflée.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

 ラパ クゥレ アプレ ムヮ
Un lapin courait après moi.

10.
素敵な王様ダゴベール
アンヴェルスの野に狩りに出た
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は
ずいぶんと息が切れておりますな』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
ウサギがわしを追いかけたもんでな

Anvers【地名】アンヴェルス、アントワープ、アントウェルペン。
ベルギー北部の都市。
essouflée【形容詞・女性形】息切れのした。


11.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

アレ・タ ラ シャ・ソ ピヴェーァ
Allait à la chasse au pivert ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ラ シャ・ソ クゥクゥ
La chasse aux coucous

ヴォドレ メュー プァ ヴゥ
Vaudrait mieux pour vous.

エ ビャ、ルュィ ディ ル ルヮ
Eh bien, lui dit le roi,

ジュ ヴェ ティレ、プロ ガーァ・ダ トヮ
Je vais tirer, prends garde à toi.

11. 
素敵な王様ダゴベール
アオゲラを狩りに出かけた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
カッコウ狩りのほうが
やりがいがござりませんかな』
うむ、そうじゃな、と王様は彼にのたまった
射てまいるぞ、あんたに気をつけてな

pivert【鳥類】ヨーロッパアオゲラ。
 キツツキ科の鳥。体長30cm程度で、ヨーロッパに広く分布しています。
prends garde à【熟語】〜に気をつける、用心する。


12.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

アヴェ・タ グロ サブル ドゥ フェーァ
Avait un grand sabre de fer ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル マジェステ
Votre Majesté

プゥレ ス ブレセ
Pourrait se blesser.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

 ム ド・ナ サブル ドゥ ブヮ
Qu'on me donne un sabre de bois.

12.
素敵な王様ダゴベール
鉄のサーベルを持っていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は
怪我をなさるかもしれませんぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
誰か木のサーベルをくれないものかのう

blesser【動詞・原形】
〔se blesserの形で〕怪我を負う。


13.
レ シャ ドゥ ダゴベーァ
Les chiens de Dagobert

エテェ ドゥ ガル トゥー クゥヴェーァ
Étaient de gale tout couverts ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

プル レ ヌトヮィエ
Pour les nettoyer

フォドレ レ ヌヮィエ
Faudrait les noyer.

エ ビャ、ルュィ ディ ル ルヮ
Eh bien, lui dit le roi,

ヴァ・ト レ ヌヮィエ アヴェク トヮ
Va-t'en les noyer avec toi.

13.
ダゴベールの犬たちは
すっかり疥癬だらけだった
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
きれいにしてやるのに
水につけてやる必要がありますな』
うむ、そうじゃな、と王様は彼にのたまった
水に浸けてしまいましょ、あんたも一緒にな

gale 疥癬(かいせん)、湿疹。
noyer【動詞・原形】水に浸ける、溺れさせる。


14.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

ス バテ・タ トーァ、ア トラヴェーァ
Se battait à tort, à travers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル マジェステ
Votre Majesté

ス フェラ トュエ
Se fera tuer.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

メ・トヮ ビャ ヴィッ ドゥヴォ ムヮ
Mets-toi bien vite devant moi.

14.
素敵な王様ダゴベール
見境もなく争いごとをした
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は
殺されてしまいますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
大急ぎでわしの前に立ってくだされ

à tort, à travers【熟語】
 =à tort et à travers 考えなしに、めちゃくちゃに。


15.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

ヴゥレ コケリーァ ルュニヴェーァ
Voulait conquérir l'univers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴヮヤジェ スィ ルヮ
Voyager si loin

ドネ ドュ タトヮ
Donne du tintouin.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

イル ヴォドレ メュー レステ シェ スヮ
Il vaudrait mieux rester chez soi.

15.
素敵な王様ダゴベール
世界全土を征服しようと思った
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
そんなに遠く旅をすれば
気苦労の種になりますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
自分の家に残ってたほうがよさそうじゃな

tintouin 心配、気苦労。


16.
ル ルヮ フェセ ラ ゲェレ
Le roi faisait la guerre

メ イル ラ フェセ・ト・ニヴェーァ
Mais il la faisait en hiver ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトレ マジェステ
Votre Majesté

ス フェラ ゲレ
Se fera geler.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

ジュ モ ヴェ ルトゥァネ シェ ムヮ
Je m'en vais retourner chez moi.

16. 
王様は戦争を始めたが
始めたのが冬だった
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は
凍ってしまいますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
我が家へ帰ってしまいましょ

17.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

ヴゥレ ソバァケ プァ ラ メーァ
Voulait s'embarquer pour la mer ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル マジェステ
Votre Majesté

ス フェラ ヌヮィエ
Se fera noyer.

