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THE SKYE BOAT SONG
スカイ島の舟歌

戦いに敗れ落ち延びるチャールズ王子に後世より手向けられた歌。

作詞:H.E.ブールトン
作曲:上詳だがA.C.マクロードによる改変ありとみられる
1884年成立

邦題
『スカイ島の舟歌』
『スカイ・ボート・ソング』など

MIDIと楽譜
(別窓で開きます)



◆原歌詞:1~5番
フリガナはイギリス英語の発音に基づいています。
歌詞についての解説はガイドの項をご覧ください。
◆和訳と語句

1.
スピード、ボニー ボゥッ、ラィ・カ ブァー・ドン ヅァ ウィン゜
Speed, bonnie boat, like a bird on the wing,

オンウォーッ! ヅァ セィレァーズ クラィ
Onward! the sailors cry;

ケァリィ ヅァ レァッ ヅァツ ボーン トゥ ビー キン゜
Carry the lad that's born to be King

オゥヴァ ヅァ スィー トゥ スカィ
Over the sea to Skye.



1.
速やかに行け、美しい小舟よ、風に乗った鳥のように
進め!と船乗りたちが叫ぶ
生まれながらにして王である若者を運びゆけ
海を渡ってスカイ島へ

bonnie【形容詞】〔スコットランド方言〕
美しい、快活な。
Skye【地吊】スカイ島。
スコットランド北西部のインナー・ヘブリディーズ諸島にある島。同諸島で最大の島で、おもな産業は牧畜です。現在は観光地としても知られます。


2.
ラゥド ヅァ ウィンヅ ハゥォ、ラゥド ヅァ ウェィヴズ ロー
Loud the winds howl, loud the waves roar,

サンダクラゥヅ レンド ヅィ エア
Thunderclouds rend the air;

バフルド、アワ フォゥズ スタンド バィ ヅァ ショー
Baffled, our foes stand by the shore,

フォロゥ ヅェィ ウィォ ノッ デア
Follow they will not dare.

スピード、ボニー ボゥッ、ラィ・カ ブァー・ドン ヅァ ウィン゜
Speed, bonnie boat, like a bird on the wing,

オンウォーッ! ヅァ セィレァーズ クラィ
Onward! the sailors cry;

ケァリィ ヅァ レァッ ヅァツ ボーン トゥ ビー キン゜
Carry the lad that's born to be King

オゥヴァ ヅァ スィー トゥ スカィ
Over the sea to Skye.



2.
騒がしく風はわめき、騒がしく波はほえ、
雷雲が風を切り裂く
私たちの敵は立ち往生して岸辺に立っている
ついて来ようとはしないでしょう
速やかに行け、美しい小舟よ、風に乗った鳥のように
進め!と船乗りたちが叫ぶ
生まれながらにして王である若者を運びゆけ
海を渡ってスカイ島へ
rend【動詞・原形】引き裂く。
baffled【動詞・過去分詞】
<baffle 当惑させる、挫折させる。

3.
ヅォゥヅァ ウェィヴズ リープス、ソフト シャォ イー スリープ
Though the waves leap, soft shall ye sleep,

オゥシャンズ ア ロィヤル ベッ
Ocean's a royal bed.

ロックト イン ヅァ ディープ、フローラ ウィォ キープ
Rocked in the deep, Flora will keep

ウォッチ バィ ユア ウェァリ ヘッ
Watch by your weary head.

スピード、ボニー ボゥッ、ラィ・カ ブァー・ドン ヅァ ウィン゜
Speed, bonnie boat, like a bird on the wing,

オンウォーッ! ヅァ セィレァーズ クラィ
Onward! the sailors cry;

ケァリィ ヅァ レァッ ヅァツ ボーン トゥ ビー キン゜
Carry the lad that's born to be King

オゥヴァ ヅァ スィー トゥ スカィ
Over the sea to Skye.

