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LA BAMBA
ラ・バンバ

バンバを踊るにはおしとやかさが必要さ…などと皮肉らずにはいられない悲劇。

作詞:不詳  /  作曲:不詳  / 1683年に成立?

邦題
『ラ・バンバ』など

MIDIと楽譜は制作中です。

◆原歌詞:1~5番
フリガナは中南米のスペイン語発音に基づいています。
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
パラ バィラル ラ バンバ
Para bailar la bamba

パラ バィラル ラ バンバ セ ネセスィタ
Para bailar la bamba se necesita

ウナ ポカ デ グラスャ
Una poca de gracia

ウナ ポカ デ グラスャ イ・ォトラ コスィタ
Una poca de gracia y otra cosita

アィ・アリバ イ・ァリバ
Ay arriba y arriba

イ・ァリバ イ・ァリバ、アリバ イレ
Y arriba y arriba, arriba iré


ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero

ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero

ポル ティ セレ、ポル ティ セレ、ポル ティ セレ
Por tí seré, por tí seré, por tí seré.

繰り返し
 バンバ バンバ バンバ
 Bamba, bamba, bamba!

 バンバ バンバ バンバ
 Bamba, bamba, bamba!

 バンバ バンバ バンバ
 Bamba, bamba, bamba!

 バンバ バンバ バンバ
 Bamba, bamba, bamba!

1.
バンバを踊るには
バンバを踊るために必要なのは
おしとやかさが少々
おしとやかさが少々と、ほかにもちょっとした事が〔必要だ〕
さあ上げて、また上げて
また上げて、また上げて、俺は上げていくぞ

俺は水兵じゃないよ
俺は水兵じゃないけれど
君のためならなってみせる、
君のためならなってみせる、
君のためならなってみせるさ
繰り返し
 バンバ バンバ バンバ!
 バンバ バンバ バンバ!
 バンバ バンバ バンバ!
 バンバ バンバ バンバ!
bamba【舞踊】バンバ。
メキシコ・ベラクルス地方の民族舞踊。この語に関してはガイドの項もご覧ください。
se necesita【動詞句・三人称単数現在形】
<necesitarse 必要とする、必要である。
arriba【副詞】上へ、上げて。
iré【動詞・一人称単数未来形】
<ir 行く。
seré【動詞・一人称単数未来形】
<ser ~である。

2.
パラ スゥビ・ラル スィェロ
Para subir al cielo

パラ スゥビ・ラル スィェロ セ ネセスィタ
Para subir al cielo se necesita

ウナ・ェスカレラ グランデ
Una escalera grande

ウナ・ェスカレラ グランデ イ・ォトラ チキータ
Una escalera grande y otra chiquita

アィ・アリバ イ・ァリバ
Ay arriba y arriba

イ・ァリバ イ・ァリバ、アリバ イレ
Y arriba y arriba, arriba iré


ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero

ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero,

ソィ カピタン、ソィ カピタン、ソィ カピタン
Soy capitán, soy capitán, soy capitán.

 繰り返し

2.
天へ登るには
天へ登るために必要なのは
大きな梯子が一丁
大きな梯子が一丁と、ほかに小さいのもね
さあ上げて、また上げて
また上げて、また上げて、俺は上げていくぞ

俺は水兵じゃないよ
俺は水兵じゃなくて
船長さ、船長さ、船長なんだよ
繰り返し
escalera 階段、梯子。

3.
ウナ ベス ケ テ ディヘ
Una vez que te dije

ウナ ベス ケ テ ディヘ ケ・ェラス ボニタ
Una vez que te dije que eras bonita

セ テ プゥソ ラ カラ
Se te puso la cara

セ テ プゥソ ラ カラ コロラディタ
Se te puso la cara coloradita

アィ・アリバ イ・ァリバ
Ay arriba y arriba

イ・ァリバ イ・ァリバ、アリバ イレ
Y arriba y arriba, arriba iré


ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero

ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero,

ソィ カピタン、ソィ カピタン、ソィ カピタン
Soy capitán, soy capitán, soy capitán.

