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ICH BIN DER DOKTOR EISENBART
私はアイゼンバルト博士

実在の医師をモデルにした、頓狂な治療法の数々。

作詞:不詳  /  作曲:不詳  /  18世紀前半成立?

邦題
『お医者さん』『私はお医者さん』
『ひげのお医者さん』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)


◆原歌詞:1〜13番   バリアントバージョン
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句
(繰り返しの「zwilliwilliwick, bumbum!」等は訳出しませんでした。)

1.
イヒ ビン デァ ドクトァ アィズンバァッ
Ich bin der Doktor Eisenbart,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

クゥリエァ ディ ロィッ ナハ マイネァ アァッ
Kurier' die Leut' nach meiner Art,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

カン マッヘン ダス ディ ブリンデン ゲーン
Kann machen daß die Blinden geh'n,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

ウン ダス ディ ラーメン ヴィーデァ ゼーン、
Und daß die Lahmen wieder seh'n,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し
 ラォトニア ラォトニア、ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
 Lautonia, lautonia, zwilliwilliwick, jucheirassa, 

 ラォトニア ラォトニア、ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
 Lautonia, lautonia, zwilliwilliwick, bumbum!

1.
私はアイゼンバルト博士
わたくし流に人々を治します
目の見えない人たちも歩けるようにできるし
足が悪くてもまた物が見えるようになれます
繰り返し
 ラウトニア、ラウトニア
 ツヴィリヴィリヴィック、ユハィラッサ
 ラウトニア、ラウトニア
 ツヴィリヴィリヴィック、ブンブン

Doktor Eisenbart 
【人名】アイゼンバルト博士。
17〜18世紀のドイツに実在した医師。詳しくは下の『ガイド』を参照してください。
なお、歌詞によっては"Eisenbarth"と綴っているものもあります。こちらが本来の綴りのようですが、いずれも発音は同じです。
Art やり方、流儀。
Lahmen【複数形】
 (手・足が)不随になった人。



2.
イン ウルム クゥリエァト イヒ アィネン マン
In Ulm kuriert' ich einen Mann,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ダス イーム ダス ブルゥト フォン バィネ ラン
Daß ihm das Blut vom Beine rann,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

エァ ヴォルテ ゲァン ゲクーポックト ザィン
Er wollte gern gekuhpockt sein,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

イヒ インプツ イーム ミッ デム ブラートシュピース アィン
Ich impft's ihm mit dem Bratspieß ein,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

2.
ウルムである男を治療しました
彼の脚から血が流れていたのです
牛痘に罹りたがっていたので
私は焼き串で種痘してやりました
繰り返し

Ulm【地名】ウルム。
ドイツ南部のバーデン・ヴュルテンベルク州にある都市。大聖堂で知られています。
gekuhpockt【動詞・過去分詞】
牛痘に罹患した。
Kuhpocken(牛痘)が動詞化した単語です。
牛痘は、皮膚に膿のたまったできものが生じ、発熱も見られる疾病ですが、これにかかると、症状がはるかに激しい天然痘にかからずにすむということが、17世紀頃から経験的に言われていたようです。
impft'…ein【動詞・一人称単数過去形】
<einimpfen …に種痘をほどこす。
Bratspieß 
(肉の塊を刺して焼くための)焼き串。


3.
ツ ポッダム トレパニエァテ イヒ
Zu Potsdam trepanierte ich,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

デン コォホ デス グローセン フリーデリヒ
Den Koch des Großen Friederich,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

イヒ シュルゥク イーム ミッ デム バィル フォァン コップ
Ich schlug ihm mit dem Beil vor'n Kopf,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

ゲシュトーベン イスト デァ アーメ トロップ
Gestorben ist der arme Tropf,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

3.
ポツダムでは、フリードリヒ大王の料理人に
穿頭手術を施しました
手斧で頭を打ってやったところ
やっこさん、気の毒なことに亡くなりました
繰り返し

Potsdam【地名】ポツダム。
ベルリンの南西にある都市で、ブランデンブルク州の州都です。日本では、太平洋戦争の無条件降伏に調印した「ポツダム宣言」の地として知られます。
trepanierte【動詞・一人称単数過去】
 〜に穿頭手術を施す。
穿頭(せんとう)手術は、頭蓋骨に穴を開けて、脳内の手術を行うものです。
Großen Friederich 
【人名】フリードリヒ大王。
18世紀プロシアの王、フリードリヒ2世を指しているものと思われます。
Tropf (人を指して)やつ、あいつ。



