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IL ÉTAIT UN PETIT NAVIRE
小さなお船があったとさ

初めての航海に出た船で起こった事件のてんまつ。

作詞:上詳 / 作曲:上詳  / 16世紀頃成立

邦題
この歌は、まだ邦題が付いていないようです。

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)


◆原歌詞:1~16番
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
イ・レテ・タ プティ ナヴィル
Il était un petit navire

イ・レテ・タ プティ ナヴィル
Il était un petit navire

キ ナヴェ ジャ・ジャ・ジャメ ナヴィゲ
Qui n'avait ja-ja-jamais navigué

キ ナヴェ ジャ・ジャ・ジャメ ナヴィゲ
Qui n'avait ja-ja-jamais navigué

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...


繰り返し

 オーエ、オーエ、マトロ
 Ohé, ohé Matelot

 マトロ ナヴィゲ スュル レ フロ
 Matelot navigue sur les flots

 オーエ、オーエ、マトロ
 Ohé, ohé Matelot

 マトロ ナヴィゲ スュル レ フロ
 Matelot navigue sur les flots

1.
小さなお船があったとさ
小さなお船があったとさ
い・い・いちども海に出たことのない
い・い・いちども海に出たことのないお船が
おーい、おーい…

繰り返し
 おーい、おーい、船乗りさん
 船乗りさんよ、海原を渡れ
 おーい、おーい、船乗りさん
 船乗りさんよ、海原を渡れ

navigué【動詞・過去分詞】航海する。
Matelot 水夫、船員。最初のMが大文字なのは、特定の人物に対する呼びかけとなっているからです。


2.
イ・ロトルプリ ア ロ ヴヮヤージ
Il entreprit un long voyage

イ・ロトルプリ ア ロ ヴヮヤージ
Il entreprit un long voyage

スュル ラ メル メ・メ・メディテラネ
Sur la mer Mé-Mé-Méditérannée

スュル ラ メル メ・メ・メディテラネ
Sur la mer Mé-Mé-Méditérannée

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

2.
そのお船が永い旅に出た
そのお船が永い旅に出た
地・地・地中海へと
地・地・地中海へと
おーい、おーい…
繰り返し

entreprit【動詞・三人称単数過去】
 ~を始める。
la mer Méditérannée【地理】
(ヨーロッパとアフリカの間の)地中海。


3.
オ ブゥ ドゥ サ・カ スィ スメヌ
Au bout de cinq à six semaines

オ ブゥ ドゥ サ・カ スィ スメヌ
Au bout de cinq à six semaines

レ ヴィヴル ヴァ・ヴァ・ヴァル・タ モ
Les vivres vin-vin-vinrent à manquer

レ ヴィヴル ヴァ・ヴァ・ヴァル・タ モ
Les vivres vin-vin-vinrent à manquer

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

3.
5週目か6週目の終わりごろ
5週目か6週目の終わりごろ
食糧が足りなくな・な・なってきた
食糧が足りなくな・な・なってきた
おーい、おーい…
繰り返し

vinrent【動詞・三人称単数過去】<venir
 venir àで「~になる《の意味となります。



4.
エ ロ ティラ ラ クルト パィユ
Et l'on tira la courte paille

エ ロ ティラ ラ クルト パィユ
Et l'on tira la courte paille

プル サヴヮル キ・キ・キ スレ モジェ
Pour savoir qui-qui-qui serait mangé

プル サヴヮル キ・キ・キ スレ モジェ
Pour savoir qui-qui-qui serait mangé

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

4.
そこで藁でくじ引きをすることにした
そこで藁でくじ引きをすることにした
だ・だ・誰を食べてしまうか決めるために
だ・だ・誰を食べてしまうか決めるために
おーい、おーい…
繰り返し

tira la courte paille【熟語】〔動詞は過去形〕
藁(わら)のくじを引く。
直訳すると「短い藁を引く《となります。何本かの藁のうちに一本だけ短いものを混ぜてくじにしますが、短い藁を引くと「当たりくじを引いた《ということになるわけです。


