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THE OVERLANDER
(QUEENSLAND DROVER)
オーバーランダー(クイーンズランドの家畜追い商)

昔のオーストラリアの家畜商の雰囲気が味わえます。

作詞:P.ソーマー、但し異版あり  
作曲:A.B.パターソン、L.V.H.クロースビーなど数版 
19世紀後半〜20世紀前半成立

邦題
この歌には、邦題がまだついていないようです。

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜6番   バリアントバージョン
フリガナはイギリス英語の発音に基づいています。
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
ヅェァズ ア トレィッ ユゥ オーォ ノゥ ウェォ
There's a trade you all know well

イツ ブリンギン゜ カトォ オゥヴァ
It's bringing cattle over

オン エヴリ トラク、トゥ ヅァ ガルフ アン バク
On ev'ry track, to the Gulf and back

メン ノゥ ヅァ クゥィーンズランッ ドロゥヴァ
Men know the Queensland drover

繰り返し
 パス ヅァ ビリ ラゥンッ、マィ ボィズ!
 Pass the billy round, my boys!

 ドウンッ レッ ヅァ パィンッポッ スタンッ ヅェァ
 Don't let the pint-pot stand there!

 フォ トゥナィッ ウィ ドリンク ヅァ ヘルス
 For tonight we drink the health

 オヴ エヴリ オゥヴァランダ
 Of ev'ry overlander

1.
誰もがよく知っている商売がある
それはウシの群れを連れてくること
湾へ行く道、戻る道、すべての道で
人々はクイーンズランドの家畜追い商を知っている
 繰り返し
 茶沸かしを回してくれ、仲間たち!
 パイント壷をそこに置いたままにするな!
 今夜われらは、すべての家畜追い商の
 健康を願って呑むのだから
Gulf【地理】オーストラリア北部のカーペンタリア湾を指しているものと思われます。
Queensland【地理】クイーンズランド州。
オーストラリア北東部の州で、州都はブリズベンにあります。
drover家畜追い商。
家畜の群れを追って市場へ連れて行く商人のこと。題名にもなっているoverlanderは、豪州方言で同じ意味を持ちます。
billy【豪方言】(野外で料理などに使う)金属の容器。拙訳では「茶沸かし」としてみました。
pint-pot液体が1パイント入る容器(主に酒壷)。
1パイントは0.5リットル強に相当します。

2.
アィ カム フロム ヅァ ノーヅァン プレィンズ
I come from the northern plains

ウェァ ヅァ グァーォス アン グラス アー スカンティ
Where the girls and grass are scanty

ウェァ ヅァ クリークス ラン ドラィ オ テン フィーッ ハィ
Where the creeks run dry or ten foot high

アン イツ イーヅァ ドローッ オ プレンティ
And it's either drought or plenty

 繰り返し

2.
俺は北の平原から来た
娘も草もろくに無いところだ
川には水が無いか、水かさが十フィートあるかで
乾ききっているかみなぎっているかという場所だ
 繰り返し
scanty【形容詞】少ない、乏しい。


3.
ヅェァ アー メン フロム エヴリ ランッ
There are men from ev'ry land,

フロム スペィン アン フランス アン フランダーズ
From Spain and France and Flanders

ヅェィア ア ウェォ ミクスト パク、ボゥス ワィッ アン ブラク
They're a well-mixed pack, both white and black,

ヅァ クウィーンズランッ オゥヴァランダーズ
The Queensland overlanders

 繰り返し

3.
至るところの国から人々が来ている
スペインから、フランスから、フランドルから
いろんな奴が交じった一団だ、
白人も黒人もどちらもいる、
クイーンズランドの家畜追い商というのは
 繰り返し
Flanders【地理】フランドル地方。
フランス北端部、ベルギー西部、オランダ南西部にわたる海沿いの地域です。日本では「フランダース」とも呼びます。


4.
ウェン ウィーヴ エァーンド ア スプリー イン タゥン
When we've earned a spree in town

ウィ リヴ ラィク ピグズ イン クロゥヴァ
We live like pigs in clover;

アン ヅァ ホゥォ ィイァズ チェク プァズ ダゥン ヅァ ネク
And the whole year's cheque pours down the neck

オヴ メニ ア クウィーズランッ ドロゥヴァ
Of many a Queensland drover

 繰り返し

4.
街で遊べるだけの金を稼いだら
クローバーの中の豚のように幸せに暮らすぞ
そして丸一年分の小切手が
おおぜいのクイーンズランドの家畜追い商の首を
流れ落ちていく
 繰り返し
spree 浮かれ騒ぐこと。
live like pigs in clover
 【熟語】安逸に幸せに暮らす。

