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THE WILD COLONIAL BOY
開拓地の少年

豪州の山賊を歌った、オーストラリア人のお気に入りナンバーです。

作詞:不詳、但しA.B.パターソンによる補作あり
作曲:不詳  / 19世紀後半成立

邦題
この歌には、邦題がまだついていないようです。

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜7番
フリガナはイギリス英語の発音に基づいています。
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
ヅェァ ウォズ ア ワィォッ コロニァォ ボィ
There was a wild Colonial Boy

ジャク ドゥーラン ウォズ ヒズ ネィム
Jack Doolan was his name

オヴ プゥァ バッ アネスト パレンツ
Of poor but honest parents

ヒー ウォズ ボーン イン カスォメン
He was born in Castlemaine.

ヒー ウォズ ヒズ ファヅァズ オゥンリ ホゥプ
He was his father's only hope

ヒズ マヅァズ プラィッ アン ヂョィ
His mother's pride and joy,

アン ディァリ ディッ ヒズ パランツ ラヴ
And dearly did his parents love

ヅァ ワィォッ コロニァォ ボィ
The Wild Colonial Boy.

繰り返し

 ソゥ カム アウェィ ミ ハーティス
 So come away me hearties

 ウィーォ ロゥム ヅァ マゥンテンズ ハィ
 We'll roam the mountains high

 トゥガヅァ ウィ ウィォ プランダ
 Together we will plunder

 アン トゥガヅァ ウィ ウィォ ダィ
 And together we will die.

 ウィーォ スカゥァ アロン゜ ヅァ ヴァリィズ
 We'll scour along the valleys

 アン ウィーォ ガロプ オゥァ ヅァ プレィンズ
 And we'll gallop o'er the plains

 アン スコーン トゥ リヴ イン スレィヴァリ
 And scorn to live in slavery,

 バゥンッ ダゥン バィ アィアン チェィンズ
 Bound down by iron chains.

1.
開拓地の少年がいた
ジャック・ドゥーランというのが彼の名前
貧しいが正直な両親の元に
カッスルメーンで生まれた
彼は父親の唯一の希望で
母親の誇りと喜びだった
そして、両親は深く愛していたのだ
開拓地の少年を
 繰り返し
 さあ戻って来い、俺の仲間たち
 山の尾根を歩き回ろう
 一緒に略奪をはたらいて
 一緒に死のう
 谷筋を捜し歩こう
 平野ではウマを全速力で駆ろう
 そして、鉄の鎖に縛り付けられた
 奴隷の暮らしなど馬鹿にするのだ
Castlemaine【地名】カッスルメーン。
アイルランド南西部ケリー州の港町です。
did【助動詞】倒置構文で、文中の動詞(ここの場合は行末のlove)を強調します。
plunder【動詞】〜を略奪する、簒奪する。
scour【動詞】〜を探し回る。

2.
アッ ヅァ エィヂ オヴ スィクスティーン ィイァズ
At the age of sixteen years

ヒ レフト ヒズ ネィティヴ ホゥム
He left his native home

アン トゥ オーストレィリァズ サニー ショァズ
And to Australia's sunny shores

ア ブシュレィンヂャ ディッ ロゥム
A bushranger did roam.

ヅェィ プッ ヒム イン ヅァ アィアン ガン゜
They put him in the iron gang

イン ヅァ ガヴァメンッ エンプロィ
In the government employ

バッ ネヴァ アン アィアン オン エァース クッ ホゥォド
But never an iron on earth could hold

ヅァ ワィォッ コロニァォ ボィ
The Wild Colonial Boy.

 繰り返し

2.
16歳のときに
彼は生まれ育った家を離れた
そして、オーストラリアの晴れ渡った海岸へと
山賊は放浪していったのだ
政府では彼を鉄の鎖でつなぎ
政府のもとで働かせた
だがこの世にある鎖は決して
開拓地の少年をつないでおくことはできなかった
 繰り返し
bushranger【豪方言】山賊。
iron gang【熟語】(鉄の鎖でつながれた)ひとつながりの囚人たち。

3.
イン スィクスティ ワン ヅィス ダーリン゜ ユース
In sixty-one this daring youth

コメンスッ ヒズ ワィォッ カリーァ
Commenced his wild career

シウィヅ ア ハーッ ヅァッ ヌゥー ノゥ デインヂャ
With a heart that knew no danger

アン ノゥ フォーマン ディッ ヒー フィァ
And no foreman did he fear.

