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LOCH LOMOND
ローモンド湖

永遠の別離の歌です。引き離されたのは、恋人たちか、処刑された兵士か。

作詞:不詳、但しJ.スコット夫人説あり
作曲:不詳  / 18〜19世紀成立?

邦題
『ロッホ・ローモンド』
『水辺の春』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜3番
フリガナはイギリス英語の発音に基づいています。
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句
(語釈の「方言」はスコットランド方言を表します。)

1.
バィ ヨン ボニ バンクス
By yon bonnie banks

アン バィ ヨン ボニ ブレィス
And by yon bonnie braes,

ウェァ ヅァ サン シャィンズ ブラィッ
Where the sun shines bright

オン ロホ ロモンッ
On Loch Lomond

オゥ ウィ トゥォ ヘィ パスト
Oh we twa ha'e pass'd

セィ モニ ブラィスサム デイズ
Sae mony blithesome days,

オン ヅァ ボニ、ボニ バンクス
On the bonnie, bonnie banks

オ ロホ ロモンッ
O' Loch Lomond.

繰り返し
 オゥ ィイォ タク ヅァ ハィ ロゥド
 Oh ye'll tak' the high road

 アン アィォ タク ヅァ ロゥ ロゥド
 And I'll tak' the low road,

 アン アィォ ビ イン スコッラン ビフォー ィイ
 An' I'll be in Scotland before ye',

 バッ ウェィ イズ マィ ハーッ
 But wae is my heart

 アンティォ ウィ ミーッ アゲン
 Until we meet again

 オン ヅァ ボニ ボニ バンクス
 On the Bonnie, bonnie banks

 オ ロホ ロモンッ
 O' Loch Lomond.

1.
あそこの美しい土手で
そしてあそこの美しい斜面で
太陽がさんさんと
ローモンド湖に照っている場所で
ぼくら二人は過ごした
同じ幸せな日々を何日も
ローモンド湖の
美しい、美しい土手で
繰り返し
 おお、きみは高い道を行き
 そしてぼくは低い道を行こう
 そして僕はきみより先に
 スコットランドに着くだろう
 だが、ローモンド湖の美しい、美しい岸辺で
 ぼくらが再び会うまでは
 ぼくの心は悲しいままだ
yon【形容詞】(方言形)
むこうの、あそこの。
braes【複数形】(方言)坂、斜面。
loch (方言形)湖。
Loch Lomond【地理】ローモンド湖。
スコットランドにある、グレートブリテン島最大の湖。グラスゴーの北西30kmほどのところにあります。
twa (方言形)二人。
sae【形容詞】(方言形)=same 同じ。
mony【形容詞】(方言形)=many 多くの。
blithesome【形容詞】幸せな。
ye【代名詞・目的格】(方言形)=you
wae【形容詞】(方言) もの悲しい。
 

2.
アィ マィンッ ウェァ ウィ パーテッ
I mind where we parted

イン ヨン シェィディ グレン
In yon shady glen

オン ヅァ スティープ スティープ サィド
On the steep, steep side

オ ベン ロモン
O' Ben Lomon'

ウェァ イン プァプォ ヒュー
Where in purple hue

ザ ヒーランッ ヒォズ ウィ ヴュー
The highland hills we view

アン ヅァ ムーン シャィンズ アゥッ
And the moon shines out

フレィ ヅァ グロゥミン
Frae the gloamin'

繰り返し

2.
ぼくは、ぼくらが別れた場所を思い出している
あそこの日陰になった谷間だ
ローモンド山の急な、急な斜面にあった
あそこは、ぼくらが
紫色に染まった高地の丘を眺め
月が夕闇の中から
輝いて昇る場所だ
繰り返し
glen (方言)谷間。
ben (方言)山、丘。
hue 色合い。
frae【前置詞】(方言形)=from 〜から。
gloamin' たそがれ、夕方の薄明かり。

3.
ヅァ ウィー ブァーッ メィ スィン゜
The wee bird may sing

アン ヅァ ワィォッ フラゥワズ スプリン゜
An' the wild flowers spring;

アン イン サンシャィン ヅァ ウォータス アー スリーピン
An' in sunshine the waters are sleepin'

バッ ヅァ プロゥクン ハーッ
But the broken heart

イッ スィーズ ネィ セカン スプリン゜
It sees nae second spring,

アン ヅァ ウェァォッ ダズ ナ ケン
And the world does na ken

ハゥ ウィァ グリーティン
How we're greetin'

繰り返し

3.
小鳥は歌うだろうし
そして野の花も咲き出る
そして日光の中で川は眠っている
だが傷ついた心は
二度と春など目にしない
そして世界には分からない
ぼくらがどんな挨拶を交わすかなんて
繰り返し
wee【形容詞】(方言)小さな。
nae【副詞】(方言形) =not 〜しない。
na【副詞】(方言形) =not。
ken【動詞】(方言) 〜を知る、理解する。