5.
アズ アィ パス アロン゜ ヅァ ロゥヅ
As I pass along the roads

ヅァ チォドレン レィズ マィ ダンダ
The children raise my dander

クラィイン゜ マヅァ ディァ、ティク イン ヅァ クロゥヅ
Crying "Mother dear, take in the clothes,

ヒア カムズ アン オゥヴァランダ!
Here comes an overlander!"

 繰り返し

5.
俺が道を歩いていると
子供らが俺の頭に来るようなことをする
「母さん、服を取り込んで、
家畜追い商がきたよ!」と叫ぶんだ
 繰り返し
raise my dander【熟語】
 (私を)怒らせる、頭に来させる。
danderは「(頭の)ふけ」または「かんしゃく」の意味があります。

6.
ナゥ アィム バゥンッ フォ ホゥム ワンス モー
Now I'm bound for home once more

オン・ナ プラッ ヅァツ クヮィッ ア ゴゥア
On a prad that's quite a goer;

アィ カン ファィンッ ア ヂョブ ウィヅ ア クローリン゜ モブ
I can find a job with a crawling mob

オン ヅァ バンクス オヴ ヅァ マラノア
On the banks of the Maranoa

 繰り返し

6.
さて、俺はもう一度家に戻るぞ
馬に乗って、こいつが実によく歩くんだ
腰ばかり低い連中と一緒の仕事を見つけるんだ
マラノア川の岸辺で
 繰り返し
prad【動物・豪方言】馬。
crawling【形容詞】卑屈な、おべっか使いの。
Maranoa【地理】マラノア川。
クイーンズランド州の南部を南西に流れ、カルゴア川に流入します。カルゴア川はダーリング川を経てマーレー川となり、アデレード近くでインド洋に注ぎます。

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 ガイド   この歌は、1865年に刊行された歌集『The Queenslanders' New Colonial Fire Song Book』に収載されたものが、最も古い記録として知られています。同書では、作詞者はフィリップ・ソーマー(Phillip Somer)、曲は19世紀米国の人気曲『Dearest Mae(素敵なメイ)』〔※1〕を借用したものとされています。
 この歌は、少なくとも3種類の旋律があることが知られています。最も代表的な旋律は、『Waltzing Matilda(ウォルツィング・マチルダ)』などの作者として知られるアンドリュー・バートン・パターソン(Andrew Barton Paterson、1864〜1941)が編集して1906年に刊行された歌集『The Old Bush Songs』に掲載されています。これは、上述の『Dearest Mae』とは異なる旋律です。
 また、オーストラリアの民謡収集家ロン・エドワーズ(Ron Edwards、1930〜存命)の『Australian Folk Song』には4種類の歌詞が収載されています。
  〔※1〕歌詞はフランシス・リンチ(Francis Lynch)、曲はL.V.H.クロースビー(L.V.H.Crosby)による曲です。

ひとりごと
 世界中からオーストラリアへ家畜追い商の仕事に就くためにやってくる人たちがいるんですね。それだけ儲かる仕事ということでしょうか?…
 …いやいやいや、いかんいかん。大自然の中を悠長に走りながら楽して儲けようなどと、現代日本社会では思ってはいけないだろう。
 そもそも、家畜追いがらくちんな仕事であるという保証はありません。この歌ができた時代でも、夜盗だの猛獣だのが出没したことでしょう。ヒツジやウシが病気になったり怪我をしたりすれば、儲けも減るでしょうし。
 それに、そもそも今どきのオーストラリアでは、家畜は貨物列車やトレーラーで輸送しているはずですから、家畜追いの仕事というのはほとんど消滅していると思われます。