 繰り返し

3.
いっぺん君に言ったっけ
いっぺん君に言ったっけ、君はきれいだねって
君の顔は
君の顔は赤くなっちゃったよ
さあ上げて、また上げて
また上げて、また上げて、俺は上げていくぞ

俺は水兵じゃないよ
俺は水兵じゃなくて
船長さ、船長さ、船長なんだよ
繰り返し
se...puso【動詞・三人称単数線過去形】
<ponerse …の状態になる。
coloradita【形容詞・女性形・指小形】
<colorado (顔が)赤らんだ。

4.
ウナ ベス ケ テ ディヘ
Una vez que te dije

ウナ ベス ケ テ ディヘ ケ・ェラス ムイ グゥアポ
Una vez que te dije que eras muy guapo

セ テ プゥソ ラ カラ
Se te puso la cara

セ テ プゥソ ラ カラ コロル デ サポ
Se te puso la cara color de sapo

アィ・アリバ イ・ァリバ
Ay arriba y arriba

イ・ァリバ イ・ァリバ、アリバ イレ
Y arriba y arriba, arriba iré


ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero

ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero,

ソィ カピタン、ソィ カピタン、ソィ カピタン
Soy capitán, soy capitán, soy capitán.

 繰り返し

4.
いっぺんあんたに言ったっけ
いっぺんあんたに言ったっけ、
 あんたはとてもハンサムだって
あんたの顔は
あんたの顔はガマガエルみたいな色になっちまった
さあ上げて、また上げて
また上げて、また上げて、俺は上げていくぞ

俺は水兵じゃないよ
俺は水兵じゃなくて
船長さ、船長さ、船長なんだよ
繰り返し
sapo【動物】ヒキガエル、ガマガエル。

5.
エン ミ カサ メ ディセン
En mi casa me dicen

エン ミ カサ メ ディセン エ・リノセンテ
En mi casa me dicen el inocente

ポルケ テンゴ ムチャチャス
Porque tengo muchachas

ポルケ テンゴ ムチャチャス デ クインセ・ァ ベィンテ
Porque tengo muchachas de quince a veínte

アィ・アリバ イ・ァリバ
Ay arriba y arriba

イ・ァリバ イ・ァリバ、アリバ イレ
Y arriba y arriba, arriba iré


ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero

ヨ ノ ソィ マリネロ
Yo no soy marinero,

ソィ カピタン、ソィ カピタン、ソィ カピタン
Soy capitán, soy capitán, soy capitán.

 繰り返し

5.
うちでは俺は言われてる
うちでは俺は言われてる、お人好しだって
なぜって娘っこらがいるからさ
なぜって、十五歳から二十歳の娘らがいるからだよ
さあ上げて、また上げて
また上げて、また上げて、俺は上げていくぞ