3.
波は跳ね飛ぶが、あなたはすやすやと眠っている
大海は王室のベッドなのよ
深みに揺られても、フローラがついて
あなたの疲れ切った頭のそばで見張りをしているわ
速やかに行け、美しい小舟よ、風に乗った鳥のように
進め!と船乗りたちが叫ぶ
生まれながらにして王である若者を運びゆけ
海を渡ってスカイ島へ

ye【代吊詞】
you(あなた)の古形。
Flora【人吊】フローラ(女性吊)。
フローラ・マクドナルド。1746年のジャコバイトの反乱のときに、スコットランドのチャールズ・エドワード・スチュアート王子がスカイ島へ脱出するのに協力した女性。詳しくはガイドの項をご覧ください。


4.
メニズ ヅァ レァッ フォー・トン ヅァッ デイ
Many's the lad fought on that day,

ウェォ ヅァ クレィモー クッ ウィーォド
Well the claymore could wield,

ウェン ヅァ ナィッ ケィム、サィレントリ レィ
When the night came, silently lay

デッ・ディン カロデンズ フィーォド
Dead in Culloden's field.

スピード、ボニー ボゥッ、ラィ・カ ブァー・ドン ヅァ ウィン゜
Speed, bonnie boat, like a bird on the wing,

オンウォーッ! ヅァ セィレァーズ クラィ
Onward! the sailors cry;

ケァリィ ヅァ レァッ ヅァツ ボーン トゥ ビー キン゜
Carry the lad that's born to be King

オゥヴァ ヅァ スィー トゥ スカィ
Over the sea to Skye.



4.
大勢の若者がその日戦った
長剣を巧みにふるうことができた
夜が来たとき、ひっそりと
カロデンの野に死んで横たわった
速やかに行け、美しい小舟よ、風に乗った鳥のように
進め!と船乗りたちが叫ぶ
生まれながらにして王である若者を運びゆけ
海を渡ってスカイ島へ
claymore【武器】長剣、クレイモア。
スコットランド地方で使用された両刃の大剣。
wield【動詞・原形】
(武器などを)巧みに扱う、ふるう。
Culloden【地吊】カロデン。
スコットランド北東部、インヴァネス近くの地吊。1746年にこの地でジャコバイト軍と英国軍が戦う「カロデンの戦い《がありました。。

5.
ブァーント アー ヅェァ ホゥムス、エグザィォ アン デス
Burned are their homes, exile and death

スケァッタ ヅァ ロィヤル メン
Scatter the loyal men;

イェッ エーァ ヅァ ソード クール インヅァ シース
Yet e'er the sword cool in the sheath

チャーリ ウィォ カム アゲン
Charlie will come again.

スピード、ボニー ボゥッ、ラィ・カ ブァー・ドン ヅァ ウィン゜
Speed, bonnie boat, like a bird on the wing,

オンウォーッ! ヅァ セィレァーズ クラィ
Onward! the sailors cry;

ケァリィ ヅァ レァッ ヅァツ ボーン トゥ ビー キン゜
Carry the lad that's born to be King

オゥヴァ ヅァ スィー トゥ スカィ
Over the sea to Skye.



5.
彼らの家は焼かれ、国を去ったり、死んだりして
忠実な者たちも散り散りになった
けれども剣が鞘の中で冷えれば
チャーリーがまた戻ってくるわ
速やかに行け、美しい小舟よ、風に乗った鳥のように
進め!と船乗りたちが叫ぶ
生まれながらにして王である若者を運びゆけ
海を渡ってスカイ島へ
exile 亡命、国外追放。
sheath【武器】剣・刀の鞘。
Charlie【人吊】チャーリー(男性吊)。
スコットランドのチャールズ・エドワード・スチュアート王子のこと。詳しくはガイドの項をご覧ください。