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 ガイド   スコットランドが出自とされる、作詞者、作曲者ともに不明のバラードです。『アニー・ローリー』のジョン・スコット夫人(1810〜1900)が書いたとも言われていますが、確かなことは分かっていません。曲は、1740年ごろに発表された『Robin Cushie』という歌の旋律が充てられているようです。
 この歌の歌詞は、恋人同士の別れを哀切に歌ったものとみなす解釈が一般的ですが、1745年のスコットランドとイングランド間のジャコバイトの乱にまつわる、以下の逸話にちなむものとする説もあります。ただの伝説にしか過ぎない話ですが、メルヘンとしては美しいものと言えるかもしれません。
1.1745年のジャコバイトの乱(説明は下で)において、チャールズ・エドワード・スチュアート(Charles Edward Stuart、愛称Bonnie Prince Charlie、1720〜1788)が率いていた兵士が二人、イングランド軍に捕らわれ、一人は釈放されましたが、もう一人は処刑されました。
 「低い道を進んでスコットランドに先に着く『僕』」というのは、この「処刑された兵士」の魂のことで、彼は死者の通る地下の道を進んでスコットランドに帰り、地上にある現実の道(すなわち「高い道」)を行ってスコットランドに帰る釈放された兵士よりも早くスコットランドに着くことになるのです。
 〔参考URL:http://www.loch-lomond.net/songs/songs.html〕

2.カーライル城の牢に閉じ込められて死刑の時を待つ兵士は、故郷で彼の無事を待つ恋人への想いを歌にしたためます。処刑されたあと、兵士の魂は、恋人に最後にひと目会いに行きますが、恋人はその姿を見て、彼が既にこの世の者ではないことを悟るのです。
 〔参考URL:http://www.siliconglen.com/Scotland/9_3_5.html〕
 また、同じくスコットランドの歌で『ロッホ・ローモンド』と同じ旋律の『ボニー・メイ(Bonnie May)』という歌もありますが、『ボニー・メイ』の歌詞を作り直したものが『ロッホ・ローモンド』であるようです。
 アイルランド歌謡の『バラは黄色(Yellow Is the Rose)』は『ロッホ・ローモンド』と同じメロディーです。

 1688年の名誉革命で、当時のスチュアート朝イングランド王だったジェイムズ2世(James II、1633〜1701)が王座から追放されましたが、ジェイムズ2世および彼の子孫をイングランド王の座に復位させようという勢力が、スコットランドやフランスを中心に生じました。これらの勢力を、「ジェイムズ(James)」のラテン語読みによって、ジャコバイト(Jacobite)と呼びます。
 ジャコバイトが新制イングランドに対して起こした争乱を「ジャコバイトの乱」と言い、1689年、1715年、1719年、1745年の4度にわたり勃発しています。1715年と1745年の乱はとりわけ激しいもので、『The Fifteen』『The Forty-Five』の名で語られることもあります。いずれの争乱でも、スチュアート側が敗退しています。とくに1745年の乱でスチュアート側は大敗を喫し、以来ジャコバイトは衰退の一途をたどります。
 チャールズ・エドワード・スチュアートはジェイムズ2世の孫に当たります。1745年に敗退してからは、フランスやイタリアで暮らし、ローマで亡くなったそうです。

ひとりごと
 切なくも美しい旋律と歌詞です。この美しさのおかげで、多くの人がローモンド湖の存在を知ることになったと思うのですが、そのいっぽうで、この歌の醸し出すイメージが、多分にローモンド湖のイメージそのものになってしまっている感はぬぐえません。
 ローモンド湖周辺は景観が美しいので、スコットランドの観光地のひとつにも数えられているようですが、通りがかりのパブかどこかで、この曲がエンドレスで流れていたりしたら、多少鬱陶しいかもしれません。もっとも、日本とは違って、イギリスはそんなセンスの無いことはしないとは思うのですけれど。

 おまけ。上に挙げた伝説の2で、処刑された兵士の名前は、「ドナルド・マクドネル(Donald McDonnell)」または「ドナルド・マクドナルド(Donald MacDonald)」と言うらしいです。某有名ハンバーガーチェーンを彷彿とさせますが、関連性はあるのでしょうか?


参考URL
http://www.loch-lomond.net/songs/songs.html(メイン歌詞)
http://www.song-lyric.us/public/contents.php?id=8489&PHPSESSID=&PHPSESSID=
http://www.cs.rice.edu/~ssiyer/minstrels/poems/719.html
http://www.niehs.nih.gov/kids/lyrics/lochlomond.htm
http://www.rampantscotland.com/songs/blsongs_lomond.htm
http://www.contemplator.com/scotland/lomond.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Jacobitism
http://www.ultimate-guitar.com/tabs/m/misc_traditional/loch_lomond_crd.htm
http://www.siliconglen.com/Scotland/9_3_5.html
http://www.ibiblio.org/fiddlers/LOA_LOM.htm

MIDI作成ソフト:てきとーシーケンサ Version2.15

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