4.
デス クュステァス ゾーン イン ドゥーデルドゥム
Des Küsters Sohn in Dudeldum,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

デム ガプ イヒ ツェーン プント オピウム
Dem gab ich zehn Pfund Opium,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ドラォフ シュリーフ エァ ヤーレ、ターク ウンッ ナハト
Drauf schlief er Jahre, Tag und Nacht,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

ウンッ イスト ビス イェツト ノホ ニヒト エァヴァハト
Und ist bis jetzt noch nicht erwacht,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

4.
ドゥーデルドムの寺男の息子に
十プントのアヘンを与えました
それ以来何年も、昼も夜も眠っていて
今に至るまでまだ目覚めていません
繰り返し

Küster 教会の下働き人。
 拙訳では、「寺男」としてみました。
Dudeldum【地名】ドゥーデルドゥム。
 場所不明。歌詞によっては、ここを「Dideldum」と表記しているものもあります。
Pfund プント(重量の単位)。
 現在では、「1プント=500グラム」と定められていますが、この歌が作られた時代はどうだったのか、いまいち定かではありません。



5.
エス ハト アィン マン イン ランゲンザルツ
Es hatt' ein Mann in Langensalz,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

アィン ツェントネァシュヴェアレン コップ アム ハルス
Ein zentnerschweren Kopf am Hals,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

デン シュヌュァト イヒ ミッ デム ヘムザィル ツー
Den schnürt ich mit dem Hemmseil zu,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

プロバートゥム エスト、エァ ハッ ディ ルー
Probatum est, er hat die Ruh',

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

5.
ランゲンザルツにひとりの男がいました
首にものすごく重たい頭が乗っていたのです
それを紐で括ってみたところ
結果はこのとおり、やっとお休みになれました
繰り返し

Langensalz【地名】ランゲンザルツ。
ドイツ中部のチューリンゲン州にある都市バート・ランゲンザルツァ (Bad Langensalza)のことと思われます。1956年までは単に「Langensalza」と呼ばれていました。
zentnerschweren【形容詞】ものすごく重たい。
 直訳すると「1ツェントナー(50kg)の重さのある」という意味ですが、ここではもちろん比喩的に使われています。
なお、この後に続くKopf「頭」は、バリアントバージョンではKropf「甲状腺腫」となっています。



6.
ツー プラーク ダ ナーム イヒ アィネム ヴァィプ
Zu Prag da nahm ich einem Weib,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ツェーン フーデァ シュタィネ アォス デム ラィイプ
Zehn Fuder Steine aus dem Leib,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

デァ レツテ ヴァー イーア ラィヒェンシュタィン
Der letzte war ihr Leichenstein,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

ズィー ヴィアト ヴォール イェツト クゥリエレト ザィン
Sie wird wohl jetzt kurieret sein,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

6.
プラハではご婦人の体から
石を十フーデルも取り出しました
最後のひとつはご婦人の墓石でして
いまやすっかり治ってぴんぴんしております
繰り返し

Prag【地名】プラハ。
現在のチェコ共和国の首都です。ボヘミア王国の首都でもありました。
Weib 女、婦人。
この単語は、現代では差別用語と見なされるので注意。
Fuder フーデル(重さ・体積の単位)。
荷馬車に一山ぶんの量を表します。


7.
フォア フンゲァ ヴァー アィン アルテァ フィルツ
Vor Hunger war ein alter Filz,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ゲプラークト ミッ シュメァツェン アン デァ ミルツ
Geplagt mit Schmerzen an der Milz,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

イヒ ハプ イーン エクストラポスト ゲシックト
Ich hab' ihn Extrapost geschickt,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

ヴォー トイレ ツァイト イーン ニヒト メーア ドルュックト
Wo teure Zeit ihn nicht mehr drückt,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

7.
とあるけちな男が、お腹をすかして
脾臓の痛みに悩まされていました
私は彼を急行郵便馬車で送りました
彼がもうずっと苦しまずにすむ所へと
繰り返し

Milz【医学】脾臓。
 現代医学ではあまり重きを置かれていませんが、近世ヨーロッパでは重要な臓器とみなされていたようです。
Extrapost 急行郵便馬車。
 「Post」は、現代語では「郵便」を指しますが、ここでは「郵便馬車」の意味で使われています。