セ ヴレ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est vrai, lui dit le roi,

オン プゥラ クリィエ ル ルヮ ブヮ!
On pourra crier : "Le Roi boit ! ".

17.
素敵な王様ダゴベール
海へ行って船に乗りたいと思った
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は
溺れてしまいますぞ』
まことにそうじゃ、と王様は彼にのたまった
皆が叫ぶじゃろな、『王様が水を飲んじゃった!』と

embarquer【動詞・原形】
〔s'embarquerの形で〕(船など)に乗り込む。


18.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

アヴェ・タ ヴュー フォトェュ ドゥ フェーァ
Avait un vieux fauteuil de fer ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル ヴュー フォトェュ
Votre vieux fauteuil

マ ドネ ド レュ
M'a donné dans l'œil.

エ ビャ、ルュィ ディ ル ルヮ
Eh bien, lui dit le roi,

フェル ヴィ・トポーァテ シェ トヮ
Fais-le vite emporter chez toi.

18. 
素敵な王様ダゴベール
古い鉄の肘掛け椅子を持っていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下の古い肘掛け椅子が 私の目に止まりましたぞ』
うむ、そうか、と王様は彼にのたまった
すぐにあんたの家に運ばせなされ

fauteuil 肘掛け椅子。


19.
ラ レヌ ダゴベーァ
La reine Dagobert

ショヮィエ・タ ガロ アセ ヴェーァ
Choyait un galant assez vert ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴゥ・ゼッ コーァヌュ
Vous êtes cornu,

ジョ スヮ コヴァクュ
J'en suis convaincu.

セ ボ、ルュィ ディ ル ルヮ
C'est bon, lui dit le roi,

モン ペーァ レテ・タヴォ ムヮ
Mon père l'était avant moi.

19.
ダゴベール女王は
かなりの女たらしの男をかわいがっていた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は奥方を寝取られていると
私は信じて疑いませぬぞ』
いいんじゃよ、と王様は彼にのたまった
わが父親もわしより先にされてたからな

galant 好き者、色事師。
 vert galantで「女たらしの男」の意味になります。
choyait【動詞・三人称単数半過去形】
 <choyer かわいがる。
cornu【形容詞】(夫・妻を)寝取られた、間男に遭った。
convaincu【形容詞】確信を持った。


20.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

ジェ・ト グルゥト ドュ デセーァ
Mangeait en glouton du dessert ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴゥ・ゼテ グゥァモ
Vous êtes gourmand,

ヌ モジェ パ ト
Ne mangez pas tant.

バ バ、ルュィ ディ ル ルヮ
Bah, bah, lui dit le roi,

ジュ ヌ ル スヮ パ ト ク トヮ
Je ne le suis pas tant que toi.

20.
素敵な王様ダゴベール
デザートをたらふく召し上がった
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
食いしん坊でございますな
そんなに召し上がってはなりませぬぞ』
それがなんじゃ、と王様は彼にのたまった
あんたほどじゃあありませんがな

21.
ル ボ ルヮ ダゴベーァ
Le bon roi Dagobert

アィヤ ブュ、アレ ドゥ トラヴェーァ
Ayant bu, allait de travers ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

ヴォトル マジェステ
Votre Majesté

ヴァ トゥー ドゥ コテ
Va tout de côté.

エ ビャ、ルュィ ディ ル ルヮ
Eh bien, lui dit le roi,

 トュ エ グリ、マルシェ・トュ ドルヮ?
Quand tu es gris, marches-tu droit ?

21.
素敵な王様ダゴベール
酒を飲んで、ふらふらになって歩いてた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
陛下は
すっかり千鳥足で歩いておいでですぞ』
おや、そうか、と王様は彼にのたまった
あんたが酔ってたら、まっすぐに歩けるのかね?

bu【動詞・過去分詞】<boire (酒を)飲む。
gris【形容詞】ほろ酔い加減の。


22.
 ダゴベーァ ムゥルュ
Quand Dagobert mourut,

ル ディアブル オスィト アクゥルュ
Le diable aussitôt accourut ;

ル グロ サ・テルヮ
Le grand saint Eloi

ルュィ ディ オ モ ルヮ!
Lui dit : ô mon roi !

サト ヴァ パセ
Satan va passer,

フォ ヴゥ コフェセ
Faut vous confesser.

エラス、ルュィ ディ ル ルヮ
Hélas, lui dit le roi,

ヌ プゥレ・トュ ムゥリル プゥル ムヮ
Ne pourrais-tu mourir pour moi.