5.
ル ソル トバ スュ ル プルュ ゼュヌ
Le sort tomba sur le plus jeune

ル ソル トバ スュ ル プルュ ゼュヌ
Le sort tomba sur le plus jeune

ビャ キル ヌ フュ・フュ・フュ パ トレ・ゼペ
Bien qu'il ne fût-fût-fût pas très épais

ビャ キル ヌ フュ・フュ・フュ パ トレ・ゼペ
Bien qu'il ne fût-fût-fût pas très épais

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

5.
くじはいちばん若い人に当たった
くじはいちばん若い人に当たった
そんなに太ってい・い・いなかったのに
そんなに太ってい・い・いなかったのに
おーい、おーい…
繰り返し

bien que【熟語】
〔接続法を後ろに伴って〕~であるにもかかわらず。
épais【形容詞】ずんぐりとした。


6.
 シェァシェ アロル ア ケレ ソス
On cherche alors à quelle sauce

 シェァシェ アロル ア ケレ ソス
On cherche alors à quelle sauce

ル ポヴ・ロフォ・フォ・フォ、スラ モジェ
Le pauvre enfant-fant-fant, sera mangé

ル ポヴ・ロフォ・フォ・フォ、スラ モジェ
Le pauvre enfant-fant-fant, sera mangé

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

6.
そこでみんなで考えた、どんなソースが
そこでみんなで考えた、どんなソースが
気の毒な若者・の・のを食べるのにいいか
気の毒な若者・の・のを食べるのにいいか
おーい、おーい…
繰り返し

7.
 ヴゥレ コ ル ミ・タ フリル
L'un voulait qu'on le mit à frire

 ヴゥレ コ ル ミ・タ フリル
L'un voulait qu'on le mit à frire

ロトル ヴゥレ・レ・レ、ル フリカセル
L'autre voulait-lait-lait, le fricasser

ロトル ヴゥレ・レ・レ、ル フリカセル
L'autre voulait-lait-lait, le fricasser

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

7.
ある人はフライにしたいと思い
ある人はフライにしたいと思い
別の人はフリカッセにしたいと思った・た・た
別の人はフリカッセにしたいと思った・た・た
おーい、おーい…
繰り返し

frire【動詞・原形】
~を油で焼く、フライにする。
fricasser【動詞・原形】
~をフリカッセにする。
フリカッセは、肉をホワイトソースで煮た料理のことです。


8.
 カスィ オ デリベル
Pendant qu'ainsi on délibére

 カスィ オ デリベル
Pendant qu'ainsi on délibére

イル モ・ト オ・オ・オ、ドュ グロ ユニェ
Il monte en haut-haut-haut, du grand hunier

イル モ・ト オ・オ・オ、ドュ グロ ユニェ
Il monte en haut-haut-haut, du grand hunier

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

8.
そんなふうにみんなが議論している間に
そんなふうにみんなが議論している間に
彼はメイントップスルのう・う・うえに登った
彼はメイントップスルのう・う・うえに登った
おーい、おーい…
繰り返し

grand hunier【海事】メイントップスル。
日本語では「大檣中檣帆(だいしょうちゅうしょうはん)《ともいい、帆船のメインマスト(大檣)の中段に張られた帆をさします。


9.
イル フィ オ スィェル ユヌ プリィエル
Il fit au ciel une prière

イル フィ オ スィェル ユヌ プリィエル
Il fit au ciel une prière

テロジャ・ジャ・ジャ リモスィテ
Interrogeant-geant-geant l'immensité

テロジャ・ジャ・ジャ リモスィテ
Interrogeant-geant-geant l'immensité

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

9.
彼は天にお祈りをした
彼は天にお祈りをした
はるかなる広がりに問いかけつつ・つ・つ
はるかなる広がりに問いかけつつ・つ・つ
おーい、おーい…
繰り返し

immensité 広大さ、果てしない広がり。



10.
メ ルガルド ラ メル オティエル
Mais regardant la mer entière

メ ルガルド ラ メル オンティエル
Mais regardant la mer entière

イル ヴィ レ フロ・フロ・フロ、ドゥ トゥ コテ
Il vit les flots-flots-flots, de tous cotés

イル ヴィ レ フロ・フロ・フロ、ドゥ トゥ コテ
Il vit les flots-flots-flots, de tous cotés

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し
10.
だけれど海全体を眺めたら
だけれど海全体を眺めたら
どの方角にも見えるのはう・う・海原ばかり
どの方角にも見えるのはう・う・海原ばかり
おーい、おーい…
繰り返し