俺は水兵じゃないよ
俺は水兵じゃなくて
船長さ、船長さ、船長なんだよ
繰り返し
inocente お人好しの人。

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 ガイド   『La Bamba』は、もともとメキシコ南東部のメキシコ湾沿岸にあるベラクルス州を発祥とするスペイン語の民謡で、同州および周辺地発祥の民謡をひっくるめた呼び名である「ソン・ハローチョ」の代表的な楽曲として知られています。
 この歌の内容は、1683年5月18日に、当時スペインの副王領であったヌエバ・エスパーニャの外港として栄えていたベラクルス市が、オランダの海賊ローレンス・デ=グラーフ (Laurens de Graaf, 1653-1704)の率いる一団によって略奪・占拠された事件に基づいています。この襲撃に対するヌエバ・エスパーニャ政府の対応が遅く、それも含めた事件全体を風刺する歌としてこの歌が生まれたと言われています。
 歌詞にこの事件の状況がほのめかされていると言われる具体例には以下のような点が挙げられます。
  • 1番の歌詞である「バンバを踊るにはおしとやかさが必要」とは、ヌエバ・エスパーニャ政府の対応の遅れや失態などを皮肉っぽく表現したものだと言われています。「おしとやかさ」を表すスペイン語の「gracia」という単語には「失態」「どじ」という意味もあります。この考えに沿うと、この歌での「bamba」とは政府の制作や対応などを揶揄するたとえとして用いられていることになります。
  • 2番の歌詞にある「天へ登るための大きな梯子」とは、海賊に追われて教会の塔へ逃げ込んだベラクルスの市民が、更に塔の屋根へ登るために梯子が欲しいと望んだことを伝えていると言います。なぜ屋根へ登る必要があったのかというと、逃げ場もなく食べ物も飲み物も無くなった市民が、苦しみから逃れるためにそこから飛び降りて自殺するためだったとか。
  • 「Arriba」(このページでは「上げて」と訳しました)は、ダンスで手足などを「持ち上げる」意味や、気分を「高揚させる」意味にも取れますが、教会の塔の屋根へ登った人々がさらに高い所、すなわち天国へ登ろうとすること、言い換えれば自殺することを表しているのだという説もあります。
  • 「水兵」とは、海賊を追跡ないし掃討するために雇われた自警団員のことと言われます。もちろん命の保証は有りませんから、決して自ら志願してなりたいものではありません。そこで、多くの人々が「俺は誰かに雇われる水兵のような身分の者ではない、自分の身の振り方は自分で決める艦長のような生き方をするのだ」という考え方のもとに自警団に加わることを拒否したもののようです。

 『La Bamba』の初期の歌詞には以下のようなフレーズが入っていました。襲撃事件を知らせるための鐘がベラクルスや周囲の町々で鳴らされる様子を描写しているものとされますが、一説には、海賊襲撃があったあとになってはじめて非常時の対応を調えた政府の泥縄的政策を皮肉っているとも言います。

Quitilan, quitilan,
Que suenan las campanas de Malibrán
Qué vienen los piratas que no vendrán...
Quitilín, quitilín,
Que suena la campana de Medellín
Y que suena y suena a rintintín.

カラン、カラン、
マリブランの鐘が鳴る
来ないはずの海賊たちが来るよと…
カラン、カラン、
メデジンの鐘が鳴る
チリンチリンと鳴り響く

 ※マリブランはベラクルスにあった領主の館の名前。現在はベラクルス市内の一地区。
  メデジンはベラクルスから10kmほど南にあるベラクルス都市圏の都市。

 年月が経つと、この歌は、詠みこまれた史実とは関係なく、結婚式の際に男女二人で踊る音楽として用いられるようになりました。現行の歌詞の3番以降はこの過程で付け加えられたもののようです。現在では結婚式の曲としては廃れているようですが、男女二人で組んで踊るショーダンスの伴奏として演奏されることがあります。この曲で踊るときにはステップを踏みながら長いリボンを足だけで操り、蝶結びに結んでみせるというのが一つの見せどころになっています。

 録音された音源は20世紀の初めから散見され、アルバロ・エルナンディス・オルティス (Alvaro Hernández Ortiz)が1938年に発表したバージョン(タイトルは『El Jarocho』)や、ベラクルス出身の歌手でハーピストであるアンドレス・ウエスカ (Andrés Huesca, 1917-1957)が1945年に発表したバージョンが知られています。これら先駆者の演奏を発展させる形で、メキシコ系アメリカ人のロックミュージシャンのリッチー・ヴァレンス (Ritchie Valens, 1941-1959)が1958年にロック調に編曲して演奏しましたが、このバージョンが世界的に有名になりました。さらに1987年に制作されたヴァレンスの伝記映画『La Bamba』(日本語題:『ラ★バンバ』)で音楽演奏を担当したバンド、ロス・ロボス (Los Lobos)の演奏が大ヒットしたことでいちだんと広く知られるようになりました。