8.
ホイト フルュー ナーム イヒ イーン イン ディ クーァ
Heut früh nahm ich ihn in die Kur,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ユスト ドラィ ミヌーテン フォア ツヴェルフ ウーァ
Just drei Minuten vor zwölf Uhr,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ウンッ アルス ディ グロッケ ミッターク シュルック
Und als die Glocke Mittag schlug,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

エァ ニヒト メーア ナハ デァ ズッペ フルック
Er nicht mehr nach der Suppe frug,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

8.
今朝早く彼を保養に連れて行きました
ちょうど十二時三分前のこと
そして鐘が正午を打ったときには
彼はもうスープなどねだりませんでした
繰り返し

frug【動詞・三人称単数過去】〔方言形〕
<fragen 〜を求める。



9.
アィン アルテァ バォア ミヒ ツー ズィヒ リーフ
Ein alter Bau'r mich zu sich rief,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

デァ ザィト ツヴェルフ ヤーレン ニヒト メーア シュリーフ
Der seit zwölf Jahren nicht mehr schlief,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

イヒ ハープ イーン グラィヒ ツア ルー ゲブラハト
Ich hab' ihn gleich zur Ruh gebracht,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

エァ イスト ビス ホィテ ニヒト エァヴァハト
Er ist bis heute nicht erwacht,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

9.
とある農夫が私を呼びつけて
十二年このかた眠っていないというのです
すぐにお休みになっていただいたところ
今日までいまだ目覚めておりません
繰り返し


10.
ツー ヴィーン クゥリエァト イヒ アィネン マン
Zu Wien kuriert' ich einen Mann,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

デァ ハッテ アイネン ホーレン ツァーン
Der hatte einen hohlen Zahn,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

イヒ ショース イーン ラォス ミッ デム ピストール
Ich schoß ihn 'raus mit dem Pistol,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

アハ ゴッ、ヴィー イスト デム マン ゾー ヴォール
Ach Gott, wie ist dem Mann so wohl,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

10.
ウィーンではある男の人を治療しました
歯に穴が空いていたのです
私はそいつをピストルで撃ち飛ばしてやりました
おやなんと、すっかり元気になってしまわれた!
繰り返し

Wien【地名】ウィーン。
言わずと知れたオーストリア共和国の首都です。なお、ドイツ語での発音は「ヴィーン」となるのでお間違えのないようご注意ください。
hohlen【形容詞】空洞の。


11.
マィン アレァグレーステス マィステァシテュク
Mein allergrößtes Meisterstück,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ダス マハト イヒ アィンス ツー オスナブルュク
Das macht' ich einst zu Osnabrück,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ポダグリッシュ ヴァー アィン アルテァ クナープ
Podagrisch war ein alter Knab,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

イヒ シュニット イーム バイデ バイネ アプ
Ich schnitt ihm beide Beine ab,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

11.
私の成し遂げた最高峰の仕事は
いつぞやオスナブリュックでしたものです
痛風持ちで足が痛い男がいて
両脚ともに切断しました
繰り返し

Osnabrück【地名】オスナブリュック。
 ニーダーザクセン州にある都市。
podagrisch【形容詞】足が痛風にかかった。



12.
フェァトラォト ズィヒ ミァ アィン パティエント
Vertraut sich mir ein Patient,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ゾー マハ エァ エァスト ザイン テスタメント
So mach' er erst sein Testament,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

イヒ シッケ ニーマン アォス デァ ヴェルト
Ich schicke niemand aus der Welt,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

ベフォァ エァ ニヒト ザイン ハォス ベシュテルト
Bevor er nicht sein Haus bestellt,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

12.
ある患者が私に打ち明けます
初めて遺言状を作ったと
私は誰もこの世から送り出しません
患者さんが自宅を建ててもらわないうちは
繰り返し

bestellt【動詞・三人称単数現在形】
<bestellen 〜を注文する。



13.
ダス イス ディ アーッ、 ヴィー イヒ クゥリエァ
Das ist die Art, wie ich kurier',

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ズィー イス プロバーッ、イヒ ブュァク ダフュア
Sie ist probat, ich bürg' dafür,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

ダス イェーデス ミッテル ヴィアクン トゥーッ
Daß jedes Mittel Wirkung tut,

ツヴィリヴィリヴィク ユハィラッサ
Zwilliwilliwick, jucheirassa!

