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CLICK GO THE SHEARS
チョキンと刈り鋏が鳴る

ヒツジの毛刈り風景と、労働者たちの様子をスケッチした歌。

作詞:不詳 
作曲:H.C.ワーク
19世紀後半〜20世紀前半成立

邦題
『調子をそろえてクリック・クリック・クリック』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1〜7番   バリアントバージョン
フリガナはイギリス英語の発音に基づいています。
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
アゥ・トン ヅァ ボーッ ヅィ オゥォッ シアラ スタンヅ
Out on the board the old shearer stands

グラスピン゜ ヒズ シアス イン ヒズ シィン ボゥニ ハンヅ
Grasping his shears in his thin bony hands

フィクスト イズ ヒズ ゲィズ オン・ナ ベア ベリド ヨゥ
Fixed is his gaze on a bare-bellied yoe

グローリ、イフ ヒ ゲツ ヘァ ウォンッ ヒ メィク ヅァ リンガ ゴゥ
Glory, if he gets her, won't he make the ringer go.

繰り返し
 クリック ゴゥ ヅァ シアズ ボィ、クリック クリック クリック
 Click go the shears boy, click click click

 ワィド イズ ヒズ ブロゥ アン ヒズ ハンヅ ムーヴ クゥィク
 Wide is his blow and his hands move quick;

 ヅァ リンガ ルクス アラゥンッ アン イズ ビートン バィ ア ブロゥ
 The ringer looks around and is beaten by a blow

 アン クァースィズ ヅィ オゥォッ スナガ ウィ・ヅァ ベア ベリド ヨゥ
 And curses the old snagger with the bare-bellied yoe.

1.
表の作業場に、老いた毛刈り師が立っている
刈り鋏を、痩せて骨ばった両手に握り締め
彼の目が据えられているのは、
腹の毛がすっかり刈られたヒツジ
素晴らしい、彼がそいつを捕まえれば
毛刈り人を差し向けなかろうか

繰り返し
チョキンと刈り鋏が鳴る、仲間たちよ
チョキ、チョキ、チョキ
彼の腕の動かし方は幅広く、手は素早く動く
毛刈り人は辺りを見て、一発殴られ
腹の毛刈りが済んだヒツジ持ちの
運のいい男をののしる
shearer 毛を刈る人。
ここでは「毛刈り師」と訳しました。
bare-bellied【形容詞】腹部の毛が刈られて、地肌がむき出しになった。
この単語を"blue-bellied"としているバージョンもあります。
yoe【動物・豪方言】ヒツジ。
ringer【豪方言】熟達した毛刈り職人。
snagger 運の良い人。

2.
イン ヅァ ミヅォ オヴ ヅァ フロー イン ヒズ ケィン ボトムッ チェァ
In the middle of the floor in his cane-bottomed chair

スィツ ヅァ ボス オヴ ザ ボーッ、ウィヅ ヒズ アィズ エヴリウェァ
Sits the boss of the board, with his eyes everywhere

ノゥティン ウェォ イーチ フリース アズ イッ カムス トゥ ヅァ スクリーン
Noting well each fleece as it comes to the screen

ペィイン ストリクト アテンション ヅァッ イツ テイクン オフ クリーン
Paying strict attention that it's taken off clean.

繰り返し

2.
部屋の真ん中、籐編みの椅子に
作業場長が座り、辺り全てを見はっている
羊毛が選別に来るたびにじっと注目し
すっかり刈り取られているか
厳しい注意を向けている
繰り返し
floor 一般には「床」の意味ですが、ここでは「仕事部屋」の意味で使われています。
cane-bottomed【形容詞】(椅子などの)座面が籐(とう)で編んだ。
screen 選別すること。


3.
ヅァ ターボィ イズ ヅェァ アン ウェィティン゜ オン ディマンッ
The tar-boy is there and waiting on demand

ウィズ ヒズ ブラクンッ ターポッ イン ヒズ ターリ ハンッ
With his blackened tar-pot in his tarry hand

スィーズ アン オゥォッ ヨゥ ウィヅ ア カッ・タポン イツ バク
Sees an old yoe with a cut upon its back

ヅィス イズ ワッ ヒズ ウェィティン゜ フォー、ター ヒア ジャク
This is what he's waiting for, "Tar here, Jack!"

繰り返し

3.
タールボーイはそこにいて、要求に応える
黒くなったタール壷を、
タールだらけの手に持っている
背中に切り傷のついたヒツジを見たら
これが待っていたこと、
「ここにタールを塗れ、ジャック!」
tar-boy タールを塗る係の少年。
毛刈り中に誤ってヒツジに傷をつけてしまったとき、タールを塗って、傷口の消毒・保護をします。

4.
ヅァ コロニアル エクスペリアンス マン、ヒズ ヅェァ、オヴ コース
The colonial experience man, he's there, of course

シャィニン ブーツ アン レギンス、ボィズ、ジャスト オフ ヒズ ホース
Shining boots and leggings, boys, just off his horse

カスティン ラゥンッ ヒズ アィズ ラィ・カ リール コニソーァ
Casting round his eyes like a real connoisseur

シェィヴィン゜ クリーム アン ブリリアンティン アン スメリン゜ ラィ・カ ウォーァ
Shaving cream and brilliantine and smelling like a whore.