22.
ダゴベールが亡くなったとき
悪魔がすぐさま駆けつけた
大聖エロワが
彼に言うには、『おや、王様!
魔王が来ますぞ
懺悔なさるべきですぞ』
残念じゃ、と王様は彼にのたまった
あんたはわしの代わりに死んではくれんのじゃな

aussitôt【副詞】直ちに、すぐさま。
accourut【動詞・三人称単数単純過去形】
 <accourir 駆けつける。
hélas【間投詞】残念ながら。嘆き・悲しみ・後悔を表します。

このページのてっぺんへ



 ガイド   この歌は、18世紀のフランス革命の頃に生まれたと推定されています。曲は、ゴール地方の古い踊りの曲『Fanfare du Cerf(雄ジカのファンファーレ)』を用いています。
 この歌は、当時のフランス国王ルイ十六世(Louis XVIeme、1754〜1793)を揶揄するために作られたと考えられています。後にはナポレオン一世(Napoleon Ier、1769〜1821)を揶揄する歌としても歌われました。揶揄・中傷の対象となる王や皇帝を直接に名指しすると反逆罪と見做されるため、古代のよく知られた王の名を借りてきて歌を作ったようです。

 歌詞に登場するダゴベール王と大聖エロワはいずれも7世紀に実在した人物です。
 ダゴベール一世(ダゴベルト一世とも。Dagobert Ier、603?〜639)は、メロヴィング朝時代(486〜751)のアウストラシア(Austrasia、フランク王国の一部。現在のフランス北東部〜ドイツ北西部)の王で、父親のクロタール二世の死後はフランク王国全体を統治しました。パリをフランク王国(のちのフランス)の首都に定めた最初の王で、メロヴィング朝でもっとも力のあった王とされています。サン・ドニ修道院の設立にも携わっています。結婚と離婚を頻繁に繰り返し、全部で3人の子供をもうけているようです。一説には、近眼だったために、いろいろなちょっとした失敗(この歌に出てくる、ズボンの前後を間違えるなど)をすることがあったともされています。
 エロワ(Eloi、588?〜659又は660。日本では一般に、ラテン語読みにしたがい、エリギウス〔Eligius〕と呼ばれます)は、アキテーヌ地方出身の金細工師でしたが、フランク王国の金庫係として勤め、クロタール二世によって造幣局長に抜擢されました。クロタール二世王の死後は、その息子のダゴベール一世によって相談役に選ばれ、彼が王位に就いてから死ぬまでのあいだ相談役として仕えていました。ダゴベール一世の死後は、ピカルディー地方の町ノワイヨン(Noyon)の司教になり、北方地域の諸民族をキリスト教に改宗することに生涯を捧げたそうです。金細工師やその他の金属職人の守護聖人として知られています。

ひとりごと
 エロワはダゴベールの相談役として実際に仕えていましたが、この歌に歌われているようなやり取りがふたりの間に実際にあったかどうかは、当然といえば当然なのですが、定かではありません。単に滑稽な内容にするために創作された会話かもしれませんし、ルイ十六世の行為をそのままダゴベールがおこなったように置き換えたという見方もできます。
 ところで、フランス革命の頃にこの歌ができたということは、当時のフランスではダゴベール王とエロワの名前がそれなりに知られていたということになります。日本の歴史に置き換えると、飛鳥時代の人物の名前が、江戸時代中期まで知られていたことになるわけです。つまりダゴベールやエロワはその名を歴史にとどめておくだけの活躍をしたということでしょう。日本で聖徳太子や蘇我馬子らの名前が江戸時代の川柳などに登場するのと同じようなものでしょうか。



参照URL
http://thierry-klein.nerim.net/lebonroi.htm(メイン歌詞)
http://www.paroles.net/chanson/11693.1
http://membres.lycos.fr/sucredorges/Chansons/Le_bon_roi_dagobert/le_bon_roi_dagobert.html
http://enfants.x2000.org/chansons/le_bon_roi_dagobert.htm
http://www.lirecreer.org/biblio/comptines/dagobert/index.html
http://users.skynet.be/sky42184/Chanson_LebonroiDagobert.htm
http://fr.wikipedia.org/wiki/Le_bon_roi_Dagobert
http://pagesperso-orange.fr/olivier.druard/LaClefDesChants/Carnets/Chants/LeBonRoiDagobert.htm
http://www.sip.ie/sip019I/dago.html
http://www.histoire-en-ligne.com/article.php3?id_article=293
http://en.wikipedia.org/wiki/Dagobert_I
http://en.wikipedia.org/wiki/Saint_Eligius
http://fr.wikipedia.org/wiki/Dagobert_Ier
http://fr.wikipedia.org/wiki/Saint_%C3%89loi

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ最終更新:2008/03/26

トップページ  このページのてっぺんへ  フランス語