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バリアント

一般的には、上に挙げた歌詞とは異なる歌として捉えられているようですが、メロディーと第1番の歌詞が同じなので、ここでは「バリアント」として取り上げました。

◆原歌詞:1〜6番 ◆和訳と語句

1.
オゥ ヅェァズ ア トレィッ ユゥ オーォ ノゥ ウェォ
Oh there's a trade you all know well

イツ ブリンギン゜ カトォ オゥヴァ
It's bringing cattle over

アィォ テォ ユゥ オーォ アバゥッ ヅァ タィム
I'll tell you all about the time

ヅァッ・タィ ビケィム ア ドロゥヴァ
That I became a drover

アィ ウォンテッ ストク フォ クイーンズランッ
I wanted stock for Queensland

トゥ ケンプスィ アィ ディッ ワンダ
To Kempsey I did wander

アン ボーッ ア モブ オヴ ダファズ ヅェァ
And bought a mob of duffers there

アン ビガン アズ アン オゥヴァランダ
And began as an overlander

繰り返し
 ソゥ パス ヅァ ボトォ ラゥンッ ボィズ!
 So pass the bottle round boys

 アン ドウン・チュ リーヴ イッ スタンッ ヅェァ
 And don't you leave it stand there

 フォ トゥナィッ ウィォ ドリンク ヅァ ヘルス
 For tonight we'll drink the health

 オヴ エヴリ オゥヴァランダ
 Of ev'ry overlander

1.
誰もがよく知っている商売がある
それはウシの群れを連れてくること
あの時について話してあげよう
私が家畜追い商になった時のことを
クイーンズランドに連れて行く家畜が欲しかった
ケンプシーまで歩いていったよ
そこで焼印直し屋から買って
家畜追い商として仕事を始めたんだ

繰り返し
 さあ瓶をみんなに回してくれ
 そこに立てたままにしておかないで
 今夜我々は、家畜追い商ひとりひとりの
 健康を祝って呑むのだから
Kempsey【地名】ケンプシー。
豪ニューサウスウェールズ州北西部の都市で、ブリズベンから300kmほど南にあります。
duffers【豪方言】家畜を盗み、その焼印を書き換える泥棒。

2.
ウェォ ウェン ヅァ カトォ ゥワー カゥンテッ
Well when the cattle were counted

アン ヅァ アゥッフィッ レディ トゥ スターッ
And the outfit ready to start

ヅァ ラヅ ゥワー オーォ ウェォ マゥンテッ
The lads were all well mounted

ウィヅ ヅェィァ スワグス レフト イン ヅァ カーッ
With their swags left in the cart

アィ ソー アィ ハッ オーォ ソーツ オヴ メン
I saw I had all sorts of men

フロム ヂェァマニ フランス アン フランダース
From Germany France and Flanders

ローヤス ドクタス グーッ アン バーッ
Lawyers doctors good and bad

イン ヅァ モブ オヴ オゥヴァランダーズ
In the mob of overlanders

繰り返し

2.
それで、家畜が数え上げられて
一行の出発準備ができたとき
男たちはみんな馬にまたがった
荷物を全部荷車に置いたまま
あらゆる種類の男たちが仲間にいるのを見たよ
ドイツ、フランス、フランダース出身の者
弁護士、医師、いい奴も悪い奴もいる
家畜追い商の連中のうちには
繰り返し
outfit (旅の)一団。
mounted【動詞・過去形】馬にまたがる。

3.
ヅァ ヴェリ ネクスト モーニン゜ アィ フェ・ダプ
The very next morning I fed up

ゥエァ ヅァ グラス ウォズ グリーン アン ヤン゜
Where the grass was green and young

アン ヅァ スクゥォッタ セッ ヒッ ブレィク マィ スナゥッ
And the squatter said he'd break my snout

イフ アィ ディドン プシュ アロン゜
If I didn't push along

セズ アィ マィ ラド ユア ヴェリ ハーッ
Says I my lad you're very hard

バッ ドウン・チュ レィズ マィ ダンダ
But don't you raise my dander

フォー アィム ア レギュラ ノゥイン゜ カーッ
For I'm a regular knowing card

アィム ア クウィーンズランッ オゥヴァランダ
I'm a Queensland overlander

繰り返し

3.
明けて次の朝にはもううんざりした
草が緑で若々しいこの地に
羊飼いが、先へ行かなきゃ
鼻をへし折るぞと言ったんだ
私は言ったさ、君は厳しい人だなと
だが私を頭に来させないでくれと
私はちゃんと物の分かった奴なんだから
私はクイーンズランドの家畜追い商だ
繰り返し
squatter【豪方言】羊を飼う農民。
snout 鼻、鼻部。