繰り返し

4.
見習い職人だって、もちろんそこにいる
光った長靴にすね当てをつけて
ちょうど馬から降りたところ
まるきり鑑定家ぶって周りに目を配る
髭剃りクリームに整髪チック、
娼婦のような匂いをさせている
colonial experience man
 農場で働く見習いの職人。
leggings すね当て。
connoisseur 鑑定家、目利きの人。
brilliantine 固形の整髪料、ヘアスティック。最近ではあまり見かけなくなりましたが、日本では「チック」とも言います。

5.
シアリン゜ イズ オーォ オゥヴァ アン ウィヴ オーォ ゴト アワ チェクス
Shearing is all over and we've all got our cheques

ロゥォ アプ ユァ スワグス、ボィズ、ウィァ オフ アロン ヅァ トラク
Roll up your swags, boys, we're off along the track

ヅァ フェァスト パブ ウィ カム トゥ ウィーォ オーォ ハヴ ア スプリー
The first pub we come to we'll all have a spree

アン エヴリワン ヅァッ カムズ アロン゜ イツ、ハヴ ア ドリンク ウィヅ ミー!
And everyone that comes along it's, "Have a drink with me!"

繰り返し

5.
毛刈りはすっかり終わって、
我々はみな小切手を貰った
荷物をまとめて、我々は道に沿って出発する
やって来た最初の酒場で皆で楽しもう
共に来る奴は誰でも皆、「俺と一杯飲もう!」
swags【豪方言】荷物、手回り品。
spree 浮かれ騒ぎ。

6.
ダゥン イン ヅァ バー、ヅィ オゥォッ シアラ スタンヅ
Down in the bar, the old shearer stands

グラスピン ヒズ グラス イン ヒズ シィン ボゥニ ハンヅ
Grasping his glass in his thin bony hands

フィクスト イズ ヒズ ゲィズ オン・ナ グリーン ペィンテッ ケグ
Fixed is his gaze on a green-painted keg

グローリ、ヒーォ ゲッ ダゥン オン イッ ビフォー ヒ ステァーズ ア レグ
Glory, he'll get down on it before he stirs a leg.

繰り返し

6.
酒場の中に、老いた毛刈り師が立っている
グラスを、痩せて骨ばった両手に握り締め
彼の目が据えられているのは、
緑色に塗られた小さな樽
素晴らしい、彼は脚を動かす前に
膝が立たなくなってしまうだろう
keg 小さめの樽(45リットル以下くらい)。


7.
ヅェア ウィ リーヴ ヒム スタンディン゜、シャウティン゜ フォー オーォ ハンヅ
There we leave him standing, shouting for all hands

ワィォ オーォ アラゥン ヒム ヅィ アザ シァラス スタンヅ
While all around him the other shearers stand

ヒズ アィズ アー オン ヅァ カスク ウィチ ナゥ イズ ロゥァリン ファスト
His eyes are on the cask which now is lowering fast

ヒ ウヮークス ハーッ、ヒ ドリンクス ハーッ、アン ゴゥズ トゥ ヘォ アッ ラスト
He works hard, he drinks hard, and goes to hell at last.

繰り返し

7.
我々はそこに彼を立たせたまま、
助けを呼ばせたまま立ち去っていく
彼の周りじゅうに、
ほかの毛刈り師たちが立っているのに
彼の目は樽を見つめている
どんどん中身の減っていく樽に
一生懸命働いて、一生懸命呑んで、
ついには潰れてしまうんだ

このページのてっぺんへ  バリアントバージョン


 ガイド   オーストラリアの毛刈り師の風景を描いた歌として、世界的な知名度を誇りますが、旋律はオーストラリアで生まれたものではなく、『Grandfather's Clock(祖父の時計〔日本では『大きな古時計』の題で知られています〕)』で知られるアメリカ合衆国の作曲家ヘンリー・クレイ・ワーク(Henry Clay Work、1832〜1884)が1865年に発表した『Ring the Bell, Watchman!(見張りよ、鐘を鳴らせ)』のメロディーを借用したものです。
 また、このメロディーは、英国の船乗り歌『Strike the Bell Second Mate(鐘を打ち鳴らせ、二等航海士よ)』の旋律としても用いられていて、ワークの曲の人気ぶりが窺い知れます。
 『Click Go the Shears』が知られるようになった歴史は意外と新しく、1946年に、オーストラリアの民謡収集家パーシー・ジョーンズ(Percy Jones、1914〜1992)によって収集、出版されたのが初めてのようです。また、異なるバージョンが、オーストラリアの民謡収集家ジョン・メレディス(John Meredith、1920〜2001)によって収集されています(バリアント歌詞を参照)。
 日本語歌詞は、歌謡曲や子供の歌の訳詞(翻案詞?)も多く手がけた音羽たかしさんによるものです。