ヒー スタク アプ ヅァ ビーチゥウス メィォ コゥチ
He stuck up the Beechworth mail coach

アン ロブド ヂャヂ マケヴォィ
And robbed Judge MacEvoy

フゥ、トレンブリン゜ コゥォッ、ゲィヴ アプ ヒズ ゴゥォッ
Who, trembling cold, gave up his gold

トゥ ヅァ ワィォッ コロニァォ ボィ
To the Wild Colonial Boy

 繰り返し

3.
61年に、この愛すべき若者は
彼の荒仕事を始めた
危険を知らぬ心をもって
どんな親方をも恐れなかった
彼はビーチワースの郵便馬車を恐喝し
マケヴォイ判事から強奪した
判事はひどく震えながら
開拓地の少年に持ち金を渡した
 繰り返し
sixty-one 西暦1861年。年代の齟齬については「ガイド」の項をご覧ください。
foreman (労働者の)親方。
Beechworth【地名】ビーチワース。
豪ヴィクトリア州北西部の町で、19世紀半ばにゴールドラッシュで栄えました。当時の街並みが保存され、観光名所になっています。
Judge MacEvoy【人物】
マケヴォイ判事(?〜1872)。
豪ヴィクトリア州に実在した判事のようですが、詳細は不明です。

4.
ヒ ベィッ ヅァ ヂャヂ グッ モーニン゜
He bade the Judge good morning

アン ヒ トウォッ ヒム トゥ ビウェァ
And he told him to beware,

ヅァッ ヒッ ネヴァ ロブ ア ニーディ マン
That he'd never rob a needy man

オ ワン フゥ アクテッ スクゥエァ
Or one who acted square,

バッ・タ ヂャヂ フゥッ ロブド ア マヅァ
But a Judge who'd robbed a mother

オヴ ヘァ ワン アン オゥンリ ヂョィ
Of her one and only joy

シュァ、ヒ マスト ビ ア ゥワース アゥッロゥ
Sure, he must be a worse outlaw

ヅァン ヅァ ワィォッ コロニァォ ボィ
Than the Wild Colonial Boy

 繰り返し

4.
彼は判事におはようの挨拶をして
気をつけるようにと判事に告げた
彼は、貧乏人や正直にふるまう人からは
決して物を奪ったりしないと
しかし、母親のたった一つの喜びを
奪い取るような判事は
間違いなく、悪い無法者に違いない
開拓地の少年よりも
 繰り返し
bade【動詞・過去形】<bid:〜に挨拶をする。
needy【形容詞】貧しい。
square【形容詞】きちんとした、公正な。

5.
ワン デイ アズ ヂャク ウォズ ラィディン゜
One day as Jack was riding

ヅァ マゥントゥンサィッ アロン゜
The mountainside along,

ア リスニン゜トゥ ヅァ リトォ ブァーヅ
A-listening to the little birds

ヅェァ ハピ ラフィン゜ ソン゜
Their happy laughing song.

スリー マゥンテッ トルーパーズ ケィム アロン゜
Three mounted troopers came along,

ケリ、デイヴィス アン フィツロィ
Kelly, Davis and Fitzroy

ウィヅ ア ウォランッ フォ ヅァ カプチャ
With a warrant for the capture

オヴ ヅァ ワィォッ コロニァォ ボィ
Of the Wild Colonial Boy.

 繰り返し

5.
ある日ジャックが馬に乗って
小鳥たちの
幸せで嬉しそうな歌を聞きながら
山の中腹を進んでいたとき
馬に乗った警官が三人現れた
ケリーにデイヴィスにフィッツロイ
開拓地の少年の
逮捕令状を持って
 繰り返し
laughing【形容詞】楽しげな、嬉しい。
warrant 令状、委任状。

6.
サレンダ ナゥ、ヂャク ドゥーラン
'Surrender now! Jack Doolan,

フォ ユゥ スィー イツ スリー トゥ ワン
For you see it's three to one;

サレンダ イン ヅァ クゥィーンズ オゥン ネィム
Surrender in the Queen's own name,

ユゥ アー ア ハィウェィマン
You are a highwayman.'

ヂャク ドルー ヒズ ピストォ フロム ヒズ ベォッ
Jack drew his pistol from his belt

アン ウェィヴッ イッ ラィク ア トィ
And waved it like a toy,

アィォ ファィッ、バッ ノッ サレンダ
'I'll fight, but not surrender,'

クラィッ ヅァ ワィォッ コロニァォ ボィ
Cried the Wild Colonial Boy.