シュヴェア イヒ バイ マイネム ドクトァフーッ
Schwör' ich bei meinem Doktorhut,

ツヴィリヴィリヴィク ブンブン
Zwilliwilliwick, bumbum!

 繰り返し

13.
これが私が患者を治す方法
効果は歴然、保証いたします
いずれの手業も効き目のあること、
私の医術帽にかけて誓います
繰り返し

probat【形容詞】有効性が示された、効果的な。




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 ガイド   17〜18世紀に実在したドイツの医師、ヨハン・アンドレアス・アイゼンバルト(Johann Andreas Eisenbarth、1663〜1727)博士をモチーフにした歌です。 歌ではとんでもない治療法のかずかずを繰り出していますが、実際のところは、優れた外科医かつ眼科医であり、眼科用の手術用具も開発していたようです。プロシアの宮廷医師の名誉も授けられていたとのことです。
 この歌は、アイゼンバルト博士が亡くなる前後にできたものと見られています。当時としては革新的な医術が、同業者のみならず、社会的にも注目を集め、批判やからかいの種になったのでしょう。
 歌詞の内容がやや常軌から外れているものですから、19世紀に博士の墓が発見されるまで、この歌は架空の人物のことを歌っているものと思われていたそうです。
 現在では、出身地のオーベルフィーヒタッハ(Oberviechtach、バイエルン州、チェコとの国境近く)で、誕生日の3月27日に、アイゼンバルト博士にちなんだ祭りが開催されています。

参照URL:http://www.oberviechtach.de/dr_eisen.htm
       http://www.oberviechtach.de/festseite/index.htm
       http://www.vsovi.de/eisbiogr.htm

ひとりごと
 少し内容のとりにくいところもある歌詞です(翻訳者の腕前も一因ですが)。歌詞の意味が分かりにくいところを、私なりに幾らか解釈してみます。勝手な推測だらけですので、そのつもりでご覧ください。

  • メイン歌詞の1番「目の見えない〜なれます」
     言うまでもなく、症状と治療法との組み合わせを、あべこべにしてあります。このようにすることで、歌そのものの滑稽さを狙ったものなのか、あるいはアイゼンバルト博士の治療が頓狂なものであるという印象を際立たせようとしたものなのか、そこのところは分かりかねますが。
  • メイン歌詞の2番「焼き串」、3番「手斧」
     またえらく医療器具とはかけ離れた道具を持ってきたものです。もしかすると、門外漢や旧式の医療法にこだわる人々にとって、アイゼンバルト博士が考案した各種の器具は、とても医療に使うものとは思えなかったのかもしれません。
  • メイン歌詞の4番「十プントのアヘン」、6番「十フーデルの石」
     滑稽味を出すために、大袈裟な表現を用いたものと思われます。結石が十フーデルも体内にあるなんて有り得ないことですから。それにしても、「墓石が体から出てきた」というのは、よほど大きな石でも入っていたのでしょうか。
  • メイン歌詞の7番「急行郵便馬車」
     ここのところは、筆者の私も分かりません。なぜ脾臓が痛くて「郵便馬車」なのか、「もう苦しまずにすむ所」というのがどこなのか(ひょっとしたら「あの世」?)も、まるきり分からない、と白状いたします。
  • メイン歌詞の10番「そいつをピストルで…」
     撃たれたのは患者ではなく、おそらく虫歯の方です。
  • メイン歌詞の12番「自宅を建てて〜」
     患者が自宅を建てた後で逝去すると、遺産としてその家が残ることになります。遺産分与の際に、故人が担当医にも財産を分与する事例があったのかもしれません。あわよくば故人の家を相続して、裕福になっちゃおう…ということを歌っているのでしょう。筆者は法律にはてんで疎いので、全くの憶測の域を出ないのですが。
  • バリアント歌詞の6番「ユダヤ人とは〜」
     これは、おそらく「天国へ行ってしまった」ことなんでしょう。キリスト教徒とユダヤ教徒では、死後に行くことになっている場所が異なるので、キリスト教徒と思しきこの大尉は「ユダヤ人とは縁が切れた」となるわけです。
 日本語バージョンは岡本敏明氏や中山知子氏が書いているようですが、いずれもなかなかの名作だと思います。