 タイトルにも含まれる「bamba」の語の由来にはいくつかの説があり、「揺れる、ぐらつく」を意味するスペイン語「bambolear/bambalear」から来たとも、「愚か者」を意味するスペイン語「bambarria」に由来するともいわれます。また、近世の西アフリカにあったコンゴ王国(現在のコンゴ共和国・コンゴ民主共和国あたり)に「バンバ(Bamba)」という都市があり、この都市との関連も示唆されています。いずれにせよ、この語は『La Bamba』の歌詞が生まれたときには既にメキシコで使われている語彙であったようです。


ひとりごと
 『La Bamba』の歌詞には思いがけない歴史が隠されていることが、この記事を書いた私にも驚きでした。単に陽気でかっこいいだけのロックではなかったんですね。
 以下は私の推測ですが、『La Bamba』の歌は海賊襲撃事件後に歌詞やメロディーを一から創り上げたものではなく、元となる歌が以前から現地で歌われていて、その替え歌として創り出されたものの可能性があります。音楽をなりわいとする専門家が現地にいたのならばともかく、事件が起きた直後にそれを記録する歌を民衆が自力で完全にゼロのところから創りだすのは困難な事でしょうし、創られたにしても人口に膾炙する前に消失してしまうでしょう。また既存の楽曲の替え歌が人気を博して歴史に長くとどまることは、世界的にしばしば見られます。
 そうすると、そのおおもととなる歌はどんな歌詞だったのか、そもそもそんな歌が存在していたのか、という疑問が生じるわけですが、これは歴史の波に洗われてどこかへ埋もれてしまったようで、インターネット上では情報が見つかりませんでした。

 筆者のお薦めの音源はこちらです。リッチー・ヴァレンスやロス・ロボスなどのロックバージョンのものは取り上げていません。なお、ロックバージョンではない伝統的な様式の『La Bamba』をほかにも探したいというかたは、「"la bamba" Veracruz」で検索すると効率が良いですよ。
・https://www.youtube.com/watch?v=U4HypRxLcmM(アルバロ・エルナンディス・オルティスの演奏バージョン)
・https://www.youtube.com/watch?v=-wFKucKWVW4(アンドレス・ウエスカの演奏バージョン)
・https://www.youtube.com/watch?v=Yv50SEmC97A(ショーダンスとして足でリボンを結んでいます)
・https://www.youtube.com/watch?v=cXvtL0xud7Y

◎参考URL
【歌詞のみ】
○http://www.mariachi4u.com/lyrics/Labamba.htm (底本として使用、2022年現在サイト消滅)
○http://www.conevyt.org.mx/promo_mevyt/la_palabra/cantares/veracruz.pdf
○http://sramatic.tripod.com/mu_Mexico.html#labamba
○http://www.rcaguilar.com/canciones/textos/la_bamba.htm
○https://www.celebratelanguages.com/SpanishSongsPDF/cancionlabamba.pdf
○https://www.cmtv.com.ar/discos_letras/letra.php?bnid=1565&tmid=61990&tema=LA_BAMBA
○http://www.wikimexico.com/articulo/la-bamba

【解説】(言語表記の無いものはスペイン語)
○https://es.wikipedia.org/wiki/La_bamba
○https://de.wikipedia.org/wiki/La_Bamba_(Lied) (ドイツ語)
○https://www.youtube.com/watch?v=cwxX1Nf1fyQ(YouTubeにある楽曲解説動画)
○https://90lineas.com/2022/02/26/la-bamba/
○http://www.johntoddjr.com/143%20Bamba/bamba.htm(英語。同じ内容でスペイン語版もあります)
○https://www.lordmoleculaoficial.com/index.php/2021/09/01/14161/

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ初版作成:2022/09/07

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