11.
オ サト ヴィエルジ、オ マ パトロヌ
Oh sainte Vierge, oh ma patronne

オ サト ヴィエルジ、オ マ パトロヌ
Oh sainte Vierge, oh ma patronne

クリィア ル ポ・ポ・ポヴル アフォルチュネ
Cria le pau-pau-pauvre infortuné

クリィア ル ポ・ポ・ポヴル アフォルチュネ
Cria le pau-pau-pauvre infortuné

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

11.
ああ、聖母マリア様、私の守り神さま
ああ、聖母マリア様、私の守り神さま
あ・あ・哀れな運の悪い男は叫んだ
あ・あ・哀れな運の悪い男は叫んだ
おーい、おーい…
繰り返し

vierge 処女。
 Sainte Viergeで、「聖母マリア様《を表します。


12.
スィ ジェ ペシェ ヴィッ パルドヌ
Si j'ai péché, vite pardonne

スィ ジェ ペシェ ヴィッ パルドヌ
Si j'ai péché, vite pardonne

ペシェ・レ・レ・レ ドゥ ム モジェ
Empêche-les-les-les de me manger

ペシェ・レ・レ・レ ドゥ ム モジェ
Empêche-les-les-les de me manger

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

12.
もし私が罪を犯したのなら、早くお許しください
もし私が罪を犯したのなら、早くお許しください
私がみ・み・皆に食べられないようにして下さい
私がみ・み・皆に食べられないようにして下さい
おーい、おーい…
繰り返し

péché【動詞・過去分詞】
 (倫理上の)罪を犯す。
empêche【動詞・命令形】~を妨げる。



13.
オ メェ・マスト ア グロ ミラクル
Au même instant un grand miracle

オ メェ・マスト ア グロ ミラクル
Au même instant un grand miracle

プゥル ロフォ フュ、フュ、フュ レアリゼ
Pour l'enfant fut, fut, fut réalisé

プゥル ロフォ フュ、フュ、フュ レアリゼ
Pour l'enfant fut, fut, fut réalisé

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

13.
ちょうどその時大いなる奇跡が
ちょうどその時大いなる奇跡が
若者のために起こった・た・た
若者のために起こった・た・た
おーい、おーい…
繰り返し

réalisé【動詞・過去分詞】実現する。


14.
デ プティ プヮソ ド ル ナヴィル
Des p'tits poissons dans le navire

デ プティ プヮソ ド ル ナヴィル
Des p'tits poissons dans le navire

ソテル パル・パル・パル、エ パル ミリエ
Sautèrent par-par-par, et par milliers

ソテル パル・パル・パル、エ パル ミリエ
Sautèrent par-par-par, et par milliers

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

14.
小魚たちが船の中へ
小魚たちが船の中へ
な・な・何千尾と集まって跳びこんだ
な・な・何千尾と集まって跳びこんだ
おーい、おーい…
繰り返し

par milliers【熟語】
何千となく、非常にたくさん。


15.
 レ プリ、オ レ ミ・タ フリル
On les prit, on les mit à frire

 レ プリ、オ レ ミ・タ フリル
On les prit, on les mit à frire

ル ゼュヌ ムゥ・ムゥ・ムゥス フュ ソヴェ
Le jeune mou-mou-mousse fut sauvé

ル ゼュヌ ムゥ・ムゥ・ムゥス フュ ソヴェ
Le jeune mou-mou-mousse fut sauvé

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

15.
みんなでその魚を捕ってフライにした
みんなでその魚を捕ってフライにした
若いみ・み・見習い水夫は命が助かったとさ
若いみ・み・見習い水夫は命が助かったとさ
おーい、おーい…
繰り返し

mousse 見習いの水夫。



16.
スィ セッ・ティストヮル ヴゥ・ザムュズ
Si cette histoire vous amuse,

スィ セッ・ティストヮル ヴゥ・ザムュズ
Si cette histoire vous amuse,

ヌゥ・ザロ ラ・ラ・ラ ルコモ
Nous allons la-la-la recommencer

ヌゥ・ザロ ラ・ラ・ラ ルコモ
Nous allons la-la-la recommencer

オーエ、オーエ…
Ohé, ohé...