4.
イフ エヴァ アワ ホースィズ ゲッ ダン・ナプ
If ever our horses get done up

オヴ コース ウィ トゥァン エム フリー
Of course we turn 'em free

アン ユゥ カンッ エクスペクト ア ドロゥヴァ トゥ ウォーク
And you can't expect a drover to walk

イフ ア ポゥニ ヒ カン スィー
If a pony he can see

ソゥ ナゥ アン ヅェン ウィ ボゥン ア プラッ
So now and then we bone a prad

アン ビリーヴ ミ イツ ノッ スランダ
And believe me it's no slander

トゥ セィ ヅェァズ メニ ア クレヴァ トリク
To say there's many a clever trick

タ゛ン バィ アン オゥヴァランダ
Done by an overlander

繰り返し
4.
もし我々の馬がへとへとになってしまったら
もちろん解き放ってやるさ
そして、もし家畜追い商が子馬を見たなら
家畜追い商が歩くなんて考え方はできないさ
だから、ときどき我々が馬を盗んでも
信じてくれ、家畜追い商によってなされる
たくさんのずるい事があると言うことは
名誉毀損じゃないってことを
繰り返し
done up【熟語】疲れきった、へとへとになった。
bone【動詞】〜を盗む、掠め取る。
slander 悪口、中傷、名誉毀損。

5.
イン タゥン ウィ ドレィン ヅァ ウィスキ グラス
In town we drain the whiskey glass

アン ゴゥ トゥ スィー ヅァ プレィ
And go to see the play

ウィ ネヴァ スィンク オヴ ビイン゜ ハー・ダプ
We never think of being hard up

ノー ハゥ トゥ スペンッ ヅァ デイ
Nor how to spend the day

ウィ シア アプ トゥ ヅァ プリティ グァーォズ
We shear up to the pretty girls

ヅァッ リグ ヅェムセォヴズ ウィヅ グランヂュァ
That rig themselves with grandeur

アン アズ ロン゜ アズ ウィ スペンッ アワ チェク マィ ラヅ
And as long as we spend our cheque, my lads

ヅェィ ラヴ ヅィ オゥヴァランダ
They love the overlander

繰り返し

5.
街で我々はウィスキーのグラスを飲み干して
芝居を見に出かけよう
金が底を尽くことなんて絶対考えない
毎日をどうやって過ごすかも考えない
我々はかわいい娘たちを捕まえるんだ
立派な服を着た娘たちを
我々が小切手を使っている間は、仲間よ
彼女たちは家畜追い商のことが好きなのさ
繰り返し
hard up【熟語】金が尽きた、貧乏な。
rig【動詞】〜を着飾らせる。


6.
ア リトォ グァーォ オン スィドニ サィッ
A little girl on Sydney side

シー セッ ドウンッ リーヴ ミ ロゥンリ
She said don't leave me lonely

アィ セッ イツ サッ バッ マィ オゥルッ プラッ ハズ ルーム
I said it's sad but my old prad has room

フォー ワン マン オゥンリ
For one man only

アン ナゥ マィ ラヅ ウィァ ヂョギン゜ バク
And now my lads we're jogging back

ヅィス ポゥニ シーズ ア ゴゥア
This pony she's a goer

ウィーォ ピク アプ ア ヂョブ ウィヅ ア クローリン゜ モブ
We'll pick up a job with a crawling mob

アロン゜ ヅァ マラノア
Along the Maranoa

繰り返し

6.
シドニー近くに住んでいる娘
自分を独りぼっちにしないでと言ってきた
私は言った、残念だが、私のなじみの馬には
人ひとり分を乗せる余裕しかないんだと
そして今、我々はゆっくり歩いて戻っていく
この子馬はよく歩く奴だ
腰ばかり低い連中と一緒の仕事を見つけるんだ
マラノア川沿いで
繰り返し



参考URL
http://www.immortalia.com/html/books-and-manuscripts/1980s/1985-golds-gym-songbook/index.htm(メイン歌詞)
http://oldpoetry.com/opoem/printall/Anonymous+Oceania/2
http://www.imagesaustralia.com/overlanders.htm
http://folkstream.com/070.html(バリアント歌詞)
http://folkstream.com/072.html
http://www.wyomingtalesandtrails.com/cattle4-2.html
http://thegreenman.net.au/mt/archives/001063.html
http://www.cultureandrecreation.gov.au/articles/music/bush/
http://www.gutenberg.org/catalog/world/readfile?fk_files=42676&pageno=65
http://users.tpg.com.au/folkrag/profiles/Ron_Edwards.htm

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)

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