ひとりごと
 オーストラリアは、人間よりもヒツジのほうが7倍は多いというヒツジの国です。日本の羊肉の輸入元はオーストラリアが第1位ですし、2000年のシドニーオリンピックのときには、競技場でブラスバンドによる『Click Go the Shears』の演奏も行われていたくらいですから、ヒツジがどれだけオーストラリアに馴染んでいるかが見て取れます。
 (シドニー五輪でのこの曲の演奏中に「この曲は…ウォルシング・マチルダでしょうかね?」とテレビでコメントしていたアナウンサーがいたということは、私ひとりの胸にとどめておきましょう。)


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バリアント

 「Click Go the Shears」のほかのバージョンでは、下に挙げたような歌詞が入っているものもあります。
 (ア)は、上の歌詞の4番とそのまま入れ替わった形で入っています。見比べていただければ分かるとおり、歌詞の4行目が大きく異なっているのが特徴です。
 (イ)は、「ガイド」に挙げたジョン・メレディスの収集したバージョンの歌詞の一部です。この歌詞は何番に相当するのかはっきりしません。歌詞の内容から察すると、上に挙げた歌詞の、4番の上か下に挿入するのが、ストーリーが自然に続くものと見られます。
 なお、(ア)の歌詞に含まれる"Ain't I the perfect lure!"というのがどのような曲なのかは、当方では調べがつきませんでした。どなたかご存知ならば、情報をいただけたら嬉しく存じます。


◆原歌詞 ◆和訳と語句

(ア)
ヅァ コロニアル エクスペリアンス マン、ヒズ ヅェァ、オヴ コース
The colonial experience man, he's there, of course

ウィヅ ヒズ シャィニ レギンス ラィク ヒ ジャスト ゴッ・トフ ヒズ ホース
With his shiny leggin's like he just got off his horse

ヒ カスツ ヒズ ブルーミン アィズ アラゥン ヂャスト ラィ・カ コニソーァ
He casts his bloomin' eyes around just like a connoisseur

ウィスリン゜ ヅィ オゥルッ チューン、エィン・タィ ヅァ ペァーフェクト ルーァ!
Whistling the old tune, "Ain't I the perfect lure!"

クリック ゴゥ ヅァ シアズ ボィ、・・・
Click go the shears boy, ...

(ア)
見習い職人だって、もちろんそこにいる
光ったすね当てをつけて
まるで馬から降りたばかりのようだ
生き生きした目を、
まるで鑑定家のように辺りに向ける
昔懐かしの『俺は完璧に素敵じゃないか?』の
節を口笛で吹きながら
チョキンと刈り鋏が鳴る、仲間たちよ・・・

(イ)
ナゥ ミスタ ニューチャム フォー トゥ ビギン
Now Mister Newchum for to begin,

イン ナンバ セヴン パドク ブリング オーォ ヅァ シープ イン
In number seven paddock bring all the sheep in;

ドウンッ リーヴ ナン ビハィン、ワッテヴァ ユゥ メィ ドゥー
Don't leave none behind, whatever you may do,

アン ヅェン ユゥォ ビ フィッ フォ ア ジャカルゥー
And then you'll be fit for a jackaroo.

クリック ゴゥ ヅァ シアズ ボィ、・・・
Click go the shears boy, ...

(イ)
さてニューチャム氏よ、手始めに
7番の囲いにヒツジをみんな入れてくれ
どんなことをしても、
一頭も残さないようにしてくれたまえ
そうすれば農場見習いにふさわしくなれるぞ
チョキンと刈り鋏が鳴る、仲間たちよ・・・
jackaroo【豪方言】農場の見習い雇い人。

参考URL
http://australia.ausconnections.com/australia/do/poetry/ballads/clickgotheshears.htm(メイン歌詞底本として使用)
http://www.freewebs.com/songsofaustralia/clickgotheshears.htm(バリアント歌詞底本として使用)
http://oldpoetry.com/opoem/printall/Anonymous+Oceania/2(バリアント歌詞底本として使用)
http://www.imagesaustralia.com/shearingoftherams.htm
http://www.everything2.com/index.pl?node_id=1436580
http://www.whatsthenumber.com/oz-u/songs/click-go-the-shears-5.htm
http://australianpoems.tripod.com/clickgotheshears.html
http://australie.ronan.free.fr/Music/Outback/Click_Go_The_Shears.htm
http://folkstream.com/022.html
http://www.desertsongfest.org/WorkSongs/worksongs.htm

MIDI作成ソフト:てきとーシーケンサ Version2.15

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