繰り返し

16.
このお話を面白いと思われたなら
このお話を面白いと思われたなら
我々はこ・こ・これをまたお話ししましょう
我々はこ・こ・これをまたお話ししましょう
おーい、おーい…
繰り返し

histoire 物語、作り話。


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 ガイド   16世紀ごろのフランス・ブルターニュ地方で生まれた曲のようですが、詳細は調べがつきませんでした。ただし、フランス語圏ではよく知られた歌で、この歌を題材にした絵本などもあるようです。
 バリアントは20以上あり、上記の歌詞の5番までで終わるものや、マストに登った水夫が海のかなたに立ち上る煙突の煙を見つけ、みんな飢え死にしないで済んだという結末になっているものなどがあります。
 また、乗組員たちの出身地についてですが、フランスではなく、デンマーク人やアイスランド人となっている説がありました。
 1951年には、フランスの作曲家ジェルメーヌ・タイユフェル(Germaine Tailleferre、1892~1983)によって、喜歌劇『Il Était un Petit Navire』が製作されています。
 この歌はドイツ語にも訳され歌われています。ドイツ語の題はフランス語のほぼ直訳で『War Einst ein Kleines Segelschiffchen(小さな帆船があったとさ)』、訳詞者はドイツの風刺画家のウィルヘルム・ショルツ(Wilhelm Scholz、1824 - 1893)です。

ひとりごと
 おいおいおいおい!なんという突っ込みどころ満載の歌なんだ!!
 まず、歌の主役は誰なのか?船が主人公かと思いきや、ただの舞台にしか過ぎなくて、若い水夫にすべての視線が注目している様子。
 それに、地中海は、東西の幅がせいぜい3000キロメートル。5週間もあれば縦断できるし、沿岸にはたくさん港がある。いったいこの船は1か月以上もどこをさまよっていたんだ?!
 そして、最大の突っ込みどころは、やはり「この時代のフランスの船員は、食糧難になったら仲間を食べるのか!?《ということでしょう。キリスト教(カトリック)の国ですから、そんな倫理的に問題のある行為をしたら天罰が下ってしまうはずなのに。
 まあ、最後には奇跡が起こったからいいようなものの、もしこのあとまた食糧上足になったら、この若者を人身御供にして魚を得ようとするのではないかと、ちょっぴり心配になります。

 なお、MIDIには、各フレーズごとにルフラン(繰り返し部分)を挿入してみましたが、実際に歌うときには必ずしもこれほどルフランを入れることはないようです。

 話はまた変わりますが、小耳に挟んだところによると、この歌、日本でも戦後(昭和20-30年代頃)のころに学生の間で歌われていたらしいのです。それもフランス語のままで。当時この歌を歌っていて覚えているという方たちが現在でもちらほら見受けられます。無論そういう方たちは現在では60歳台、70歳台になっていらっしゃいますが。
 いったい『Il Était un Petit Navire』はどういった経緯で戦後の日本に現れたのでしょうか。上思議は汲めども尽きることがありません。



【参考URL】
http://enfants.x2000.org/chansons/il_etait_un_ti_navire.htm
http://www.premiumorange.com/archives-autran/archives/chansons/chansons_enfantines.html#ANCRE26
http://perso.orange.fr/tramp/book/zpevy.htm#ptnavire
http://perso.orange.fr/olivier.druard/LaClefDesChants/Carnets/Chants/IlEtaitUnPetitNavire.htm
http://perso.orange.fr/marius.autran/forum/musique_chansons_2005.html#35
http://www1.tip.nl/~meester7/shanties2.html
http://www.medietrad.com/chant.php?cid=160
【ドイツ語版歌詞】
http://www.labbe.de/liederbaum/index.asp?themaid=50&titelid=806(楽譜あり)
http://www.volksliederarchiv.de/text1260.html

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ最終更新:2010/08/02

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