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バリアント

◆原歌詞:1〜10番 ◆和訳と語句
(繰り返しの「valleralleri, juche!」等は訳出しませんでした。)

1.
イヒ ビン デァ ドクトァ アィゼンバァト
Ich bin der Doktor Eisenbart,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

クゥリエァ ディ ロィト ナハ マィネァ アーッ
Kurier' die Leut nach meiner Art,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

カン マッヘン ダス ディ ブリンデン ゲーン
Kann machen, dass die Blinden gehn,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

ウン ダス ディ ラーメン ヴィーデァ ゼーン
Und dass die Lahmen wieder sehn,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し
 ハイドリア ハイドリア
 Heidoria heidoria,

 ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
 Valleralleri, jucheirassa!

 ハイドリア ハイドリア
 Heidoria heidoria,

 ヴァレラレリ ユッヘ!
 Valleralleri, juche!

1.
私はアイゼンバルト博士
わたくし流に人々を治します
目の見えない人たちも歩けるようにできるし
足が悪くてもまた物が見えるようになれます
繰り返し
 ハイドリア、ハイドリア
 ヴァレラレリ、ユッハィラッサ!
 ハイドリア、ハイドリア
 ヴァレラレリ、ユッへ!

2.
ツ ポツダム トレパニエァテ イヒ
Zu Potsdam trepanierte ich,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

デン コッホ デス グローセン フリーデァリヒ
Den Koch des grossen Friederich:

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

イヒ シュルゥク イーン ミッ デム バィル フォアン コップ
Ich schlug ihn mit dem Beil vor'n Kopf,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

ゲシュトーベン イス デァ アーメ トロップ
Gestorben ist der arme Tropf,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

2.
ポツダムでは、フリードリヒ大王の料理人に
開頭手術を施しました
手斧で頭を打ってやったところ
やっこさん、気の毒なことに亡くなりました
繰り返し

3.
ツ ウルム クゥリエァト イヒ アィネン マン
Zu Ulm kuriert' ich einen Mann,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ダス イーム ダス ブルゥッ フォム バイネ ラン
Dass ihm das Blut vom Beine rann:

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

エァ ヴォルテ ゲァン ゲクーポック ザィン
Er wollte gern gekuhpockt sein,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

イヒ インプツ イーム ミッ デム ブラーッシュピース アィン
Ich impft's ihm mit dem Bratspiess ein,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

3.
ウルムである男を治療しました
彼の脚から血が流れていたのです
牛痘に罹りたがっていたので
私は焼き串で種痘してやりました
繰り返し


4.
デス クュステァス ゾーン イン ディーデルドゥム
Des Küsters Sohn in Dideldum,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

デム ガープ イヒ ツェーン プント オピウム
Dem gab ich zehn Pfund Opium,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ドラォフ シュリーフ エァ ヤーレ、ターク ウンッ ナハト
Drauf schlief er Jahre, Tag und Nacht,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

ウンッ イス ビス ィエツ ニヒト アォフゲヴァハト
Und ist bis jetzt nicht aufgewacht,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

4.
ディーデルドムの寺男の息子に
十プントのアヘンを与えました
それ以来何年も、昼も夜も眠っていて
今に至るまでまだ目覚めていません
繰り返し

5.
デァ シュールマィステァ ツ イッツェヘー
Der Schulmeister zu Itzehoe,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

リッ ドラィスィヒ ヤー アン ディアレー
Litt dreißig Jahr' an Diarrhö':

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

イヒ ガープ イーム クレモァ タァトリ アィン
Ich gab ihm cremor tart'ri ein,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

エァ ギング ツー ザィネン フェーテァン アィン
Er ging zu seinen Vätern ein,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

5.
イッツェヘーの学校の先生
三十年のあいだ下痢で悩んでおりました
酒石英を投与したところ
ご先祖のもとへ逝かれました
繰り返し

Itzehoe【地名】イッツェヘー。
北ドイツ、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州にある町。
Diarrhö' 下痢。
cremor tart'ri 酒石英。
酒石酸水素カリウムの結晶で、ワインを製造するときに副産物として生成します。
弱い下剤としての働きがあります。現在では、ケーキの膨張剤に使ったり、草木染めの媒染剤に用いたりするようです。