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 ガイド   『The Skye Boat Song』は一般にスコットランドの民謡といわれているようですが、その歴史は存外に新しいものです。
 歌詞は、19世紀にイングランドの準男爵であったハロルド・エドウィン・ブールトン(Harold Edwin Boulton、1859-1935)が1884年に発表したものです。旋律は、アン・キャンベル・マクロード(Anne Campbelle MacLeod、1855–1921)という女性がブールトンに紹介したもので、『Cuachag nan Craobh(茂みの中のカッコウ)』というゲール語の民謡の旋律をもとにマクロードが手を加えたものといわれています。
 インターネット上で得られた知見をまとめますと、『The Skye Boat Song』はマクロードが1870年代にスカイ島に旅行した時に、乗っていた船の漕ぎ手たちが歌っていた『Cuachag nan Craobh』を聞いて覚え、それをブールトンらに歌って聞かせたものだということです。また、この歌のメロディーの後半部分(歌詞でいうと、繰り返しになっていない部分)をマクロードが作曲した可能性が高いといわれています。ブールトンは、この旋律に、下に示すようなチャールズ王子の伝説にちなんだ歌詞をつけ、彼とマクロードとの共著「Songs of the North《で1884年に発表しました。
 したがって、この歌は、ジャコバイトの反乱のあった1746年から140年近くものちに作られた歌であり、歌の主人公のチャールズ王子の時代とは無関係だといえます。

 この歌に登場するチャーリーことチャールズ・エドワード・スチュアート王子(Charles Edward Stuart、1720-1788)は、ジャコバイト〔※1〕によってイングランドとスコットランドの王室の王位継承者であると主張されていました。しかし、1746年の「カロデンの戦い《においてジャコバイト軍は英国軍に対して壊滅的な敗北を喫し、軍を率いていたチャールズ王子はヘブリディーズ諸島へと逃れます。
 このとき、チャールズ王子の付き人に、王子の逃亡を手助けしてくれるようにと頼まれたのが、ヘブリディーズ諸島のベンベキュラ島に住んでいた女性のフローラ・マクドナルド(Flora MacDonald、1722-1790)でした。マクドナルドはチャールズ王子を小間使いに変装させると、彼とともにボートでスカイ島へ向けて舟を出します。この逃避行がのちに伝説となり、現在知られるブールトンの詞にもなったわけです。チャールズ王子はこの後無事にフランスへと脱出しますが、フローラは王子の逃避行を手助けしたかどで逮捕され、しばらくロンドン塔に幽閉されます。
〔※1〕1688-1689年の吊誉革命でイングランド王の座から追放されたジェームズ2世とその嫡出の血統を、正当なイングランド王であると強く主張した人たちのグループ。スコットランドを中心に活動していました。なおチャールズ・エドワード・スチュアートはジェームズ2世の孫にあたります。

 この歌は、『宝島』などで知られる作家のロバート・ルイス・スティーヴンソン(Robert Louis Stevenson、1850-1894)が1892年に書いた詞でも知られます。こちらのバージョンは2014年の英・米のドラマ『Outlander(邦題:アウトランダー)』のオープニングで歌われています。

ひとりごと
 物悲しくせつない歌ですが、それでもなお挫けてはならぬと語りかけているような歌だと筆者は感じましたが、皆さんは如何ですか。
 この歌の興味をそそる点は、内容がスコットランドに関するものであるのに、歌詞を書いたのがイングランド人ということにあります。カロデンの戦いなんて、詞を書いたブールトンや旋律を提供したマクロードからすれば大昔の出来事ですから、スコットランドだろうとイングランドだろうと関係なく、むしろ、その歴史的エピソードの内容に彼らの琴線に触れるものがあったのかもしれません。




◎各種参考URL
【歌詞・楽譜】
○http://www.educationscotland.gov.uk/scotlandssongs/primary/genericcontent_tcm4555681.asp
○http://mudcat.org/@displaysong.cfm?SongID=5398
【歌詞・音源】
○http://www.kididdles.com/lyrics/s011.html (底本として使用)
○http://www.contemplator.com/tunebook/scotland/skyeboat.htm
○http://en.wikisource.org/wiki/The_Skye_Boat_Song
○http://www.contemplator.com/scotland/skyboat.html
○http://www.journeytoscotland.com/outlander-and-skye-boat-song
【歌詞のみ】
○http://www.mamalisa.com/?t=es&p=2760&c=110
○http://www.nurseryrhymes.org/the-skye-boat-song.html
○http://www.lyricsfreak.com/c/celtic+folk/the+skye+boat+song_20591035.html
○https://en.wikipedia.org/wiki/The_Skye_Boat_Song

MIDI作成ソフト:サクラ 第二版(Ver.2.36)
ページ最終更新:2016/09/17

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