 繰り返し

6.
「さあ降伏しろ!ジャック・ドゥーラン、
見てのとおり三対一だ
女王様ご自身の名にかけて降伏しろ
お前は追剥だ」
ジャックはピストルを腰帯から抜いて
おもちゃのように振ってみせた
「俺は戦うぞ、降伏はしない」
開拓地の少年は叫んだ
 繰り返し
Queen【人物】英国女王。英国の王・女王は、オーストラリアの宗主も務めています。この歌の背景となった時代は、ヴィクトリア女王(1819〜1901)が統治していました。
highwayman 追い剥ぎ。



7.
ヒ ファィァッ アッ トルーパー ケリ
He fired at trooper Kelly

アン ブロッ ヒム トゥ ヅァ グラゥンッ
And brought him to the ground,

アン イン リトゥァン フロム デイヴィス
And in return from Davis,

リスィーヴッ ア モータル ウゥンッ
Received a mortal wound,

オーォ シャターッ スルー ヅァ ヂョーズ ヒ レィ 
All shattered through the jaws he lay

スティォ ファィァリン゜ アッ フィツロィ
Still firing at Fitzroy,

アン ヅァツ ヅァ ウェィ ヅェィ カプチャッ ヒム
And that's the way they captured him,

ヅァ ワィォッ コロニァォ ボィ
The Wild Colonial Boy.

 繰り返し

7.
彼はケリー警官に向けて撃ち
彼を地面に倒した
そしてその代わりに、デイヴィスから
致命傷を受けた
顎をすっかり撃ち砕かれて、彼は倒れた
それでもなおフィッツロイに向けて撃ちながら
そして、こうして彼は捕まった
開拓地の少年は
 繰り返し
mortal wound 致命傷。

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 ガイド   この歌は、『ウォルツィング・マチルダ』と並んで人気の高いオーストラリアの愛唱歌のひとつです。
 この歌の旋律は、アイルランドが発祥の地ですが、19世紀半ばにオーストラリアへ持ち込まれて現地で歌詞が施されたと考えられています。印刷された最も古い記録は、1881年にオーストラリアで出版された『Colonial Songster(植民地歌集)』に載っているものです。1905年には、『ウォルツィング・マチルダ』の作詞者として知られるアンドリュー・バートン・パターソン(Andrew Barton Paterson、1864〜1941)によって、2節の歌詞が付け加えられています。
 ジャック・ドゥーランは架空の人物と見られますが、一般には、ジャック・ドナヒュー(Jack Donohue、1806?〜1830)という人物をモデルにして、同じイニシャル(J.D.)をもった他の複数の山賊のエピソードが付け加えられて作り出されたものだと言われています。

 ドナヒューは、アイルランド出身の山賊(豪州英語ではブッシュレンジャー bushranger)で、1825年にオーストラリアへ流刑になったのですが、同年のうちに刑務所から脱走して、強盗や追い剥ぎとして生計を立てていたようです。1830年に保安警察によって射殺されています。
 これでは、歌詞の第3番に出てくる「1861年」には、ドナヒューはとっくに死んでいたことになります(バリアントによっては、異なる年になっている歌詞もありますが、いずれも1860年代で、ドナヒューが既に死んでいる点では同じです)。これは、1870年代に実在したジャック・ダウリング(Jack Dowling)という山賊のエピソードが、歌の内容に加味されているからだと思われます。また、1870年代に、ジャック・ドゥーラン(Jack Doolan)という山賊が実在したことがわかっており、彼のエピソードも歌詞に影響を与えていることはじゅうぶん考えられます。
 なお、主人公の名字は、しばしばDoogan(ドゥーガン)、Duggan(ダガン)、Dowling(ダウリング)などと綴られ、ファーストネームもJohnとJamesの2通りの呼び方があります。これらの名前は、ジャック・ダウリングも含め、この歌のモチーフになった山賊たちのものとみなされています。

ひとりごと
 この歌の歌詞はかなりバリエーションに富んでいるようです。まず主人公の名前からしてはっきりと定まっていないというわけですから、その他の部分にどれだけずれがあるかはいともたやすく想像がつきます。
 もっとも、こういう細かなところにいちいち目くじらを立てないのが、オージー流おおらかさとでも言うのでしょうか。
 オーストラリアの面白いところは、『ウォルツィング・マチルダ』やこの『開拓地の少年』など、山賊や無法者といった反権力者たちをテーマにした歌謡に人気があることです。流刑地として発達した歴史と関連があるのかもしれません。
 なお、当サイトでは、カッスルメーンを「アイルランドの地名」としましたが、オーストラリアのヴィクトリア州にもやはり「カッスルメーン」という地名があり、ドナヒューはこちらで生まれたのではないかという説もあります。


参考URL:
http://thegreenman.net.au/mt/archives/000875.html(メイン歌詞)
http://www.imagesaustralia.com/thewildcolonialboy.htm
http://www.contemplator.com/ireland/wildboy.html
http://www.hyperhistory.org/index.php?option=displaypage&Itemid=674&op=page
http://www.alansim.com/austhtml/aus003.html
http://www.artuccino.com/BKMawerCol.htm
http://folkstream.com/098.html
http://folkstream.com/097.html
http://www.irelandview.com/kerry-castlemaine.php
http://www.garyshearston.com/html/bolters_notes3.html

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)

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