6.
ゾーダン デム ハォプトマン フォン デァ ルスト
Sodann dem Hauptmann von der Lust,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ナーム イヒ ドライ ボンベン アォス デァ ブルゥスト
Nahm ich drei Bomben aus der Brust;

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ディ シュメァツェン ヴァーレン イーム ツー グロース
Die Schmerzen waren ihm zu groß:

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

ヴォール イーム!エァ イス ディ ユーデン ロース
Wohl ihm! Er ist die Juden los,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

6.
さらに、大尉の胸から
爆弾を三つ、喜んで取り出しました
痛みは彼にはひどすぎて
めでたや、彼はユダヤ人とは縁が切れています
繰り返し

Hauptmann (軍隊の)大尉。
Bomben【複数形】爆弾。
Juden ユダヤ人。



7.
エス ハット アィン マン イン ランゲンザルツ
Es hatt' ein Mann in Langensalz,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ネン ツェントネァシュヴェアレン クロップ アム ハルス
'Nen zentnerschweren Kropf am Hals,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

デン シュヌュァト イヒ ミッ デム ヘムザィル ツー
Den schnürt' ich mit dem Hemmseil zu,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

プロバータム エス エァ ハッ ィエツ ルー
Probatum est, er hat jetzt Ruh,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

7.
ランゲンザルツにひとりの男がいました
首に非常に重い甲状腺腫ができていたのです
それを紐で括ってみたところ
結果はこのとおり、やっとお休みになれました
繰り返し

Kropf 甲状腺腫。


8.
ツ プラーク ダ ナーム イヒ アィネム ヴァイプ
Zu Prag, da nahm ich einem Weib,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ツェーン フーデァ シュタィネ アォス デム ラィプ
Zehn Fuder Steine aus dem Leib;

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

デァ レツテ ヴァー イーァ ライヒェンシュタィン
Der letzte war ihr Leichenstein,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

ズィ ヴィァト ヴォール ィエツ クゥリエレッ ザィン
Sie wird wohl jetzt kurieret sein,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

8.
プラハではご婦人の体から
石を十フーデルも取り出しました
最後のひとつはご婦人の墓石でして
いまやすっかり治ってぴんぴんしております
繰り返し

9.
マィン アレァグレーステス マィステァシュテュック
Mein allergrösstes Meisterstück,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ダス マハト イヒ アィンスト イン オスナブルュック
Das macht' ich einst in Osnabrück:

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ポダグリッシュ ヴァー アィン アルテァ クナープ
Podagrisch war ein alter Knab,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

イヒ シュニット イーム バィデ バィネ アプ
Ich schnitt ihm beide Beine ab,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

9.
私の成し遂げた最高峰の仕事は
いつぞやオスナブリュックでしたものです
痛風持ちで足が痛い男がいて
両脚ともに切断しました
繰り返し

10.
ダス イス ディ アート、ヴィ イヒ クゥリエァ
Das ist die Art, wie ich kurier;

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ズィー イスト プロバート、イヒ ブュァク ダフュア
Sie ist probat, ich bürg' dafür;

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

ダス ィエーデス ミッテル ヴィアクン トゥーッ
Dass jedes Mittel Wirkung thut,

ヴァレラレリ ユッハィラッサ!
Valleralleri, jucheirassa,

イヒ シュヴェアス バイ マイネム ドクトァフーッ
Ich schwör's bei meinem Doktorhut,

ヴァレラレリ ユッヘ!
Valleralleri, juche!

 繰り返し

10.
これが私が患者を治す方法
効果は歴然、保証いたします
いずれの手業も効き目のあること、
私の医術帽にかけて誓います
繰り返し


参考URL:
http://www.singenundspielen.de/id275.htm
http://www.vsovi.de/eislied.htm(以上メイン歌詞)
http://web.utanet.at/toscherf/Student/Studenttxt/Dr_Eisenbart.htm
http://www.quarks.de/dyn/3741.phtml
http://www.kstv-ravensberg.de/site/index.php?main=buch/buch2.php&buch=buch/kommsuche2.php&numvar=267
http://www.vsovi.de/eislied.htm

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)


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